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サンドラ・ヘフェリン『ほんとうの多様性についての話をしよう』

『ハーフが美人なんて妄想ですから!!』など、「ハーフ」について執筆しているサンドラ・ヘフェリン氏による最新刊。「多様性が~」と言われるなか、今の日本ではどうなってるの?と「ハーフ」や移民をめぐる日本の状況について書かれている。中学生くらいからでも読みやすいと思う。

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ことばへの違和感

 「ことば」や反応に対する違和感について丁寧に書かれている。例えば、「白人」の見た目だと英語で対応されてしまうこと、「どっちの国の味方?」と聞かれることなど。これは本当によく耳にする。あとはこの本でも触れられていた「私たち日本人は」という言い回しも。
 私は6年前頃から「外人」ということばに違和感持ち始め使えなくなり、今は本人が言わない限り「~さんは○○人」と言うことは避けている。例えば、国籍と、出身と、その人が自分を何人だと捉えているか(あるいは捉えたくないか)は全て一致するとは限らないからだ。そして、自分をどう表すかについて他の人が決める権利はない。「外人」と、「悪気なく」使う人を見る度気になってしまう。私も小さい頃、「アジア系ではない見た目の人」イコール「外国人」と決めつけていたし、人種差別的なことばを口にしたこともあるからだ(今だって残念ながら「こう感じるのは人種差別だな」と思うことが度々ある)。この本がもっと早く読めたら良かったなと思う。

「全部認める」ではない


 「異文化」だからといって、全部オーケーというわけではない。3章の「「多様性とはすべてを受け入れること」ではない」では、ドイツの取り組みについて書かれている。移民の文化を尊重すると同時に、文化・宗教内にある女性差別・同性愛差別には反対するという姿勢をはっきり示すそうだ。私は、ある宗派や文化のなかでは女性差別的なものもあるが、かといってそれを真っ向から否定していいのだろうか?と感じていた。けれど、「国や自治体が残酷な慣習にノーの姿勢を見せることは、移民家族や難民家族の中で一番弱い立場にいる女児や女性を守ることでもあります」(pp.97-8)「(中略)私は移民や難民を受け入れる国には、家族の中でもっとも弱い立場にいる女児や妻の人権を守る義務があると考えます」(p.98)という文にはっとした。「全部受け止める」わけではないよなと腑に落ちた。


 「多様性」というのは、向き合えば、ものすごく大変だし「面倒」だ。でも、既にそこにあるものだし、自分もその一部。それに一部の人だけが生きやすい場所なんて全然良くない。ことあるごとに言われる「多様性」がなんだか上っ面のようでうまく呑み込めなかったが、その大変さも含めてすっと入って来る一冊だった。

『ほんとうの多様性についての話をしよう』
著:サンドラ・ヘフェリン
旬報社 2022

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