花組『アルカンシェル』の感想5

 『アルカンシェル』を見てきました。

 いまだ災難が終わっていないことを実感したせいか、それまでの生活が壊されてしまう悲しみや、長い辛苦からの解放(現実にはまだ来ていない)が今まで以上に現実味を帯びて胸に迫ってきて、現在進行形の事件を敢えてフィクションに置き換えて見せられているような、不思議な感覚になりました。

 日常をあっけなく壊す戦争や災害は、現代でもたくさん起こっていて、とても普遍的な問題だと思います。

 そんななか、なんとか希望を見出だそうとするマルセルの眼差しの集中力がすごくて、見ていて、じわじわと胸が熱くなってきました。深い闇の中のほんの一筋の光を探そうとしているように見えたし、消えそうだけど、絶対消えない熾火のようだとも感じました。

 マルセルは強い人というわけではなく、どちらかというと人一倍傷つきやすい、繊細で豊かな感受性の持ち主だと思うんです。でも、その感受性ゆえに皆で生き残りたいという思いも強く、そのため頑張り続けているように見えました。
 私には柚香さんもそういう人に見えるので、もう、なおさら好きです。かっこいいです。

 最後の解放されたパリの人たちの合唱も力強くて、まるで現実もこうなりますように、という祈りのように聞こえました。

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