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卒論を書き終えて

先月、大学を卒業した。文学とフェミニズムを学び続けた4年間だった。

私の卒業論文のテーマはブラム・ストーカーの小説『ドラキュラ』。4年生になる頃決めた。

1. テーマ決め(大学3年秋~4年春)

大抵の人は、卒論を書き始める前年の秋(大学3年の秋)からテーマを考え始める。私は3年の秋からイギリスへ留学しており、テーマは英文学にすることしか決まっていなかった。女性作家の作品、「トラウマ」がテーマのものを考えていたけれど、上手く考えがまとまっていなかった。留学先の先生に相談したが、英語で話しながら考えを整理するのは難しかった……。反省としては、先生に相談するなら具体的な作品名・作家名を挙げて聞くべきだった。

また、この頃研究者がツイッターで「卒論を書くときの注意点」を挙げて下さっていた。そこで共通して言われていたのは「学生はとかく壮大なテーマにしすぎる」ということ。私の「トラウマ」もデカすぎるテーマだ(そもそも何のトラウマ?)。そこで、何か一つの作品に絞ろうと考えた。


2. テーマ決め2(大学4年春)

転機となったのは、その秋と翌年の1月に観た2つの映画。秋に観た映画で「私の興味があるのはこれだったんだ!」と気が付いた。ここで、「女性の身体表象」と「恐怖」にまでテーマは絞れた。そして、1月に始まったホラー&ゴシック映画の授業。何週目かの課題映画がコッポラ監督の『ドラキュラ』だった。『ドラキュラ』があまりに完璧な映画で、頭をガツンと殴られた感じがした。ジェンダー・セクシュアリティというテーマで、『ドラキュラ』はすごく興味深い話に見えた。まずその授業のレポートで『ドラキュラ』映画の「視線」について書いたけれど、まだまだ書き足りなかった。

3.  原作を読む&資料集め開始(大学4年5月~7月)

3月に帰国し、留学先のオンライン授業が終わった5月から原作の読み込みを始めた。分からない単語が山のようにある。とにかく読まなければ!読まなければ書けない!の一心で確か6月の初週には読み終わった。指導教授とも相談して、英語で書くことを決めた。
それからオンラインを駆使して資料集めが始まった。某ウイルス流行のせいで大学図書館には行けず、大学が提携しているオンラインデータベースが頼りだった。留学先の図書館にもアクセスし資料を集めた。それと、これまでの授業で得てきた資料もとても役立った。やっぱり一貫してジェンダー・セクシュアリティ、なかでも女性表象に関心があったんだなあと思う。

4.  書き始め!...だが(8月)

8月に1章を書き始めた。ただ、ここで問題が発生。「卒論の構成ってどうなっているんだ.....?何が正解.....?」。留学中は、帰国したらこれまでの先輩たちが書いた卒論を読もうと思っていたのだ。でも大学図書館には行けず、卒論はオンラインではタイトルしか見られないようになっていた。焦った挙句、noteで「卒論公開チャレンジ」を見つけ読み漁った。もちろん全文を載せている人はいなかったけれど、構成をなんとなく理解した。留学に行こうが行くまいが早めに卒論を読んでおく方が良いと思う。何があるか分からないので.......。

5.  1章を書き終わる(9月)

スケジュールは人によると思うけれど、私は早い方だったのではないかと思う。秋もやはりオンライン授業だったため、先生との面談はzoomとメールが基本だった。3章立ての卒論は12月頃大体書き終えた。

6. 書き続ける(10月~11月)

ひたすら書く。もう一度『ドラキュラ』を観直しやっぱり凄い映画だと思った。この時期は卒論と並行して授業を15単位取っていたため、もうめちゃくちゃ。

7.  卒論大詰め~初稿完成(12月~1月)

もうクリスマスも年末もどうでも良い。落ち込んでいた時期だったこともあり半ば自暴自棄になっていた。書けない大変なことが色々と起こったが、切り抜けたので大変偉いと思う。初稿は1月に提出。
ここまで書いたけれど、この解釈は合っているのか、と悩んでいた。「正解はないのだからあなたがそれを(その解釈ができるのだということを)証明できれば良い」と先生に言われた。それで頭の中のもやが晴れた。

8. 最終稿に向け調整(1月)

また問題発生。目次と表紙を作らなければならないのに、上手くいかない。私は章ごとに別のwordファイルを作り保存していたため、1つに合わせることが案外大変だった。バラバラにしなければ良かったと思っている。脚注もごちゃごちゃになり、本当に泣きながらwordと格闘した。あとからwordについてまとめたブログを見ると、「やってはいけません!」と書かれていることを最初にやってしまっていたことに気が付いた。

9. 提出!

書き終えたあとに一番大事なことが「読み直し」。印刷して赤ペンでチェックしながら読んだ。あと、大学にはネイティブの大学院生が添削してくれるサービスがあったので何度もお願いした。「上手く書けているつもり」でもスペルミス、文法ミス、引用ミスがけっこうあったので細かくチェックした方が良いと思う。剽窃が怖かったため、特に引用ミスは何度も確認した。

そして、1月下旬に提出。かなり早く提出できた。早めに始めるに越したことはない!

大学で学んで思ったこと

結局、大学で勉強するって、研究するって何だろう?「役に立たない」と言われがちな分野(文学)を勉強していたこともあり4年間ずっと自問自答していた。

シンプルにいうと、「これが気になる」ということを追求するために入るのだと思う。私は生きているなかでずっと腑に落ちないことがあり、フェミニズムを勉強すればそれが分かるのではないかと思って研究を始めた。そのための機会、資料、時間がふんだんにあるのは大学だった。「文学を勉強するなら、「私は」こう考えているということをちゃんと書きなさい。自分の意見を言っていいんですよ」とある先生に言われたとき、私が自分の考えを言ってもいいのだと思えたのだ。心の底にあった怒りや疑問を消さなくて良かったなあと思う。

でも、「大学に入ることが絶対。じゃないと仕事がない」という社会は嫌だなと思う。勉強したくないのに入ったら苦しいし(したくて入っても苦しい)、いつ何を学びたいかは人によって違う。大学が一番良い環境だとも限らない。だから、本当は、制度でも経済面でも、大学がいつでも入れる場所になったらいいなと思う。



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