クリスマス・ベル

りん、ごんとなるベルの音は
祈りの声と重なり、遠くで鳴っている。
暮れること祝うこと、ここにある響きだけが、
この街を少しだけ厳かにしていく。
音、そして響きは人の気持ちを移ろわせていく。

もしもこのベルが、
あなたの生きるを変えるなら、と
腕を振り、振り、鳴らし続けるのだ。
りん、ごんと今年も寒い日だ。
月がつるりとして道を照らしている。
今日この日この時間だけは
光と音、波が綺麗に透けて見える。

祈る日々はもうやめにしたんだった。
夜ベランダで月を眺めては、
祈りに似た格好で、
だらりと首を垂れて、
鎌のように鋭利な輪郭に撫でられることを思いながら。
祈りとは、そういうものだ。
祈りとは、何かに馳せることだ。
十字の意味をもう知らない子どもたちは、
祈りらしきものの澱をここかしこに見つけるのだ。

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