花組『アルカンシェル』の感想2

 『アルカンシェル』を見てきました。二回目の観劇です。初めて見たとき以上にすごく面白かったです。

 まず、ラテンのシーンが熱かったです。最初に見た時は、厳しい取り調べのせいで、マルセルが足を痛めたところに気づけなかったんですが、痛みを堪えて踊るマルセルの迫力がすごくて、思わず演技なのを忘れてしまうほどでした。
 マルセルを支えようと盛り上げる仲間たちの熱気もすごかったです。現実でもこうやって支え合ってきたんだ、というのがすごく伝わってきて、二幕が始まったばかりなのに、もう泣きそうでした。

 『アルカンシェル』は、なかなか解決できない困難に辛抱強く耐える話で、話の中間部分は、悪くすると同じところをぐるぐる回っているように感じられる面があったけれど、このシーンは、すごくいいアクセントになったし、アルカンシェルと花組を重ねやすくもしてくれたと感じました。

 歌もすごくよかったです。特に『たゆたえども沈まず』。柚香さんの、役ごとにちょっとずつ声が違ってしまうくらい役に入り込んで、その人の心境を繊細に表現する演技最優先の歌い方はそのままに、声が朗々と響いて、聞いていてすごく歌詞が胸に迫ってきました。すごく気持ちよさそうに歌ってる感じで、見ているこっちも嬉しくなります。
 最初の方のジャズの歌も好きです。歌もダンスも最高にハマっている柚香さんが、音楽そのものって感じがします。

 あとマルセルの性格。前回見たときのマルセルには、ジミー・ウィンターっぽい一面や、クロノスケっぽい一面があったけれど、今日はそこに、マルセル独特の意志の強さや才気走った雰囲気が一貫して加わっていて、マルセルという人の輪郭が感じられました。
 こうやって、多面的で奥行きがあるけれど、はっきりとした個性のある人物像ができあがっていくんだな、と思いました。柚香さんが役に血肉を与える過程が見れた気がしました。

 前回一番好きと感じたダンスの振りは、赤いカーテンが後ろにあるときの、振り向くところでした。やっぱり大好きです。でも、最初のジャズのシーンの、ナイスワークでやってたやつ!ってなるところも好きだし、次のジャズバージョンお披露目もものすごく好きです。まどかちゃんと踊っているときの表情が一番好きだな、と思える幸せ。あと、ピエロもやっぱりすごく好きです。

 ぺぺと小さいイヴのやりとりも好きだし、いきなりキレるジョルジュがかなり可哀想可愛いので、戻ってこれて本当によかった。  
 皆、台詞がないときでも、すごくそれぞれに自然なお芝居をしていて、もっとしっかり見たいんだけど、一瞬たりとも柚香さんから目を離したくない気持ちも強く、大変悩ましいです。レジスタンスが最初に登場したときのダンスも、ひらんひらんって影から影に渡っている感じが好きです。

 マルセルがカトリーヌの伴奏をするとき、すごくカトリーヌを見るの、伴奏者としては当たり前なのかもしれないけれど、やっぱりすごく好きです。カトリーヌのアリア、独特の可愛らしさと不思議な明るさがあって、コンラートがカトリーヌの声で聞きたいんだ、というのだいぶ共感します。あと、マルセルがいつのまにかフリッツって呼んでるの、アネットが「フリッツがね」「フリッツがね」と何度も話をして、皆に浸透させたのでしょうか。可愛いです。

 最後のデュエットダンス、光沢のある青い衣装がすごく綺麗で、二人が水の流れみたいに見えて、なんとなく「われても末に逢わんとぞ思う」と百人一首を思い出してしまいました。最後の柚香さんのダンス、純粋な喜びや愛情や幸せだけでできてるみたいで、すごく綺麗でした。

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