何かを「試す」ハードルが下がっている件について

こういうご時勢なので、新しいツールの導入ハードルがぐぐんと下がっていることを肌で感じる昨今である。Zoomしかり、Slackしかり。そしてこういうツールを使うにつけ、時間堂はいろいろ早かったんだな、と振り返る。

時間堂というのは2016年末に解散した劇団である。私は2011年の半ばに知り合って、2012年2月にプロデューサーとして加入した。10名前後の小さな劇団だったけど、ツアーをやったりスタジオを作ったりかなり活動的な団体だったと思う。演劇的なルーツがまちまちで、大学で演劇を始めたひともいれば新劇の養成所出身者、児童劇団出身者もいたし、自分でユニットを主宰していたひともいたりとなかなか珍しい集団だったのではないかとも思う。

いろんなひとがいたので、デジタルツールへの距離感もいろいろだったし、得意分野や興味の範囲も文字通り十人十色だった。劇団活動への関わり方の種類、頻度、深度もいろいろだった。なので、私が入ってからもコミュニケーションツールにはさまざまな変遷があり、使い始めてすぐ廃れたものもあれば定着して解散まで使い続け、今でも隙あらば使いたいと思えるツールもある。

中でもGoogle driveとSlackは、劇団解散後の仕事でも導入を進められるところでは提案するようにしている。Google driveはおおむねどこでも少なからず使わせてもらえるのだけど、Slackを受け入れてくれた団体は数えるほどしかない。Google driveの受け入れられやすさは、相手の使用経験の有無に関わらず、こちらからのテキストや表をGoogleで作って送ってしまえばすんなり使い始めやすいところにあると思う。ミーティング前に議題だけ書いたものを共有しておいて、会議中にそれぞれの端末で開いて共同編集しながら会議をする、という方法をよく採るのだけど、これをやると初めての方でも利便性を体感しやすいので大概歓迎される。予算組みも同じスプレッドシートで共同編集すれば、どれが最新だっけ???って迷子になることもない。

問題は、Slackである。

使い方に慣れてしまえばとても便利なのだけど、まったく初めての場合は導入障壁を感じやすいようである。すでにLINEやメールでコミュニケーションは事足りている、と思っているケースはなおさら「わざわざ新しいツールの使い方を学ばなくても連絡はとれるじゃん」と思うらしい。今はだいぶ日本語になったけど、日本で使われ始めたばかりの頃は表示が英語だったのも抵抗感を覚える要因だったかもしれない(註:自分たちが日本語で書き込むことはできる。機能表示等が英語だった)。決して難しい単語を使っているわけではなくても、「英語」というだけで「わからない」という反射をするひとが世の中には結構いるようだ。

だがしかし。一度使い慣れてしまうと、LINEにもメールにもない機能がいかに便利で効率的か、気づいてしまう。導入していないプロジェクトを回す際に不便を感じることが増える。当日運営の請負だけ、みたいなシンプルなお仕事のときはそこまで感じないけど、制作進行だったり、企画サポートだったり、一緒に検討する課題が複数ある場合に威力を発揮する。

今までの常識・働き方・生活スタイルを一変する昨今の事態は、こういう演劇界には広まり切っていないけど便利・使えるものを知ってもらうチャンスになりうると実感する。時間的なゆとりも平時よりは多少あって、知らないものを試行錯誤することへの心理的ハードルも下がっているのだろう。もしかしたら世の中にはSlackに限らず「一度慣れたらとても使い勝手がいい」ツールがほかにもあるかもしれないから、この時期に縁があれば使用感を確かめておきたい。

なんだかSlackの宣伝みたいになったけど、もうちょっと一般的な、汎用性のある話を書きたいなーと思って書きました。伝わっているだろか。

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