リマスター版ガンダムSEEDの歴史に埋もれた名曲・石井竜也「RIVER」について
もうすぐリマスター版「機動戦士ガンダムSEED」のDVD-BOXが発売する。
懐かしくなって、当時の3クール目エンディングに起用されていたこの曲を最近よく聞いている。
リマスター版SEEDは放映時あったバンクの使い回しや、総集編を綺麗にカットして、新規作画もモリモリ取り込んだ完全版として、世間的にも評価が高い。
私も重田智さんによるメカの新規ビジュアルや、キャラデザの平井さんによる新規作画の数々にはリマスター放映当時、リアルタイムで観て大興奮したものだ。
しかしリマスター版唯一と言ってもいい不満点の一つが、この曲がオミットされたことである。
SEEDの主題歌はレコード会社を縦断したタイアップだったから、確か当時かなり話題を呼んでいたと記憶している。
通常タイアップ曲はレコード会社・あるいはその中のレーベルを縦断して起用するということはあまりない。権利の問題でディスク化しにくくなるからだ。
コナンの主題歌が、近年の劇場版を除いてほとんどBeing系(GIZA系)のみで固められていたのが良い例である。
しかしSEEDでは最終話後、全主題歌を網羅したコンプリートアルバムが発売された。
これは当時の担当者方が奔走してくださったおかげだと、確かアルバムのブックレットで紹介されていたように記憶している。
SEEDの主題歌はどの曲も素晴らしいのだが、私が特に好きだったのが、石井竜也氏の「RIVER」だ。
しかしリマスター版では、この曲はなくなってしまっている。
代わりに3クール目に該当するエピソードからは、FictionJunction YUUKAによる新主題歌「Distance」が使われるようになった。(多分フライングドッグと梶浦由紀さん繋がりではないだろうかと、個人的には思っている)
これもこれで、初めて聞いた時は心に染み入ったいい曲である。
余談だが、中島美嘉さんによる名曲「FIND THE WAY」も、コロニーメンデル後のエンディングと最終話でしか使われていない。エンディング映像ともマッチしている素晴らしい曲なので、実にもったいないな…と思う。
さて「RIVER」というタイトルから、名前だけ言うと周囲に「AKB?」と言われるくらいにはマイナーな曲だが、私はこの曲が好きだ。
音楽の技術的なことについては門外漢で書けないが、歌詞がとにかくよい。
当時は物語中盤のキラの心情を、ひいては青年期の何ともいえぬ葛藤を歌っているようだなと感じていたが、大人になって改めて聞くと、またちがう味わい深さを感じる。
「やるせない儚さに 身をゆだねるほど
そんな危うい時代に
あがいても手の届かない 岸を目指し
無我夢中で泳いだ」
「流れに逆らう 声も上げられない
行き止まりの場所で」
約20年前の曲になるが、まるで今の時代をも歌っているようだ。
「そう 愛が全てを助けるとは 思わない
だけど君の微笑み
心を癒すその唇に
立ち上がる勇気を もらうのさ」
ちなみにこの部分は、物語と重ねると個人的にはキラとフレイのようだな…思っている。
(超余談であるが、キララク好きだがフレイも好きな私である)
行き詰まった想い。
頑張っても報われず、それでも浮かび上がりたいと、必死でもがいているような。
そんな感情が飾らずに綴られた歌詞は、色々なことが起こりすぎて、低迷した今の世相にも通じる。
時には間違っていても進まなくてはいけない、進み続けなければいけない。
それでも「もう一度この手にチャンスを」信じていたい。
そんな自由にならない中での、ひたむきさを感じる曲だ。
リマスター版が盛り上がる中、思い出した方には是非また聞いてほしいな、と思う名曲である。
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