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舞台に、花は咲き乱れ(四)

 梅雨ってどうして梅の雨って書くのだろう。この字面だとかわいく緑色に色づいた梅がたくさん降ってくるような気がする。それではファンタジーだ。しかし、つゆ、と音だけで聞くと、嫌でも今みたいなジメジメとした空模様とイメージが直結してしまう。
 もうこんな季節なのか。桜の花びらに降られていたのが昨日のことみたいに思い出せるのに。
「どうしたの?」
 鈴が鳴るような声で囁かれ、思考を中断させた。その声だけですぐに誰か分かった。芽瑠だ。
「ううん、季節の移ろいは早い、と思っちゃって」
「アンニュイだね。でも、花音のそんな表情も悪くないかも」
 いつもツインテールの芽瑠が愛らしく微笑む。こんな顔されたら異性はたまらないだろう、きっと。よく分からないけど。
 岡本芽瑠は同じクラスの同級生で、入学してから一週間で仲よくなった。話しかけてきたのは向こうだった。
 ――その髪型、かわいいね。どこかの美容院で切ってるの?
 そう言ってきた彼女の方がずっとかわいらしい容姿で、圧倒された。なんというか、絶対的に「かわいい」人。見た目も性格も含めて、「美人」には転ばない感じ。特に好印象は抱かなかったけれど、接し方はナチュラルだった。
 ――ううん、自分で切ってる。
 ――そうなんだ。器用なんだね。
 その後、当たり障りのない話を二、三したはずだが、記憶に残っていない。
 また話す機会があったのは翌日だった。部活へ向かおうとミナちゃんと並んで歩き出すと、呼び止められた。
 ――ね、何部に入ってるの?
 ミナちゃんの存在を無視するかの如く、あたしだけを捉えているのは気にかかったけど、たぶん二人は互いを知らないのだろう。
 演劇部、と答えると、芽瑠は顔を輝かせた。
 ――へえ、楽しそう。あたし、入りたい部活がこれといってなくて、見学してみたいんだけど……一緒に付いていっちゃ、迷惑?
 首を傾げられては断れなかった、というわけではないが、とにかく案内することにした。その頃にはあたしとミナちゃんは部の先輩方にも名前を憶えてもらえ、活動では基礎練習に励んでいた。
 かわいい女の子に目がないミナちゃんは芽瑠をいたく気に入り、次第に二人の関係は近しくなった。自然とあたしと彼女も親密になり、もっと仲良くなれるかなと、そう思えた。
 演技にそんなに興味のなかったらしい芽瑠だったが、意外と聡いところがあるようで、練習にもすぐに慣れた。あっという間に部に溶け込んで、愛らしい笑顔を振りまいている。
 芽瑠はかわいい人だ。あたしにとってそれ以上でもそれ以下でもないかもしれない。変な意味じゃないけれど、そう思いたくなる。小百合は、どうだろう。小百合は芽瑠みたいな子、苦手な可能性がある。
「なんの話してるの?」
 のんびりとした口調で、ふらりとミナちゃんが現れる。彼女を見ると心が和む。そうか、もしかしたら、この学校に来るような女生徒は、芽瑠のような人が普通なのかもしれない。
「花音が季節の移ろいを憂えてた」
 芽瑠の答えに、「え、詩人だね。一句詠んじゃう?」とおどける。あたしたちは笑った。
 それにしても、ミナちゃんと小百合の友達の方のミナちゃんを会わせてみたい。あたしも会ったことはないのだけど、小百合が言うにはけっこうかわいいらしい。こちらのミナちゃんのお眼鏡にかなう女の子だといいのに。
「そうだ、そろそろ秋の舞台でやる演目、決めるみたいね」
 ミナちゃんの言うとおりだった。この学校は秋に旭山と劇を披露し合う。夏はその稽古をみっちり行うため、すでに話し合いが始まっていた。毎年既存の作品を基にするのがほとんどだそうだけど、過去にはオリジナル脚本で行われた、とも。
