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ノスタルジーな飯テロ

こんにちは。

今月末に3回目の締め切りを控えた「日本おいしい小説大賞」。
食の描写に秀でたフィクションの書き手の発掘を目的として創設されたもので、2020年の創刊以来着々と刊行されています。

小説家にとって腕の見せ所と言われているのが、食の描写です。
 池波正太郎『鬼平犯科帳』の魅力は数多くありますが、作中に出てくる食べ物があまりに美味しそうであることも、その一つであることは間違いありません。
 また、どんな小説を読みたいか30代~50代の女性(本を買って読む習慣のある主要層)にアンケートすると、「食にまつわるお話」とこたえる方の比率は非常に高くなっています。
 今も昔も“食小説”には一定以上のニーズがあります。

これまでにも『泣き終わったらごはんにしよう』、『氷と蜜』初回に刊行された作品は読了したものの、その後はすっかり忘れていました。


外出自粛生活も延長となり、睡眠時間も事足りた今、高まるのは食欲です。
食べることで感じる味覚はもとより、美味しそうだと感じる嗅覚と視覚、舌に感じる温度、咀嚼する時の触覚、鼻に抜ける香り、嚥下する際ののどごし。
美味しいは、口にする前段階も含めて、多様な感覚が一体となった体験です。
今週手に取ったのは、多様な食にまつわる感覚を文字で表現した作品です。

〈 書籍の内容 〉
80年代 東京――僕と不良のひと夏の物語
中学卒業と同時に渡米し、長らく日本を留守にしていた吉田倫。吉田は旧友である寿司屋の主からの誘いに応じて、中学の同窓会に赴いた。
同窓会のメインイベントは当時作ったタイムカプセルを皆で開けること。タイムカプセルの中に入っていたのは、アイドルのブロマイドに『明星』や『平凡』といった芸能雑誌、『なめ猫』の缶ペンケースなどなど。三十年以上前に流行した懐かしいグッズの数々に、同級生たちの会話が盛り上がる。

そんな中、吉田の紙袋から出てきたのは『ビニ本』に『警棒』、そして小さく折りたたまれた『おみくじ』だった。
それらは吉田が中学三年の夏休みに出会った、中学生ながら屋台を営む町一番の不良、東屋との思い出の品で――。
平凡な「僕」と不良の「あいつ」、正反対の二人が出会った、ひと夏の切ない物語。

〈 編集者からのおすすめ情報 〉
ラスト2ページは号泣必至、時を越える想いに涙が止まりませんでした。
読み返すたび、6回も泣いた作品は本作が初めてです。


残念ながら編集者さんのように、実際に私が泣くことはなかったものの、作中に登場する鉄板で調理される料理の美味しそうなこと。
屋台から高級店まで調理場面は鉄板を使った料理。
現代と過去を繋ぐ絆は、あらすじでおおよその予測はつきますし、決してキレイなだけの世界ではないものの、読了感はホッとするものです。

「生唾&落涙確率100%。圧巻の感動デビュー作」と編集者さんが語る『テッパン』は、公募から2年越しに刊行された作品なのだとか。
料理上手と評される著者の作中の描写に注目。
作中の料理が食べたくなる描写の作品は数多くありますが、こちらは誰かと一緒にご飯が食べたくなる小説です。
ホッと一息つきたいとき、疲れて何だか食欲が湧かないとき、ご飯の美味しさを思い出させてくれるような『テッパン』がおすすめです。

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