建築と農業がつながった|旅する大学4@小豆島
9/13-14で旅する大学第4回@小豆島 に参加してきた。人類学者の松嶋健さん、歴史学者の藤原辰史さん、建築家の家成俊勝さんと共に小豆島を巡る学びの旅。第3回の出雲に続いて2回目の参加だった。
岡崎造船
小豆島はかつて海の交通の要所で、造船業が盛んだったそう。島に唯一残る造船所でヨット製造の様子を見学。
船を作るところなんて初めて見たけれど、型にFRP(繊維強化プラスチック)を貼ったり、船内の構造をつくるのに木材を加工したり、全部手作業なのがびっくりだった。
Umaki camp
瀬戸内国際芸術祭2013の作品として、家成先生が代表を務める建築事務所ドットアーキテクツが設計・施工。家成先生のレクチャーを聞きつつ見学した。
建築とかそんなに興味なかったのだけど、家成先生のお話を聞いて、ぐっと引き込まれた。というのも、建築におけるものの見方や考え方は、農業のそれと重なる部分が結構あるかもと思ったから。
つい最近読んだ藤原先生の『ナチスのキッチン』でも、特にナチ時代のドイツについて、台所という空間がどんなふうに設計されて使われてきたのかが書かれていたけれど、ここでも建築と農業の関わりを感じていた。
家成先生は阪神淡路大震災でお家が全壊したこと、家がなくても助け合って生きていけたことなどから、家が一生の買い物になることに疑問を持ったそう。車くらいの値段で作ることができれば、たとえ壊れてもローン返済のために働き続けなくちゃいけないなんてこともない。
そんな思いから出発して、Umaki campは300万円程度で建てたそう。しかも誰でも使える道具や技術のみを使って。現場もオープンだったから、つくる段階から地域の人が関われる余白があった。
建てた後も、箱物にならないように、ここでヤギを飼ったり、映画を撮ったり、ラジオをやったりいろんな仕掛けをつくった。その結果、地元の方や観光客などが集う場になった。
めちゃくちゃすてきやなぁと思ってわくわくした。
私の働く雨風太陽の代表高橋博之さんもよく言ってるけれど、食や農業、政治など、もともと自分たちでやってきたのに、誰かに委ね続けた結果、専門化・高度化して分断されてしまった。それをつないで自分たちの手元に戻していこうよ、というのが都市と地方をかきまぜる雨風太陽の取り組み。
建築も同じかぁ思った。
玉野井芳郎先生は、今の社会(狭義の経済)の価値原理を「金」とするならば、これから目指すべき生命系の経済(広義の経済)の価値原理は「一体化」「アイデンティフィケーション」と言っていた。
この意味がだんだんわかってきた気がする。近代化の中であらゆるものが分業・分断されてしまったので、それをつないでいくこと、つなぎめがないほど交わること、それになることなのかなと。
松嶋先生のレクチャーのキーワード「内在的なまなざし(↔︎超越的なまなざし)」も近い気がする。
ヤマロク醤油
木桶で作られる醤油は醤油全体の1%ほどしかなく、その4分の1が小豆島。ヤマロクさんでは醤油だけでなく、木桶まで作ってる。
2009年、木桶を作る会社は全国でたったの1軒で、そこに発注した際に言われたのが、醤油の新桶の発注は戦後初とのこと。桶は一度作ったら100〜150年使えることもあってなかなか注文がない。高齢化もあっていつまで続けるかわからないと言われたそう。
子どもや孫の代には、和食の基礎調味料の「ホンモノ」がなくなってしまう。そう思って、大阪の会社に桶づくりを教えてもらって木桶作りの事業をスタート。判断軸は「おもろいか、おもろくないか」。めちゃくちゃすてきだなと思った。
こうやって気づかないうちになくなりかけてる技術や文化ってたくさんあるのだろうなと思った。木桶醤油を買って、残していきたいなと思った。
千振島(ちぶりじま)
大阪城の城壁にも使われたという小豆島の石。石切場の千振島に案内してもらった。
無人島でほとんど人が入ってないこともあって、不思議な雰囲気だった。一体どんなふうに運んだのだろうと思うような大きな石が海にもゴロゴロ転がってた。礒には貝やカニやカメノテなどがあって、時間が無限に過ぎていきそうだった。笑
今回も、先生たちはもちろん、参加者も好奇心旺盛なおもしろい人たちばかりで、いい出会いがたくさんあった。ほんとにすてきな時間だった。
旅に出ると、重石がなくなって、解放されて、自分がぐわっと広がるのを感じる。帰ってきて、これだけ表現したくなるくらいには、自分の内側からいろんなものが湧き出てきてるのがすごく嬉しい。
人生にこういう瞬間を増やしたいな、と思った。
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