キティちゃんは戦わない。
「待って!倒すなんてやめて!」
これは、私がピューロランドで感銘を受けた言葉だ。かの有名な、ハローキティの言葉である。
ピューロランドとは、東京都にある「サンリオピューロランド」のことだ。
私はサンリオという会社が大好きだ。回し者でもなんでもなく、ただ単に会社のファンなのだ。
(※ピューロランドを運営しているのは、正確には「サンリオエンターテイメント」という関連会社)
現在24歳の私がサンリオのファンになったのは、約2年半前のことである。
当時の私は大学3年生で、就職活動を控えていた。いろいろ自分なりに考えてみて、「幸せ」を大切にしている会社に入りたいなあと考え、理念・価値観重視で会社を探していた。
ただ、ピンとくる会社は簡単には見つからず。そんな時、私の就活を支援してくれていたメンターさんが「私の友達がサンリオに内定をもらっているんだよね。そういうところも見てみたらいいんじゃない?」と教えてくれた。
「サンリオ……!」
なんだかとてもピンときた。めっちゃよさげじゃん、という謎の直感。ポムポムプリンやシナモンはもともと人並みより好きだったが、そういう話ではない。心に何かがどかーんとぶつかってくる感じ。いてもたってもいられない。
そして、すぐにサンリオについて調べた。直感というのは当たるもので、企業理念を見て胸がいっぱいになった。
サンリオの企業理念を簡単にまとめると(本当は簡単にまとめたくはない)、”「ともに生きる仲間たちと信じあい、仲よく生きていく」という幸せを実現するために、心を贈り、心を伝えるビジネスをする”というものだ。
https://www.sanrio.co.jp/corporate/about/spirit/
いやもう、すばらしいやん、なんだこれ。人と仲良く生きていく幸せを、助け合って生きていくことの大切さを、まっすぐ掲げている。私が理想とする世界そのものだ。かわいいキャラクターたちが生まれた背景には、こんな素敵な思いがあったんだ。
それを知ってからというもの、私はサンリオキャラクターの商品やSNSでの投稿すべてにいちいち感激し、しびれるような感覚を持つようになった。理念ありきでキャラクターを見ると、いとおしさが10倍増しくらいになる。
Twitterでポムポムプリンが「今日も一日がんばろう♪」と言うのを見るだけで一日頑張れるし、マイメロディが「なやむじぶんをみとめられると、じぶんにも、おともだちにもやさしくなれるの。」と言うのを見るとグッときて泣きそうになる。
(ちなみに最近のコロナ禍において、サンリオキャラクターたちはソーシャルディスタンスや手洗いうがいをかわいく呼びかけている。)
そんなこんなで私はサンリオが好きになり、サンリオについていろいろと調べるようになった。そして出会ったのが「いちご新聞」、そしてそこに掲載される「いちごの王様からのメッセージ」だ。
「いちご新聞」はサンリオが毎月発行している雑誌のようなもので、キャラクターについての特集や、発売予定の商品の紹介などが載っている。立派な付録もついて、本体価格200円。安すぎる。かわいい付録をつけて低価格で手に取りやすくすることで、サンリオの想いを少しでも多くの人に届けたいのだと、私は勝手に思っている。
いちご新聞の中で私が一番好きなのは、「いちごの王様からのメッセージ」だ。いちごの王様とは御年92歳になるサンリオの辻社長のキャラクターである。辻社長は、毎月「いちごの王様」としてサンリオファンにメッセージを送っているのだ。
いちごの王様は一貫して「みんななかよく」を唱える。毎月、とてもまっすぐであたたかいメッセージを私たちに伝える。時には自身の戦争経験を語りながら、平和な世界を願い続ける。
ゆっくりと語りかけるようなメッセージに、私はいつも心を動かされる。月並みな言葉になってしまうが、とても偉大で素敵な経営者だと思う。
いちごの王様のメッセージはホームページでも公開されているので、ぜひ読んでみてほしい。この時代に、こんなにもまっすぐに平和への願いを伝える人がいる。
https://www.sanrio.co.jp/strawberrymsg/
