花組『アルカンシェル』東京公演前楽ライブビューイングの感想

 ライグビューイングに行ってきました。やっぱり涙が止まらなかったけれど、サヨナラショーの最後、あっち行ったりこっち行ったりして、ふざけたりリズムに乗ったりしてる柚香さんが、すごく軽やかで粋でかっこよくて、見ていて清々しい気持ちになりました。

 以下、印象に残った場面です。いつも最後まで書ききれないので、順不同で。

 黒燕尾。黒燕尾って、もっと濃厚にかっこつけるイメージだったけれど、今日の柚香さんの動きはさらっとした水みたいな無駄のなさで、指先の軌跡が一つの面を形成してるみたいな鋭いぶれのなさが感じられて、人の動きって、ここまで余計なものを除去できるものなのかと思いました。
 ずっと見ていたかった。いえ、ずっとだと柚香さんが大変なので無理ですが、でもいくら見ていてもずっと飽きないで見惚れ続けると思います。
 
 そのあとの「Fshionale Moment」の粋な軽やかさにも感じたけれど、黒燕尾を完璧に着こなしているというか、着こなそうとする必要がないくらい自然な感じがすごくかっこよかったです。
 
 アルカンシェルのフィナーレ。ラビアンローズ。ジュテームのあとのウィンクが……! 
 お花のふんわりした美しさと絶対王者感が両立してるのがすごく不思議な感じで、「愛の讃歌」でお化粧変えた?って思うくらい違って見えるのが本当にすごいです。

 まどかちゃんとのデュエットダンス。最初の頃はひたすら綺麗だなと思って見ていたけれど、二人の歩みを表していると聞いてからは、一つ一つの振りがすごく刺さってきます。出会ったばかりのころの柚香さんのリードの包み込むような優しさ。銀橋でくるっと回るときの二人のそろい具合。舞台に戻ってから対等に並んで踊る二人のかっこよさは、本当に堂々たるフィナーレっていう感じで、オーケストラの荘厳な響きがすごく似合います。そして、柚香さんの広げた腕の中で自由に踊るまどかちゃん、満を持してのリフトのまえの「はい」の優しさ。
 
 そして、柚香さん一人になって、改めて、柚香さんの動きを追うように流れる衣装の裾が綺麗だな、と感じました。短い曲のなかに、舞台や客席への思いや、柚香さんが舞台で表現するかっこよさや優雅さがぎゅっとつまっているようで、息を殺して見入ってしまいました。
  
 あと『アルカンシェル』のお芝居。マルセルがさらに意志の強い、まっすぐ前を見据えて進もうとする人になっていて、かっこよかったです。
 ドイツ軍が視察に来たときや、フリッツが息抜きの話をはじめたときの察しの早さとか、「SWING」を弾いているときの、活路を見出そうとする強い眼差しもすごく好きです。
 カトリーヌが「それを言うなら私よ。演出なんてとんでもない」と嘆くのを聞いて驚くところ、自分と同じ大変さのなかにいたのか、と思ってる感じで、それまで好きにならないように意図的にカトリーヌに対してだけ鈍感でいたのかな、と想像してしまいました。
 
 あと「ヌーヴェル・アルカンシェル」のときの説明する手ぶり、前からすごくかっこよかったけど、今日はとくに「太陽が顔を出し」のときが最高でした。

 慰問のときに、カトリーヌに一緒に行かないと言われたときの辛さ、自らの意志で残ったけれど寂しくて一瞬折れそうになって、でもがんばりつづけるカトリーヌの歌。帰ってきたときの「お帰り」の優しさ。後半はあまり一緒にいられない二人だけれど、物語の端々からお互いへの思いが溢れてくるようなところがすごく好きです。
 
 そういえば今まで、パリが解放されたあと、功労者であるはずのマルセルが去ってしまうのが寂しいな、と思っていたのですが、今日、喜びの表情を浮かべたとたん帰路につくマルセルを見て、ああ真っ先にカトリーヌに会いに行くんだな、と感じて嬉しくなりました。
 
 そのあとマルセルとカトリーヌがまた二人で歩いてくるところ。以前は楽しそうに談笑しながら出て来ていたけれど、最近は妙に黙り込んだまま歩いていて、ジェラールに「いつアメリカに来るんだ」と言われたマルセルが、今その話題は、って動揺してる感じなところが好きです。マルセルのなかでは、たぶんだいぶ前からカトリーヌは必要不可欠の人になっていただろうなと思うのですが、アメリカに行く夢を棚上げしていたため、そこらへんがはっきりしていなくて、カトリーヌに伝えられないままずるずる来てしまい、どう話しだそうかな、と思案しているうちに、カトリーヌのほうから、そこらへんどうするの?という無言の圧が来ていたのかな、などと想像力をたくましくしてしまいました。でも無言というか、カトリーヌは口に出してずっと気にしていましたよね。可愛いです。
 
 最後、銀橋で何度も手をつなぎなおす二人。柚香さんの手をつないだり、手を取ったりする仕草が素晴らしく好きなので、本当に嬉しいです。
 
 ところでこの話、マルセルとコンラートがすごく対象的で面白いと思います。マルセルは鋭い感受性で世界をまっすぐに見て、次々と新しい発見をして、変わっていく人。コンラートは自分の理想にどっぷりつかって、そのフィルター越しにしか世界を見れない人。
 
 とりあえず、今日はここまでです。

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