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天使の囀り【読書感想文】

Kindle Unlimitedの対象になっていたので読んでみました。
ホラー映画はよく見るのですが、ホラー小説はあまり手を出したことがなかったので新鮮な気持ちです。
読後の感想と、物語を通じて考えたことをまとめてみました。

~あらすじ~
北島早苗は、終末期医療に携わる精神科医。
恋人の高梨は、病的な死恐怖症(タナトフォビア)だったが、新聞社主催のアマゾン調査隊に参加してからは、人格が異様な変容を見せ、あれほど怖れていた『死』に魅せられたように自殺してしまう。
さらに、調査隊の他のメンバーも、次々と異常な方法で自殺を遂げていることがわかる。アマゾンでいったい何が起きたのか? 高梨が死の直前に残した「天使の囀りが聞こえる」という言葉は、何を意味するのか? 
前人未踏の恐怖が、あなたを襲う。

感想


ぞわぞわと薄ら寒い恐怖を感じる物語でした。
描写が細かく読むだけで現場の情景がありありと浮かぶので、グロいものが苦手な方は注意が必要かもしれません。
私は虫が苦手なので、きついものがありました。。。

私が一番怖かった場面は、不可解な自殺が連続して起こる場面です。
この自殺は線虫のせいではないのかと早苗が気づき始めます。
高梨の死と似た状況で人が死んでいく。
しかし、アマゾンで感染したとは考えられない。
感染の原因が分からず、早苗や周囲の人たちも感染してしまうのではないかという迫りくる恐怖を感じました。
それと同時に早苗の焦りも感じ、読書中私自身もドキドキしっぱなしでした。

幸か不幸か早苗は感染しませんでしたが、
大切な人を失ってしまう場面はやりきれないものがありました。
描写として、悲しい、苦しいという直接的な表現はされていませんが、
早苗の行動を通じて彼女のやりきれない思いや悔しさ、葛藤などの感情がまるで自分の体験のように伝わりました。
一気に読んでしまう作品だと思うので、ぜひ読んでみて下さい。

考察
~早苗が康之に対して、ブラジル脳線虫を使用したことについて~


早苗が患者康之に対して、
ブラジル脳線虫を使用したことについて考えてみようと思います。

私は安楽死も賛成派なので、結果的には良かったと思っています。
康之を死に対する恐怖と、症状のつらさから救ってあげることになったので。
恐怖から救われ安らかな気持ちで生を終えられたことは良かったのではないかと思います。

ただ、早苗が一生抱える重荷を背負ってしまった点が気にかかっています。
まだ若い康之には難しいと判断したのかもしれないですが、康之本人の意見も聞いてから実行することはできなかったのかなと。
病気で苦しい中でも気丈にふるまう精神力があるなら、
康之自身が判断することもできたのではないでしょうか。

康之の判断も込みで使用したなら、
早苗もこの決断は正しかったのだろうかという気持ちを抱え続けることなく、信念をもってやったことだと思うことが出来たのではないでしょうか。
早苗は康之に判断させるというのも苦しみにつながると考えたのでしょうか。そう考えるととても難しい判断だったと思います。

さて、自分が康之の立場だったらどうでしょうか。
私だったら使用してほしくないですね。
私はいくら苦しくても、自分の思考が捻じ曲げられるのは嫌です。
それであれば自分のまま死にたいと思います。
あくまで今の考えなので、将来どうなるかはわかりませんが、、

前提ケースバイケースなので一概には語れないですが、重要なのは本人の意思だと思います。
余命宣告されているなどが前提だとは思いますが、
本人が安楽死(尊厳死)をした方が自分らしく生を終えられるなら安楽死を。
最期まで生きた方が自分らしく終えられるならそのままの死を。
選ぶ自由がある方が良いのではないかなと。

(健康で身体的にまだ生きられる人はするべきではないと思います。
 死ぬほどつらいこともあると思いますが、周囲が生きて解決する方法を提供するべきだと考えます。)

最期に壮大なテーマに触れてしまいましたが、
この小説としてはとても面白かったです。
ホラーノベルにはまりそうなので、貴志さんの他作品読んでみようかなと思います。

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