 主演はきっと部長のいのりさんになるだろう。彼女の柔らかなイメージと重なる作品はどれがいいかな。
 旭山はどんな舞台になるのかしら。もちろん、そこに小百合は絡んでこないのだが。
「花音ちゃんは好きな話とかある?」
 規則的に打ちつける雨の音、教室内の喧騒、その間を縫ってこちらへ届くミナちゃんの声。即答しそうになるのを、眼鏡を上げる動作で一呼吸置いた。二人にばれないくらいのさりげなさで深呼吸した。
「『桜の園』」

 演劇部は人数の多い部なのだが、途中加入の人やほかと掛け持ちしている人も一定数いるため、学年が上がるにつれて中心となるメンバーは限られてくる。
 今現在秋の舞台に向けて行われている話し合いに参加しているのはたったの四人。最初は部員全員であれでもないこれでないと案を出し合っていたけど、収拾がつかなくなり、こうなったら中心メンバーに決めてもらおうではないかと流れた。おかげで一年生のあたしたちも蚊帳の外に追いやられた。それでも、どの作品が選ばれるか心待ちにするのは一種の高揚感を伴う。与えられるものを待つ。
 話している四人は部長の小坂井いのりさん、それから去年二年生ながら主演を務めた青山かさねさん、そして次の部長候補と目されている二年生の堀愛さん、刈谷紅美子さん。かさねさん以外、演技から離れたところでは控えめな性格なので、もしかしたら積極的にやりたいものはないのかもしれない。ただ一人、かさねさんは違う気がする。
 かさねさんは前述のとおり、去年主演を務めた。ただ、演じられたのは谷崎潤一郎の『細雪』だったそうで、四姉妹の四人が主演という形だった。姉三人を卒業した先輩方が演じ、末妹の妙子をかさねさんが演じた。あたしはその話を聞いてすぐ、実際に見たかったと思った。恋愛事件を起こして姉たちを困らせる妙子が似合ってしまう人なのだ、彼女は。
 とはいえ、それは去年の話。今年どうなるかは読めない。
 日が暮れてきて、下校時刻が迫ってきた頃合いになって、活動場所の空き教室に先輩たちが戻ってきた。疲れを滲ませながらも、瞳に安堵の光が宿っているのが見て取れることから、どうやら答えを出してきたらしいと踏んだ。
 部員らの視線が集中する中、いのりさんが一歩前に出、いつものふんわりとした笑みを浮かべて、その答えを明かした。
「どの作品で行くかの決定権はあたしたちに委ねられたので、だいぶ好き勝手に決めさせてもらいました。あたしたちの配役まで含めて検討したので、細かい部分はこれから詰めていきますが、いずれにしても、この提案に従っていただけると幸いです」
 あたしたちの配役まで、と言った。四人にふさわしいものを模索したらしい。それでこんなに時間がかかったのか。
 いったいなんだろう、もう『細雪』はないと思うが。
「それでは、発表します」下手に間を作らなかった。続けて、「『赤毛のアン』です」と繋いだ。
 教室は相変わらずしんと静まり返っていた。誰も反応できずにいる。それはただただ驚いていたためだった。憶測の外にある作品だった。
 いのりさんはその空気感に満足したみたいに笑みを深くし、さらに付け足した。
「アン・シャーリーはあたし、だから主演ということになるわね。ダイアナ・バーリーはかさね。マリラ・クスバートは愛。ギルバート・ブライスは紅美子。そのつもりです」
 よろしくお願いします、といのりさんが軽く頭を下げた。
 そこでようやくあたりから拍手の音が鳴り響いた。驚きや戸惑いから賛意へと。
 誰よりも先に両手を打ち合わせたのは……ミナちゃんだった。

          ●

 誰もいない舞台を見上げた。耳が痛いほどの静寂、鳥の囀りだけが遠くから聞こえる。
