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『senseとsentence』

深い眠りに就いているセンサーを
呼び起こすために油を注す

ギシギシと耳障りな声で目覚め
訝しげに
御用済みではなかったのか、と
大きなアクビで応え、
窓の外に広がる光を浴びながら
ゆっくりと伸びをしている彼

いつぶりかに呼び起こされ
鈍りきった様子のその体は
果たして使い物になるのか
何とも不明だけれど
あの日
縛りつけて眠らせてしまった事を
まずは心から詫びておく

それから彼に
自分勝手な理由(わけ)を伝えた


もう一度
潜らなければならない
そして
泉を見つけなければならない
そこから湧き出る葉を拾い集め
筆を取らなければならない
いや、筆を取りたい

だから
もう一度、この手を取ってくれないか
あと一度だけでいい

潤滑油が不足している事は承知の上
軋む音も良い味を醸してくれるだろう
だからそのままで
それが今の真実なのだから
偽りなき声で
どうか、この手を取ってくれないか


錆び付いた瞳は
じっと、こちらを見つめ
何かを窺うように冷笑し
またゆっくりと伸びをしながら
わたしの胸に、手を当てた



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