ゆっくりと時間をかけて感染するアルコール依存3

私はお酒が好きなだけで、依存なんかしていないと思っていた。

体と心を蝕むアルコール

アルコールの依存度は恐ろしい。

まず自覚症状として現れやすいのは、体の変化かも。

心の変化(依存する気持ち)は、体(依存による身体症状)よりも、もっと早くに現れる。
多くの依存者は、その心の変化に気付いていない。
いや、気付いても見て見ぬふりをしている。

お酒をやめるなんて、そんなことしたくないからね。

お酒によって、自我をコントロールされている事実を当事者は絶対に気付かず、気付いたところで認めたくもないと思う。

認めてしまえば、お酒によって自我を失っている弱いやつというレッテルを、自分自身に貼り付けることになるしね。

私もそうだった。父もそうだった。母も恐らくそうだったんだよ。

私が最初に感じた自覚症状は、手の震えだ。

手が震えだしたときは、お酒を飲めば震えが止まる。
だから、大したことはないと思っていた。

でも。
体がアルコールによって支配されていると気づき始めた。
気付いた時には手遅れ・・・なんてことはなく、飲み方や飲む量を見直すことから始めた私。


もちろん、酒をやめるという考えは全くない。

酔っているときは、現実の辛いことを忘れることができ、心と体に魔法がかけられたかの状態。
酔いも醒めれば、また現実が待っている。そんなことはわかっている、

私は、現実から逃げたかった。
私が大量にアルコールを飲んでいたころ、母はうつ病で寝込んでいた。
とても元気で明るかった母は、人間が入れ替わってしまったのかと思うくらいに豹変。
私はうつ病である母を母として認めたくなかったし、向き合いたくなかった。
だから、どんどんお酒に溺れ他のだ。
都合の悪いものにはどんどん蓋をする、これがアルコール依存へのはじめの一歩。


アルコール依存が原因で、私が小学校三年生の頃に父と母は離婚。
数年後、私が高校に合格したことを父に伝えると、いつもより多めに養育費が振り込まれた。

 多めに振り込まれた分だけを、母は私にくれたのだ。
母から『お父さんにお礼を言いなさい』と言われたが、お礼を言えたのは一年後くらいだった(;'∀')

父にお礼のメールを送ると、久しぶりに父と会うことに。
私と障害者の妹とで父と会うことになり、品川水族館へ出かけた。
久しぶりに会った父を見て、言葉が出ない・・・。

頬は痩せこけ、全体的に痩せこけ、まるで牛蒡のような父が目の前に。
おっさんの域を通り越して、おじいちゃんみたいな風貌に。
父は俳優の神田正輝さんにそっくりで、若いころはとってもモテたらしいが・・・
どこをどう見ても、神田正輝さんにそっくりだった父の面影はない。

すると父は。
『お父さんはな、腕に管を通しているんだ・・・』と、語り出す。
機械音のような音が、父の腕から聞こえてきた。

『人工透析と言って、自分で血を作れないからこの機械が作ってくれているんだよ』と説明をしだす父。

『腕を触ってごらん』と言われ腕を触ると、機械のようなものがジリジリと動いている感覚がした。
※当時の記憶のまま書いていますが、恐らく血液透析ではないかと。

人工透析の知識なんて全くない(正直今もない)私ですら、危ない病気にでもかかっているということは察知した。

父はアルコールの摂りすぎで、肝臓の病気にかかっていた。
病名は聞いていないが、その為に人工透析をしていたそうだ。

17歳の私には、父は酒によって作られたロボットにしか見えなかった。

人工透析をしている父。
酒の影響なのか、肌も黒黒しかった。

何はともあれ、水族館に行く約束をしていた訳だし、水族館に行くことを楽しまなくては。

障害者の妹は、残念ながら父のことを覚えていない。
終始『おじさん』と呼んでいた。

水族館へ行った後、父がお世話になっているというお寿司屋さんへ連れて行ってもらう。
そこで父は『いつもの』と頼むと、ビールが座席に届くのであった。

『こんな体になってまで、お酒を飲んでいたの?』と、父に質問する私。

すると父は『お父さんはお酒が大好きなんだよ。どんな体になってもお酒はやめられないよ』と、笑顔でこぼすのだ。

これが20年前の話だからこそ、救われなかった部分もあるのかもしれない。

今では情報が溢れかえっているのだから、アルコール依存症という病名で入院させることができただろう。

父が入院をしていたのは、体がアルコールに勝てない状態だったからで、根本的な依存を治すものではなかった。

だから、透析をしても酒を飲むのだ。

普通に考えたら、そんな状態で酒を飲むなんて恐ろしくてできない。

自分の体を壊しているアルコールに対して、それでも酒が好きだと言える神経が、私には理解できなかった。

父は、アルコールのせいで体を壊しても、酒が好きだと言い切れる、立派なアルコール依存症。


そんな私も、ひょんなことをきっかけに、アルコール依存になりかねない。
これからも、注意をして暮らさねば。

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