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引っ越さないで、だいすきなひと

引っ越します、明日。恋人が、

引っ越しちゃうみたいです。ちょっと遠くに、

とは言っても私の家から一時間くらい。え、一時間もかかるの?一時間しかかからないの?どっちの言葉もあるのかな、

多分今、「髪を切った!」ってLINEで報告してきた恋人は、切ったばかりの髪型をぐしゃぐしゃにしながら引っ越し準備に追われるんでしょう。


引っ越します、明日。恋人が、

わたしの最寄駅から、30分くらい。わたしのよく使う繁華街駅から二駅、よく考えたらすごい近いところに住んでました。学生の一人暮らしのくせして築浅の1K、駅から遠いのが難点だけど、独立洗面台と二口コンロ。部屋の壁は真っ白でした。まだ実家を出てない私には羨ましい限りの一人暮らし。

恋人と一緒に、たくさんのことをしました。一緒におうちに帰るときはいつも、駅前のスーパーで「なに食べよっか」って話しながら買い物したり、ちょっと長いなと思う帰り道も、しりとりとか、韻を踏むゲームとか、国名何個言えるかな、とか。ちょっと変わったゲームをするのがすきでした。


もうバイトの終わりに待ち合わせして一緒におうち帰ったら出来ないのかな、

春から社会人になる君はどんどん先に行っちゃう気がして、引っ越しもそのための準備で、先に行かないでよって、置いてかないでって、


追いつくためにいっぱい頑張ってるのに、いつまでも差は縮まらなくて、



引っ越します、明日。恋人が、


わたしの機嫌が悪くなると必ず目の前のコンビニで甘いもの買ってくれたりとか、休日の午後にお日様いっぱい浴びてお布団干したこととか、休日に家から一歩も出ずにぐだぐだお昼寝して何日も過ぎてたこととか、ぜんぶ、きみの家と一緒に覚えてるよ。

もうきみの家に帰る帰り道は歩けない?


結構好きだったんだけどなぁ  



「内見してきた!」って嬉しそうに写真送ってきた恋人に対して「いいと思うよ」とか、「会社の近くに引っ越しなさいね」なんて言ったけど、今までの思い出が無くなっちゃう気がして、やっぱり苦手です。

引っ越しの準備も手伝いに行けない、わるいやつです。でもね、やっぱり行かないでほしい。




引っ越します、明日。恋人が、