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情報の構造化について

はじめに(読み飛ばし可)

ある日、前回の記事でも登場したYさんから、メールマガジンの原稿のレビュー依頼が来ました。とあるサービスに関する告知のための文章ですが、概ね以下のような内容です。(具体的なサービス名などはぼかしています)

本サービスは、Webブラウザとアプリの両方から利用できますが、アプリの方がおすすめです。
1.アプリのダウンロードサイトからインストールし、本サービスをお気に入り登録してください。
2.新着情報の見逃し防止に「後で読む」機能が使えます。
3.お気に入り登録していると、本サービスの新着情報を見つけやすくなります。

「んんん?」となりますよね。
そう、これが情報が構造化されていない状態です。一見すると箇条書きなので整理されているように見えますが、よく読んでみると、
1ではアプリのインストール方法や「お気に入り登録してください」といったお願い
2はアプリを使うメリット
3はお気に入り登録することのメリット
と、異なる状況や階層の情報が入り混じっていました。なお、3の機能はブラウザ・アプリの利用者どちらでも利用可能であるため、誤解を招きそうな書き方でもあります。

このように、情報の整理・構造化が出来ていないと、伝えたいことが伝わりにくくなったり、誤解を招いたりしがちです。

情報の構造を意識して書き直した一例が下記です。
どうでしょう。多少分かりやすくなったのではないでしょうか。

本サービスは、Webブラウザとアプリの両方から利用できます。本サービスをお気に入り登録していただくことで、新着情報を見つけやすくなります。また、アプリでは「後で読む」機能が使えますので、より新着情報をチェックしやすくなるためおすすめです。アプリをインストールする場合は、ダウンロードサイトをご利用ください。

また、「情報を構造化して理解する」スキルは、自身の考えやタスクを整理する際に、抜け漏れを防止したり、全体の流れの把握にも役立ちます。こうしたことに苦労しがちな方は、もしかしたらこのスキルが不足しているのかもしれません。前回の記事で取り上げた段取りにも密接に関係していそうです。

というわけで今回は、「情報の構造化で視界と頭すっきり!」大作戦です。

構造化できない人と構造化できる人の違いとは

これまでの経験上、大まかには以下の4点が出来ていれば情報の構造化は問題なくできるはずです。

  1. 情報の整理やカテゴリ分けが出来るか

  2. 自分の主観だけではなく、他の関係者の視点など、客観的な情報を掴めているか

  3. 典型的な構造のタイプを知っているか

  4. 情報の理解や説明の際に図を活用しているか

逆に、今さくっと情報を構造化できていない人は、上記を心がけることで、少しずつ勘所が分かってくると思います。1と2は情報の把握のために必要で、3と4は情報の整理のための助けとなるテクニックです。

構造化思考の基本スキル

構造化する際の基本的な考え方は、おおよそ以下の3つです。

  • カテゴリ分け・グルーピング:性質の近いものや似ているものをまとめます。

  • 順序や関係性の理解:時系列や因果関係など、まとめたグループごとに関係性があるかどうかを把握します。

  • 図解:情報量が多くなると、言葉だけでは限界があります。図に落とすことで、理解や整理がぐっとしやすくなります。

グルーピングの際に注意したいのは、そのカテゴリの階層が同じであるかどうかです。例えば、果物・野菜・肉類であれば同じレベルでのくくり方になりますが、果物・野菜・手羽先、と言われたら、「手羽先だけ何だか細かくない?」となります。情報の具体度/抽象度が同じくらいになるようにまとめるようにしてください。

また、図解は特におすすめです。複雑な図を描く必要はなく、グループをまとめて丸で囲ったり、お互いの関係性を矢印で記したり、順番があるのであればその順序に並べ替えたりなど、簡単な図でも頭の中が整理される効果があります。

ビジネスで活用できる構造化のフレームワークと具体例

典型的な型≒フレームワークの重要性

次に「典型的な構造のタイプ」についてです。毎回自分で構造を考えるのは大変なので、ある程度の型を知っていると「今回はアレに似ているかも?」と大まかなアタリをつけることができます。
ビジネスでは詳細は違えども、似たようなシーンや課題に遭遇することは多いので、これまでたくさんの人が考えて行きついた共通の「型」=フレームワークが存在します。有名なものを覚えておいたり、自分の業務でよく使われているフレームワークを調べておくと、普段の仕事に当てはめることができます。

MECE:基本的な考え方

フレームワークについて解説する際に、必ず出てくるのが「MECE」という言葉です。「漏れとダブりがない状態」を指します。情報の整理を行う際に、抜けているものがないことや、違うグループに同じ情報が二度入っているなどの重複がない状態が望ましい、ということです。情報や考えを整理する際の基本的な考え方として、常に振り返る癖をつけておくことがおすすめです。
なお MECE は Mutually Exclusive, Collectively Exhaustive の略ですが、これは覚えなくても大丈夫です。

フレームワークの例

フレームワークには、ツリー型に課題などを分解していく「ロジックツリー」や、因果関係を考える「空・雨・傘」などの汎用的に使えるもののほか、分野によって最適化されたフレームワークがあります。
例えばマーケティングであれば、消費行動のプロセスを示すAIDMAやAISAS、VISAS、顧客や市場環境の分析に使う4Pや4C、ポジショニングを考える際のSTPなどです。すべてを覚える必要はありませんが、自分が整理したいことに適した「考え方のモデル」は何かしら存在するはずです。先人の知識を遠慮なく借りましょう!

実践&トレーニング方法

それでは、どうすれば情報を構造化して捉えることが出来るようになるのでしょうか?図解やフレームワークについて学ぶのももちろん大事ですが、個人的には普段の仕事などで少しでもその考え方を取り入れていくことが、結局は近道なのではないかと思います。
例えば、自分の仕事のスケジュールを考える際に、タスクをツリー形式で書きだしてみると、意外と抜けが見つかるかもしれません。また、何かの判断をする際に、比較するための軸には何があるのかを考えて書き出してみると、無意識にしていた評価の根拠が明確に見えてくるかもしれません。
時間があれば、それらを図や表にしてみると、より分かりやすく整理できることが実感できると思います。

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