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呂布の武器は方天戟?

歴史上の人物にはそれぞれ様々なエピソードがある。
武将であればその人物の武功であったり、文官であれば優れた法など様々だ。
近年、過去の偉人達を自身の物語に登場させる話を数多く見かける。
それはその人物たちが活躍する当時の話もあれば、自身の作り上げた世界に人物だけが登場する話もある。
そういった話を読み進めるのは私自身大好きで、過去の偉人であればこうするんだろうか?この武将の過去の戦績から見たらこう動くのだろうか?など完全オリジナルなキャラクターと違い、想像しながら読める分楽しさが倍以上に膨らむ。

しかし読み進めるにつれて腑に落ちない点も数多くある。
もちろんそもそも性別が違うとか容姿がハッキリ残ってるのに髪色すら違うとかそういったハッキリ違いが分かるものもあれば、これこうだっけ?となるような違いもあり、純粋にお話だけを楽しむことが難しくなる場合もある。
というかわりとしょっちゅうある。

今回はその中でも2世紀~3世紀にかけた中国の動乱『三国志』にて猛勇を振るった呂布に焦点を当ててみようと思う。


三国志最強の武将

三国志最強の武将と言えば?と問われたら、三国志好きな人であればおそらく張遼や関羽などを挙げる方も多いのではないかと思う。
日本人は三国志好きな方が本国よりも多いという話を聞いたことがある。
*アンケート取ったわけではないので伝聞で申し訳ない。
仮に日本人に「三国志最強の武将は?」と聞けば多くの方がこう答えるだろう「呂布」と。

呂布は貧しい生まれであったが武勇に優れたため、やがて刺史の丁原に仕えた。
*刺史は地方の長官。日本で言えば市長くらいの偉さ。

丁原のもとで会計係(!)に就任し非常に可愛がられた。
その後、董卓が丁原の元に攻め込む際に武力の高い呂布を囲い込み裏切らせ自身の元に招いた。
董卓は呂布を非常に重用し、自身のボディガードとして傍らに置いた。

その後、暴虐を振るう董卓を追い落とそうと唆され董卓を暗殺。
大陸中部を彷徨い各勢力を頼り、時には力を振るい、勢力を増すが最後は曹操・劉備の後の2大勢力に討たれ命を落とした。

かわいらしい呂布のイラスト

最強なのは物語だけ?

三国志演義では身長3mで赤兎馬にまたがり方天画戟を振るい戦場を疾駆する勇猛な戦士。

反董卓連合を組まれた際は、呂布一人で数万の兵士を相手取りちぎっては投げの大活躍で敵を退散させたり、孫堅の一騎打ちでは余裕の勝利、続いての劉備関羽張飛の三兄弟を相手取り一人で引き分けに持ち込むなど、その武勇においては三国志演義の前半部分に置いて圧倒的武力を持つ最強の武将と言えるだろう。

しかし演義はあくまでも盛り上げるための『物語』であり、実際はわりとそうでもない。
もちろん武勇に優れた勇士であったことは間違いないが、反董卓連合では友軍に嫌いな武将がいたからと味方の足を引っ張り戦に負けさせたり。
*しかもその際、演義とは違い孫堅相手に敗走した説も。

戦でも強者相手では負けが目立ち、無双するのは戦下手な相手のときだけという印象。
結果としてだけ見れば裏切りを重ね、部下には厳しく、自分には甘い、初心者狩り最強のちょい強武将という印象を拭えない。

呂布の武器は?

ここからが本題。
三国志演義や呂布をモチーフにした作品では必ず出てくる『方天画戟』
方天画戟は戟(というか実質槍)に月牙と呼ばれる三日月状の刃を左右に付けた万能武器で「援」「胡」「内」「搪」と言われる4種の使い方が出来る。
それぞれ「援」は払うや薙ぐという槍の同様の使い方、「胡」は側面で叩く斧のような用法、「内」は引っ掛けることやねじ込むような回転を加え方、「搪」は貫く・突上げるなどの押し込むことを表す。

まさに戦場に置いてなんでもできる武器であり、戦場を駆け抜ける飛将と呼ばれた呂布にぴったりの武器である。

が大きな問題がある。
この方天戟、あるいは方天画戟という武器は10世紀~13世紀の宋の時代に作られた武器であるということ。
つまり『三国志演義』では三国志があった2世紀の動乱をもとにしたが、『三国志演義』が書かれた時代の武器を登場させてしまったのだ。
そら1000年も先の武器を使ってたらめっちゃ強いわ、という気がしないでもないが・・・。
残念ながら呂布は方天画戟を使っていない、なんせその時代に存在しないからだ。

弓術に優れた話は多く残っていたのでメインウエポンは弓で、他だと馬術にも優れたいたので恐らく普通の槍を使っていたのではないかと思われる。

物語と史実

史実の話を基にしたキャラクターが登場するのは良い。クロスオーバーや歴史の「もし~なら」を描くifものも楽しい。
しかしそれであればあくまでも史実のキャラクターには史実に厳密に従うべきだと私は考える。
あくまでもモチーフとした『完全な別物』として割り切れるほど突き抜けるものであれば構わないとは思うが、さも史実の人物のように描くのに使用武器は方天画戟ですじゃあ締まらない。

例1:諸葛亮がビームを撃つので完全な別物
例2:伊達政宗がハーレーの騎馬軍団を率いてるので別物 など

歴史上の人物を登場させることで、キャラ付けの容易さがあるのは理解できる。
しかし『歴史』は人々が事実を失うことを恐れ、後の世代に決死で繋いできた事実の積み重ねによるものであり、先人たちに敬意を持ってその事実を我々も繋いでいくことが義務である考える。
本当にあったことかどうかわからない『神話』とは違う、ということを考えて欲しいと思う。

あとがき

なんや偉そうなこと言いましたが、それはそれとしてクロスオーバーものは面白い。
呂布と宮本武蔵が戦うのとか、ハンニバルと織田信長が戦うとかワクワクしちゃう。

あと呂布のこと悪く書きすぎたかも、呂布ファンいたら申し訳ない。あくまでもこれは『史実の呂布』の話であることを大目に見て欲しいです。
史実でも100m先の槍の穂先を弓で射貫くとかやってたり、演義であれば要所要所で活躍してますし。

演義での活躍があるから好きな武将は?と聞かれたら私は迷わずこう答える『馬岱』と。

\ここにいるぞ!/

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