 舞台にスポットライトは当たらない。その薄明かりの中、イメージしてみる。わたしの考えた登場人物が、葵さんやミナちゃんによって演じられ、実体の伴った存在となることを。どんな風になるのか曖昧にしか思い描けないのに、瞳を閉じると身震いした。それはきっと作者冥利に尽きる、というものだ。そうとしか言い表せない。
 後方で、講堂の重い扉が遠慮がちに開けられる気配がした。少し驚いたけれど、前方に意識を集中させている振りをした。誰だろうとかまわない。お昼休みに講堂へ来る人は稀だ。
「小百合ちゃん、こんなところにおった」
 ミナちゃんだった。なぜか、葵さんが現れるのではないかと思っていた。
「ミナちゃん……」
「舞台、広いよね」
 頷いた。端から端まであんなにある。プロンプターを忍ばせることだって可能かもしれない。
「わたしのなんかで、ほんとによかったのかな」
 結局、言われた時点でこの未来は見えたが、わたしは葵さんの申し出を受けた。わたしの作品を秋の舞台で披露する。嬉しくなくはないけど、その感情だけを抱けるほど単純ではない。
 これから決めなければならないことがたくさんあるが、すでに運命の袖はわたしの掌から離れて、勝手に転がり始めている。もう、その行く末を見守る境地だ。
「葵さんが太鼓判を押してくれたんやから、大丈夫。自信持って」
 それより、とミナちゃんは首を傾ける。「それより、もう一つのお願いはどうするん?」
 わたしはその場で頭を抱えたかった。一応、言われた瞬間に断ったつもりなのだが、葵さんは諦めてくれないかもしれない。
 わたしも舞台に立たないかと誘われた。冗談でしょう、と笑い飛ばしたかった。そんなの無茶だって。

 学校帰り、川を挟んだ反対側に、知らない女生徒二人と並んで歩く花音の姿を見つけた。二人ともかわいらしくて、ほんの少し胸が苦しくなった。羨ましい、彼女たちは花音と同じ時間を共有できているのだ。あそこで腕を取っていたのはわたしだったかもしれないのに。
 わたしが視線を注いでいると、ツインテールの女の子がわたしに気がついて、傍らの花音の肩を叩いた。それで、花音もわたしを見つけた。手を振ってくる。観念して振り返した。
「友達? 翡翠ヶ丘の生徒やん」
 隣のミナちゃんが訊いてくる。
「うん、真ん中が、中学時代の友達」
「そうなん。高校、別々になってもうたんやね」
「そうなの」
「でも、翡翠ヶ丘と旭山なら、いつでも会えるな」
 会おうと望めばいつだってわたしたちは会える。声を聞ける、触れられる。だけど、会おうとしなければならない。同じ学校なら望まなくたって自然と居合わせられるだろうに。
 もしもの話を考えすぎたってしょうがない。分かってはいても、やめられない。
 温泉街の入口まで来ると、川は途切れる。ほんとうは海まで注いでいるから続いている。どこかへ逸れていくだけだ。
「小百合。ちょっと、久しぶりだね」
 髪が短くなった花音にもすっかり見慣れた。また、伸びてきたのではないかな。
「ちょっとだけね。部活の帰り?」
「うん、演劇部の。……同じ部の同級生、塚原三七ちゃんと岡本芽瑠ちゃん」
 花音が左右の連れを紹介してくれた。さっきから好奇心ありありの目でこちらを捉えているのが、話に聞いていた塚原のミナちゃん。もう一人の、ツインテールのお人形みたいなかわいい子が、岡本芽瑠ちゃん。わたし以外みんな、演劇部なのだ。
「はじめまして。……じゃあ、やっと会わせられた」
「ということは、やっぱり」
 ささやかな秘密を持っているわたしたちは、共犯者めいた笑みを交わす。
 わたしも紹介する。
「クラスメイトの三浦七瀬、みんなからはミナちゃんって呼ばれています。彼女も演劇部です」言いながら、自分の名前を告げていなかったのに思い当たる。「で、わたしは中田小百合、花音の友達です。ちなみに、わたしは文芸部です」
