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『ルックバック』

藤本タツキ先生の読み切り漫画
『ルックバック』

人気者の少女と不登校の少女が学年新聞の4コママンガをキッカケに出会い、人生が変化していく。

今回はこの漫画を読んで思ったことを書いていこうと思う。ネタバレありなのでご注意を。


ーーーなぜ藤野は卒業証書を届けに行ったのに、あの場で4コマ漫画を描いたのか?
廊下に置かれたスケッチブックの山を見て内心驚いたが、やはり4コマ漫画を先に始めたのは自分だし自分の方が才能があるということを形にして見せつけたくて描いたのだと思う。
4コマ漫画の内容も考察する。京本は絵の才能があって藤野とは大差をつけてうまい。が、その京本の才能が陽の目を浴びて欲しいという想いとそのまま隠れたままで居て欲しいという想いの葛藤が藤野にはあるのだと思う。

ーーー藤野と京本の位置関係
投稿した漫画が準入賞して街に遊びにいくまでは、京本が藤野の後ろにいるという配置ばかりだった。これは京本が藤野の跡を追いかけていることを表している。しかし、街で遊んだ帰りの電車の中でその配置が逆転する。京本が外の世界へ飛び出したのだ。その後は京本も部屋に籠らず積極的に外へ行き、さらなる背景画の上達を求めて美大を目指すようになる。そして2人は別々の道を歩んでいく。

ーーー藤野の描く姿
藤野が漫画を描く姿は本作では後ろ姿ばかりである。これがとても印象的。
「京本も私の背中を見て成長するんだなぁ」
と藤野が作中で述べている。ルックバックという題名通り私の背中を見て追いついて追い越してという想いがあるんだろう。しかしここで “京本も” という部分が気になる。これは藤野自身が京本の背中を見て育ったということを意味しているのだと思う。京本との圧倒的画力の差を小学生時代に見せつけられ、その背中に追いつきたいという想いがあったのだ。

ーーー窓
京本と別れてからの藤野は都会の街で部屋を借りて漫画を描いている。しかし、この描写がどこか虚しく孤独感や喪失感を感じた。今まで実家で描いていた時は窓の外で季節の移り変わりが分かり、藤野が黙々と楽しんで絵を描いている雰囲気が伝わってきた。しかし、この都会の部屋の窓は大きくて世界が開けているように感じるが変わり映えがなく、部屋の中で変わっているのは漫画の冊数だけ。これが虚しく感じる要因なのだろう。

ーーー『ルックバック』
前述にも書いたが、この作品の中で藤野と京本は互いの背中を見ている。振り返ってみると、初めは藤野が京本の背中を、そして次は京本が、それを繰り返しながら2人で競い合って漫画を描いてきた。最後のシーンでは藤野が一枚の紙を窓に貼っている。これは京本が描いた4コマ漫画だと私は思う。京本の背中を追い続けていた日々を忘れずに、振り返りながら、これからも漫画を描き続けていこうという藤野の意志が読み取れた。

ーーー表紙の藤野の部屋と机に置かれた1枚の紙
藤野の楽しかった頃の全ての思い出は、藤野の実家の部屋と4コマ漫画の紙に全て詰まっているということなのだろう。


たくさん思ったことを書いただけだから、分かりにくい部分も多々あると思いますが読んでいただけて嬉しいです。
藤本タツキ先生の漫画をもっと読んでみたいと思いました。そして、今となってはお目にかかれない『ルックバック』の改変される前のものを是非読んでみたいですね。

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