映画『長いお別れ』

2019年製作/127分
監督:中野量太/出演:蒼井優・竹内結子・松原智恵子・山崎努

やさしい気持ちをくれた作品。

「見たいな」と気にかけていたのだけど、日々の仕事にごく近い作品なので、日常に追われている中では、鑑賞することをなんとなく避けていた。冬休みに入って、気持ちにゆとりができて鑑賞。

アルツハイマー型認知症の家族を看る10年の家族の時間を描く作品。
原作者 中島京子さんが、父親を介護した経験を元にした小説が原作。

アルツハイマー型認知症は、闘病期間が長い。
この作品では、10年。
その時間の流れと本人の変化を、文庫本の扱い方に物語らせている。
普通に読んでいた本が、時間の経過と共に、上下逆さまで手に持つようになり、さらには、ページを破って口に入れてしまうようになる。

家族である2人の娘さんたちやお孫さんにも、変化があり、10年という長さを感じる。

描かれている出来事は、決して穏やかなものばかりではない。
帰宅願望、世間の偏見、主介護者である妻の病気、骨折、呼吸器の選択…
介護の現実をリアルに描く。

とはいえ、最終的に穏やかな空気が流れるのは、起こる出来事の受取り方、その出来事を分かち合う家族の存在、家族が本人を含め互いを尊重し合える関係性...があるからなのかな。

孫のたかしくんが、ガールフレンドにあてたメールが好き。
「おじいちゃんは、たくさんのことを忘れちゃったけど、本人は、そんなに悲しんでいないのかもしれません。ぼくは、今のおじいちゃんが嫌いじゃないです。」

子どものコトバは、時に残酷さを伴うけど、素直で本質をついている。

忘れていくのだけど、その人にとって大事な思いは最後まで残り続ける。
プロポーズやメリーゴーランドのエピソードがそれをやさしく物語る。

長い時間をかけて育まれた家族の関係性や、その人の人間性が現れる。
本人を尊重して対応する家族がいるからこそ、
こんなやさしい時間が生まれるのだと思う。

ただ、現在、介護に追われている方には、日々が大変でこんな気持ちにはなれないという感情が生まれるかもしれない。
それも、現実だと思う。

そんな感情も大切にしたい。


最後に、竹内結子さんのご冥福をお祈りいたします。
もう、新しい作品ではお会いできないけど、こうやって、作品の中でまたお会いできるって素敵なことだな。

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