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落下する夕方読んだ

最近、一番本を読んでいた小学生の頃くらいのペースで本を読んでいる。いい傾向です。

今年の抱負は有言実行なので(大嘘)江國香織を読みました。どこで知ったんだっけな〜〜〜家長のむぎちゃんが言ってたんだっけな……
女の人が書く柔らかくて繊細な文章が肌に合って読みやすかったです。読後感さわやか〜〜〜で好きだった。

実は最初の方読んでて、失敗したかなと思ったんです。
私は全くといっていいほど贔屓の作家というのがおらず、図書館行ったら背表紙で読む本を選ぶので、思ってたのと違うなと思って書架に本を戻すことがままあるのです。だから背取りを自称している。○○さんの描くこんな世界が〜……とか言えるとかっこいいのにな。人の名前を覚えるのは苦手です。
そのくせ典型的なA型で一回手をつけた本を読みきらないともやもやするのでなんとか読み進めましたが、ちゃんと読んで良かったな……勿体ないことするところだった。

挫折の原因は主人公に共感出来なかったことです。主人公が八年連れ添った彼にフラれるところから始まってしばらく失恋シーンが続いたので、感情移入ができなかった。男女の恋愛……分かんなくって……
途中まで「この作品百合だぞ」と聞きかじった情報を頼みに読んでいました。最悪かも。

ヒモの華子さん

主人公は元彼健吾に未練タラタラですがしかし、色々あって別れる原因となった女・華子と同居することになります。びっくり。
この華子ちゃん、掴みどころがなくてわかんないキャラクターで凄く良かった。猫みたいな風みたいな、ムル・ハート女版って感じ。色んな男の元を転々としながら生きているヒモ女。でも自堕落な感じは全くなくて、むしろ高潔どころか少女っぽさもある不思議な人。
目を離したら消えているようなあやうさがあって、実際物語の終わりで彼女は主人公の前から姿を消します。彼と暮らした家の穴を埋めるように主人公は華子を住まわせ、ただいまといえばおかえりなさいが帰ってくることに癒されていく主人公。

しかし華子さん、人たらしだった。それはもうものすごく、救えないくらい。ふらっと出かけて一週間音沙汰無しとか平気でする。この女のせいで二組の男女が別れ、健吾(華子さんには興味を向けられていない)は引っ掻き回され、主人公に被害者が苦言をていしに来る。可哀想。
でも主人公はそれを受け入れてるし許している。主人公が家に帰って華子さんがいないとき、少しがっかりする描写が好きです。最初憎き恋敵みたいに思ってたのに。絆されてるね〜〜〜^^

しばらく健吾健吾だった主人公が、華子と暮らすうちに健吾のことを考えなくなっていくところ良かった。女二人のひっそり賑やかでちょっと雑で丁寧な暮らし、空気感が美味すぎる。自分、壁になります。

ここ、そうだそうだ男なぞ忘れちまえと思ってたけど、完全に忘れるんじゃなく、昔の写真みたく過去のものと割りきれるのがいいんだろうなと思い直した。さっぱり健吾と会えるようになってるの良かったな〜〜〜価値観のアップデートができるの、読書のいい所だと思う。だから私は本が好き。

華子という人

華子については、実はあまり明かされません。それは主人公目線で話が進むからなんだけど、そんなに知らない相手に気を許させる華子の魔力ってすごいんだろうな。実際にもいるんだろうな、そういう人。一回絆されてみたいよね……

華子に金銭面で援助をしてくれているという中島さんの別荘に女二人プチ逃避行をするところで、少し華子という人が見える。ずっと「ゲームオーバー」になればいいと考えていると華子は言います。

これを漏らしたの、主人公だからじゃなかろうか。ほぼ唯一肉体関係のない人だったんじゃないかな。華子なりに信頼していたんだろうなと思う。このまま二人で別荘に住めば良かったんだ。幸せに暮らせば良かったんだ。(願望)
しかし華子はどうやら満たされているのが苦しいみたいなので(どんぶりいっぱいのそばを見て食欲をなくすところとか)、それも無理な話だったんだろうと思います。生きづらいね。

関係ないけどこの別荘の持ち主中島さん、資金援助とか華子の感じとかからパパ活っぽいな……と思わせておいて、おそらく本当に父親なんじゃなかろうかと。華子と弟が話すところで母の話しか出てこなかったり、中島さんと弟に面識があるようだったり。
こうして書き出したら普通に父親だわ。華子が小さな頃離婚したのかもな〜〜〜……と思います。母親は華子にそっくりだったんじゃなかろうか。放任で育ったのかな……想像が広がって楽しい作品ですね。


最後に


タイトルの意味をずっと考えていたんですが、これ華子さんを象徴してるんじゃないかなと思います。

江國香織があとがきで、夕方があかるくて絶望していて好き、と書いていて、それって、それって華子すぎますよね〜〜〜!?!?とめちゃくちゃ腑に落ちた。
関係ないけど読み終わったとき天気が悪かったのでリアルで雷も落ちた。ラ、ライブ感〜……(本当に関係ない)

華子は落下していたんだなと思うと妙にしっくりきて、ラストは夜になっちゃったんだなと。こういうのめっちゃいい。作者のあかるくて絶望しているものが好き、という表現大好き。使わせていただこうかな。

百合と呼ぶにはあまりに淡白で、でもたしかにその波動は""有""ったと思います。
良い読書体験ができたと思う。しっとりした話が読みたい人、恋するおなごにおすすめしたい。他の江國香織も読んでみようと思います。

おわり

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