 同じく名乗り忘れていた花音の、「わたしは深川花音です」という声を遮って、塚原のミナちゃんが突然三浦のミナちゃんに接近する。三浦のミナちゃんはびっくりしつつも笑顔でそれを迎え入れた。
「え、ミナちゃん? かわいいー。同じミナちゃんとは思えない、ってわたしもミナちゃんなのになに言ってんだろ。わたし、今日からミナちゃんやめるよ。ほかの呼ばれ方されたことないけど。あー、それにしてもかわいいね、ミナちゃん」
 花音から、塚原のミナちゃんはかわいい女の子に目がない、という話を耳にしていたが、それがほんとうだったことがよく分かった。それにしても、自分の思いに正直な彼女もまたかわいらしい。
 花音と目が合う。互いに言わんとするところが理解できて、くすりと笑い合った。
「ええやん、あなたもミナちゃんで。同じミナちゃんで仲よくしてください」
「関西弁……」
 塚原のミナちゃんはもうメロメロだった。
 期待以上の出会いになって心が満たされた。
「三人とも演劇部なんやね。翡翠ヶ丘さんは、今年はどの作品でいくか決まったの?」
「『赤毛のアン』です!」
 塚原のミナちゃんが片手を上げて即答する。『赤毛のアン』にかなりの思い入れがあるようだ。
 そんな彼女の様子に、花音と芽瑠ちゃんが心配そうな目を向ける。
「あれ、それってもう言っちゃっても大丈夫なの?」
「どうなんだろ。いずれ分かることだから、まあ、秘密にする必要もないのかな」
 そうか、モンゴメリの『赤毛のアン』をやるのか。児童文学作品だから意外な感はあるけれど、少女たちの物語は、女子校の演劇部が演技するのにはふさわしいかもしれない。花音はどの役で出るのだろう。
「旭山の方は? もう決まったの?」
 花音に尋ねられ、わたしは知らない振りをして三浦のミナちゃんを見やる。「うん、一応。オリジナル脚本になるみたい」
 三人はオリジナル脚本という事実にいたく驚いた。それくらい、ここ最近なかったことなのだ。
 花音は、どう感じるかしら。その脚本を書いたのはわたしだって知ったら。
 そして、もし、わたしがその舞台に立つかもしれない、と知ったら。喜ぶのかな。
 表情の変化を悟られないように、空を見上げて心を落ち着かせようと試みた。絵の具で塗りたくったみたいな、気持ちのいい青に見守られていた。

          ◯

 暑中お見舞い申し上げます。夏のこと、好きですか、嫌いですか。
 高校生活最初の一学期が瞬く間に終わり、夏休みを迎えた。それでも、演劇部の部員たちはお盆休み以外学校に通うことになる。夏休み明けすぐに秋の舞台が待っているからだ。旭山も力を入れている。こちらも下手な出来栄えで臨めない。
 とはいえ、よく言えば趣のある翡翠ヶ丘も、オブラートに包まない言い方をしてしまえば古い。休業期間中は空調を完全に止められるため、蒸し暑くて仕方なかった。脱水症状に陥らないよう、いのりさんがこまめな水分補給を呼びかけた。
 校舎から木々の隙間に見える湖は、砂漠の中のオアシスだった。見ているだけで涼しさを感じる。それに、実際に近くまで行ってみると、その周辺だけ気温がまるで違うみたいなのだ。ほんとうにそうなのか、精神的な作用が大きいのか分からないけれど。
 いのりさんから電撃発表が行われた後、それ以外の役はオーディションで決められる運びとなった。
 そもそも、『赤毛のアン』とはどのような作品なのか。作者はルーシー・モード・モンゴメリ、カナダ出身だ。一九〇八年に発表され、この作品は大きな反響を呼び、シリーズ化された。プリンス・エドワード島を舞台に、孤児院から引き取られた少女、アン・シャーリーを主人公に据え、彼女の出会いと成長を描いている。友情や青春、少女時代の刹那性が切り取られている。