サンリオの理念を知ってから少し経って、私は就職活動で東京に行くことになった。せっかくだし少し長めに滞在して友達にも会いたいな、少しは観光でもしようかな、なんて思った時にハッとした。
「いや、ピューロランド行くしかないやん。」
忘れもしない2018年1月末。私は友人とともに、東京都にあるサンリオピューロランドへ行った。サンリオキャラクターをモチーフとした、屋内型のテーマパークだ。
ピューロランドには小さい頃に行ったっきりで、ほとんど覚えていなかった。ほぼ初めて来たような気持ちでキャラクターとグリーティングをしたりアトラクションに乗ったりして楽しく過ごした後、私は衝撃を受けることになる。「ミラクルギフトパレード」でのことだ。
ピューロランドでとても人気がある「ミラクルギフトパレード」。パレードと言ってもただ歌ったり踊ったりするだけでなく、きちんとストーリーがある。当時の私は、特に内容も知らないまま見始めた。
(※以下、パレードのネタバレになります。)
神秘的かつワクワクするようなメロディーとともに、カラフルな衣装を着たダンサーたちが踊るオープニング。
その後、人気のキャラクターたちがたくさん出てくる。キティとダニエル(キティのボーイフレンド)を中心に、キャラクターたちがパーティーを始める。なんてかわいい世界……
簡単な振りが用意されていて、観客たちも一緒に手を動かす。私ももちろん一緒に踊る。楽しい。
この楽しい時間が続くと思っていた矢先、「闇の女王」が現れる。キャラクターたちが仲良く歌い踊っていた幸せな世界を壊してしまうのだ。女王やその手下たちが私の大好きなキャラクターたちを傷つけ、幸せな世界を壊していく。
私の大好きな世界が壊されると思うととても悲しくなり、ここで私はちょっと泣いた。
そして、私がそう思ったように、大切な世界を守りたいと思ったダニエルが言う。
「みんなで闇の女王を倒すんだ!」
それに対して、キティはこう言うのだ。
「待って、倒すなんてやめて!」
冒頭で紹介した言葉だ。
衝撃だった。
私はここで涙した。キティちゃんは、敵を倒さないんだ。いや、そもそも、「敵」という概念なんてなく、みんなと仲良くするのが当たり前なんだ。なんて素晴らしいんだ。
キティは続ける。
「闇の女王を、信じたいの。みんなで闇の女王にパワーを送りましょう!」と。
そしてキャラクターたちはみんなで女王にパワーを送る。
すると…真っ黒だった女王が、華やかな音楽とともに真っ白の姿に変わるのだ!
そして闇の女王はキティたちに感謝を伝え、皆で仲良くパーティーを再開する。
キティは言う。
「みんな、お友達と仲良くしましょうね!」と。
省略しているセリフもあるので、ぜひパレードを見てみてほしい。今ならなんと、キティの公式Youtubeで全編が見られる!コロナによるこんな状況だからこそのピューロランドからのプレゼントだ。
ミラクルギフトパレードは、まさにサンリオの理念を体現したパレードだった。ピューロランドはなんて素晴らしいんだ。興奮がおさまらなかった。
キティは誰のことも否定しない。認めて、信じて、仲良くするんだ。
そんなの綺麗事だ、と言う人もいるかもしれない。でも私は、こういう世界が実現できると信じたいし、こういう世界をつくっていきたい。
ちっぽけな存在の私が世界を語ったところで何かが変わるわけではないが、私は、私と関わる人を幸せにしたいし、その輪を広げていきたいんだ。キティちゃん、改めて気づかせてくれてありがとう。
その後、本格的に就職活動を始めた私は、サンリオの会社説明会に行った。めちゃくちゃ入社したくなることを想定して行ったが、意外なもので、「ファンとして会社を応援する方がよさそうだな」というのが正直な感想だった。
もちろん、説明会の雰囲気はあたたかいものだったし、魅力を感じる点もあった。
一応エントリーシートは出したが、予想通り落ちた。悲しさや悔しさがないわけではなかったが、まあそうだよな、という感じだった。そして、ファンとしてサンリオを存分に応援しよう、と思った。
実はサンリオに負けず劣らず志望度が高い会社も他に1社あり、現在はその会社で働いている。思い返すと、「どうしてもサンリオだけは受けたいんです」という私のわがままを受け入れて、書類選考の結果が出るまで内定承諾の期限を延ばしてもらったのは本当にありがたい対応だった。ありがとうございます。
