たった一言で救われる
『よく、頑張りましたね。』
以前働いていた職場の保健師さんから言われた一言だ。
それは不意打ちに言われ、涙が出そうになった。
今でもその言葉を思い出すと、涙目になる。
私は4年前の37才の時に、子宮頚線癌になった。
子宮頚癌の中でも、2割程度で予後の良くないと言われる、要はリンパ系の癌だ。
初期だったが、通常の頚癌と違って頚線癌は、うむなく子宮、卵巣、リンパ、全て全摘だった。
癌の怖さを初めてしり、絶望に陥った。
初期な分、自覚症状もほぼ無かった。
癌が確定してから入院手術までは、本当に早かった。3週間位だった。
若い分進行が早く、リンパに流れて他の臓器に転移しない為にも早い治療が必要だった。
仕事をしながら、休みは検査通院の日々。不安と絶望と、でも立ち止まる訳にはいかないと、自分を奮い立たせながら、職場では笑顔で接客する。
地獄みたいな日が続いた。
でも、誰にも会っても泣かなかった。
職場の人に報告した時も、親友に伝えた時も
彼に話した時も、家族に伝えた時も、私は一度も人前で泣かなかった。
と言うか、泣けなかったのだ。
小さい時から、厳しく育てられたお陰で弱音を吐けず泣けなくなってしまった。
人前では…。
家族は私が泣いた姿をほぼ見たことないと思う。
そんな性格なだけに、無意識にずっと
検査通院→入院→手術→ICU→リハビリ→退院と気を張って頑張って来たんだと思う。
もう1人で頑張る事が当たり前になっていた。
思う事は色々あったけど、心に秘めて、私は大丈夫だと言い聞かせて、周りもその姿に安心していた。
1ヶ月後、職場復帰したが、ある日体調が悪くなり初めて保健室に行った。
保健師さんは6、70代のベテランの方がひとり。
問診する際に、私の病状の経緯を話すと少し驚いた様子だったが、見守る様なとても優しい瞳で
『よく、頑張りましたね。』
と言ってくれた。
なんだろうか、きっと入院中も看護師さんや先生からも言われてたとは思うが、全く記憶になく、
ハッと、初めて言われた気がした。初めてお会いした保健師さんなのに、その一言で心がホロっと崩れたのだ。
分かってくれる人がいる。
あ…。私頑張ったんだな…。
何だか凄く救われた気がした。
『大変だったね。』よりも、
『よく、頑張りましたね。』の方が遥かにグッと来るものがあった。
身近に居なくなても、深い関わりがなくても、分かってくれる人はいる。
まるで母が娘に言うような、優しい瞳で言ってくれたあの言葉は4年経った今でも、肩の力が抜ける、
私にとって救われる様な一言になりました。
保健師さんとの出会いに感謝します。