 中心メンバーによってアンとダイアナ、それにマリラとギルバート・ブライスが埋まっているため、そのほかの登場人物から選ばないといけない。
 アンはさっきも言ったように物語の主人公。赤毛とそばかすがチャームポイント。孤児院から引き取られ、空想することが大好きな彼女は、仕事を任されても手に着かない。そして、口ばっかり達者。トラブルメーカーだが、次第に魅力的な女性への階段を上がっていく。演じるのは部長のいのりさん。成長した姿はいつでも物腰柔らかないのりさんと重なるけど、それまでのお転婆な様子をどう表現するのかが気になるかな。
 ダイアナはアンの親友。綺麗で利口な少女だが、アンとの出会いで彼女自身の世界も広がっていく。演じるのは青山かさねさん。いのりさんとともに演劇部に三年間在籍し、支えてきた存在だ。容姿が優れているのは誰もが認めるところだが、ダイアナと比べてあざといというか、純粋さが足りないかもしれない……なんて、大きな声では言えない。
 マリラはアンを引き取り、育てた女性。子どもを育てた経験がなかったために当初はアンとの接し方に苦悩するけれど、アンに大切なことを諭していく。演じるのは堀愛さん。二年生。容姿も性格も大人びていて、マリラ役は適役と思える。仮衣装で割烹着を身に着けているのだが、それがあまりにも似合っていて、本番もそれでいこうかという話になっている。
 ギルバート・ブライスはアンたちの学校の男の子。ハンサムで学校の人気者だが、赤毛のアンに対して「にんじん」とからかってしまったがために、彼女とは長らく上手くいかない。だが、成績優秀な二人は常に意識し合い、やがては深く結ばれる。演じるのは愛さんと同じく二年生の刈谷紅美子さん。雑務を率先して行い、演劇の裏方事情に精通している。そのイメージが強かったから、ハンサムな男の子の役というのは意外だった。なんでも、いのりさんが提案したらしい。
 これだけ楽しみな要素が初めからできあがっていた。それ以外の役を誰がどう埋めていくのか、次の焦点はそこに移った。
 残りの役は立候補制で、候補者の中からオーディションを経て選ばれた。審査をするのはすでに役の決まっていた四人。顧問の相川先生は関わらなかった。というより、もともと相川先生は普段の活動にもたまにしか顔を出さないし、ほとんどお飾りなのだ。
 相川先生は若い男の先生で、数学科を担当している。見た目は地味だし、おもしろい話をしてくれるわけではないが、授業は比較的分かりやすく、生徒の評価もまあまあ高い。どうして演劇部の顧問を引き受けているのかはよく知らない。
 自主性を重んじている、と言えば聞こえがいいかもしれない。なんにせよ、翡翠ヶ丘の演劇部員は放っておかれてもまじめに活動するのだ。
 そんな先生はとりあえずさておき、熾烈なオーディションが行われ、あたしたちも傍観者を気取ってはいられなかった。
 結果、あたし、ミナちゃん、芽瑠は三人とも第一希望の役を掴み取り、秋の舞台にいきなり上がれることとなった。その喜びといったら、どんな言葉でも言い表せないだろう。憧れていた演劇部に入り、その晴れの舞台に立てるのだから。
 あたしはルビー・ギリス、ミナちゃんはエム・ホワイト、芽瑠はジョシー・パイ役を射止めた。ただ、実はあたしとミナちゃんはほかに立候補者がいなかったため、運がよかったとも言える。三人ともアンのクラスメイトで、特にジョシー・パイはギルバート・ブライスにひとかたならぬ想いを寄せていて、そのためにアンに対してやきもちを焼く、というおいしい役なのだ。……あたしもジョシー・パイをやりたかった気持ちはあったけれど、自信がなかった。掴み取った芽瑠は、やっぱり思っている以上に潜在的な実力があるのでは、と考えを改めた。

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