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えぐみのようなもの

昔は本が嫌いだった。毎日のように学校にやってくる、15分間の朝読書は、ただ時間を目で追っているだけで、睡魔との闘いだった。でもいつからか、本の虫。インクと紙が織り重なる存在を、無視できなくなっていた。

呼吸のように本を読む。いまや時間を忘れて、いや呼吸することすら忘れて、大量の本を読み漁る。瞼が重くなるまで、読み耽る。詩集も、エッセイも、純文学も。呼吸のように、自分と溶けあっていく。

でも溶かしきれないもの。そんなえぐみのようなものが、自分の正体なのでは、と、思ってみたりすることが、自分のえぐみなのでは。溶かしきれないものは、無理に溶かさなくてもいい。そんな知恵のようなものを、本のようなものから学んだ、ようにも思える。

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