今の会社に入って、配属先が一緒になった3人の同期と特に仲良くなった。うち2人は男性だ。(Aくん、Bくん、Cちゃんとする。)
ある時4人でご飯を食べながら、旅行にでも行きたいね、なんて話していた。私は「ピューロランド行きたい!」と言った。女性はともかく、男性はそんなに行きたいと思わないだろうな、なんて思いつつ、ダメ元で。
返ってきた答えは意外なものだった。
「え、行こうよ!」
マジか!?と私は思った。サンリオだよ、かわいいところだよ、いいの!?と何度か確認した。AくんもBくんも、いいじゃん、みんなで行こうよ、と言ってくれた。
後からBくんに聞いたところによると、私がそれ以前からサンリオの理念が素晴らしいことについて力説していたのもあり、なんとなく興味は持ってくれていたらしい。
そんなこんなで、本当に同期と4人でピューロランドに行くことになった!昨年の夏のことだ。
みんな一緒にピューロランドを楽しんでくれて、ミラクルギフトパレードもしっかり見てくれた。振りも一緒にやってくれた。
なんていい人たちなんだ、と思った。
一泊二日の旅行で、ピューロランドだけでなくお台場でも遊んだし、話題のタピオカミルクティーも飲んだ。帰りは新幹線で座席を向かい合わせにし、みんなで駅弁を食べた。
なんて幸せなんだ、と思った。私の「ピューロランド行きたい」という発言があれよあれよと現実になり、大好きな同期と楽しい時間を共有している。私がサンリオを好きじゃなかったらこの旅行はなかったかもしれないし、こうして同期と仲が深まることもなかったかもしれない。「みんななかよく」って、本当に幸せだ。
3人とは、会社の同期という概念を超越した仲になり、この旅行の後もとても仲良くしている。
そして、なんと先日、Aくんがサンリオの株を買った。そして私にこう言った。
「株主優待でピューロのチケットもらえるから、また4人で行こうね」
もう、私は胸がいっぱいだ。おそらく私の影響でサンリオに興味を持ち、魅力を感じ、会社を応援したい気持ちもあって株を買っている。そして、また一緒にピューロランドに行こう、と言ってくれる。
本当に、なんて優しい世界なんだ。今これを書きながらも涙目になっている。
もしかしてこれも、サンリオが目指している世界の一つなんじゃないだろうか。こういう輪が広がっていくのも、サンリオの願いなのではないだろうか。
サンリオのおかげで私たちの仲は深まり、みんな仲良く、幸せな日々を過ごしている。ありがとうサンリオ。
もちろんそれは、私の話に興味を持ってくれた同期3人自身のおかげでもある。ありがとう。
何にせよ、私のまわりは優しさで包まれている。私は本当に幸せ者だ。みんななかよく、って、やっぱり幸せだ。
こんな世界が広がっていったらいいな、と心から思う。
これからもずっと、私はサンリオを応援する。大好きな同期と、絶対またピューロランドに行く。
サンリオの想いがもっといろんな人に伝わって、みんななかよく幸せな世界が広がっていきますように。
願わくば、私のこの拙い文章がそのきっかけを作れたらいいな、なんて思う。
他にも語りたいエピソードはあるが、それはまたいつか。
〈以下、あとがきのようなもの〉
Twitterでたまたま岸田奈美さんを知った。この人の文章、めちゃくちゃおもしろい!と、noteを読み漁った。
私もおもしろい文章書けるようになりたいな、と、キナリ杯への応募を決めた。もともと文章を書くのは好きだし。
note自体にもハマりつつある。素敵な文章がめちゃくちゃいっぱいある。なんでもっと早く気づかなかったんだ。でも逆に、このタイミングで気づけてよかったとも思う。岸田さん、素敵な世界を教えてくれてありがとうございます。
自分の経験や感情を文章にするのって楽しいな、とこのnoteを書きながら思った。本当はもっとユーモアのある言葉選びでクスッと笑えるものを書きたいが、まだなかなか難しい。それに、無理にそうしようとすると自分の文章ではなくなりそうだなと思う。
今後もnoteを使って、自分なりの「おもしろい文章」の形を見つけていきたい。
次は何を書こうかな。
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