4,312km先で生きる。日本からタイへ正規留学した話 - その1 -
拭っても拭っても、額から汗が噴き出す。
耳慣れない言葉、耳慣れない音。
見たことのない人たち、見たことのない食べ物。
2022年8月上旬、私はひとり、タイにやってきた。
一つまみのカオスを人生に
タイの大学院で「ジェンダーと開発」という専攻を勉強するために、私はタイにやってきました。なぜタイなのか。きっと多くの方がまずは疑問に思うのではないでしょうか。
結論から言ってしまえば、直感に従ったから、ということになるでしょう。
イギリスとタイの大学院で悩んでいましたが、決めきれず。
もう少し納得のいきそうな理由を言うならば、私の関心がアジア圏のジェンダー問題だったから、わざわざヨーロッパの大学院に行かなくてもいいかなと思いました。(+生活費、学費ともにタイは良心的というのも大きい)
日本から欧米諸国に留学する人は多いけれど、アジア圏に留まる人ってなかなかいないですよね。またそこもいいなぁと、当方性格がひねくれておりますので、そうも思いました。
実際来てからは、ドラマの連続となる日々となりました。
大学院到着初日から寮希望の名簿リストに名前がなく家無し子になったり…
中間試験2日前に毛虫に刺され全身の痒みで一睡もできなかったり…
キッチンに鳥が巣を作り、雀がその巣を略奪しに来たので戦って防いだり…(ご想像の通り、自然がかなり豊かなキャンパスです)
一つまみ、どころではないカオスが私の日常を大きく変えていきました。
待ち受ける、完全なるアウェー
ドラマの連続で英語へのコンプレックスやホームシックなどに陥る時間もなかったのですが。少し慣れてきたころ、それはズーンと突然姿を現したのでした。
一応、このキャンパスの公用語は英語になっています。けれど、ネパール語、ミャンマー語のほうが多く聞こえてきます。それは、学生の多くがこの二か国から来ているためで、案外タイ人は少なめです。ちなみに日本人学生は現在6人います。
どこでも同じだなあと思うのは、来たばかりの互いに知らない人同士の時って、似た属性(ここでいうなら同じ国)の人と仲間になるというところです。そうやって社会的な繋がりを育み、少しずつ異なる他者と関わっていく。
ただ私の場合、2022年8月入学「唯一の日本人」という超レアキャラ属性を引き当ててしまったがために、初めて完全なるアウェーを経験しました。
高校、大学とほぼ一貫校のようなところにいたので、周りに友達がいるのが当たり前だった私。初めての独り。
何かにせっかく誘ってもらっても、その場にいる私以外全員がミャンマー人だったりして、全く会話についていけなかったり。
私に話す時だけ英語を使ってくることに感謝しつつも、申し訳なさやイラつきさえ感じることも(汗)
私も皆みたいに自分の母国語で話したいけれど、私だけは英語で話さなければならない環境に孤独と寂しさを感じました。
今考えると精神的に少し疲れてしまっていたのかも。
「日本に帰りたい」
次第にその気持ちは強くなっていきました。
ただ、あの時諦めたりしなくて本当に良かったです。正しい時に正しい人に出会えるタイミングがやっぱりあるからです。
どんよりムードで毎日登校していた私に、ある時一人の優しいクラスメイトが声をかけてくれました。
ミャンマー出身の彼女。
相手の立場に立って物事を考える人でした。仮に私以外が全員ミャンマー人でもその子だけは最初から英語で全員に話すような人で、そういった小さな気遣いがどれだけ当時の私を救ってくれたか計り知れません。
彼女のおかげで私はタイでの大学院生活を軌道に乗せることができ、「国」ではなく「個」を見ることの大切さを学んだのでした。
…その2に続く
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