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アメリカの学校から学ぶ変化に対応する力

なにもかも不確定。予測不可能な日々ですね。
こんな中、息子の学校はよく対応してくれていると思っています。

これまでの道のり

息子たちは、3月12日を最後に学校に行けなくなってから、一度も登校できないまま6月5日に夏休みに入りました。
最初は準備期間、2週間後にはなんちゃってオンライン授業が始まり、4週間後にはオンライン授業1.0が始まりました。そして夏休みが明けた今、随分進化したオンライン授業2.0に取り組んでいます。

夏休みに入る前の段階では、翌年度の学校をいつからどのように始めるのかということは何も決まっていませんでした。
夏休みを短縮して早期に学校を再開するという案も出ていましたが、そうこうしているうちに感染者が再び増加し、それどころではなくなってしまいました。

息子の通う小学校のある学区は、当初6月の終わりには翌年度のプランを発表すると予告していました。しかしながら、日に日に状況が変わってそうもいきません。もう少し様子を見させてくれと延ばし延ばしになっていました。
この間、対策チームを作り、州知事、公衆衛生局、労働組合の意向や決定を確認しながら、安全に学校を再開する方法を模索するとともに、本格的なオンライン教育についての準備も進めました。
保護者とは、ZoomやFacebook Liveなどを使って希望者が自由に参加できるミーティングが何度も開催され、全家庭へ向けて定期的にメールでの現状報告がありました。

余談ですが、ここで興味深いのは、大統領が何と言おうと学区のことは学区で決めるというやり方です。予算などの問題があるので州の方針は受け入れざるを得ませんが、細部については現場で決める。スタッフと生徒の安全について一番理解しているのは現場なのだ!という確固とした態度が明確なのです。
そんなわけで、アメリカ全土において、学校再開への対応は統一されておらずモザイクなのだそうです。

さて、7月中頃になって、とうとう再開のプランが発表されました。
サンフランシスコやシリコンバレーといった都市では、全員がオンライン授業になることが決定したとの報道が出た頃と時を同じくしていました。

再開の日は、当初の予定通り8月19日。としたいところだが、19日を先生のための研修日とし、生徒は20日からとする。まずは全員オンラインでスタートし、登校の許可が出たところで実際に学校に登校して対面で授業を受ける子供たちと、それでも登校を希望しないでオンライン授業を続ける子供たちと、2つのオプションを用意するというプランでした。

どちらを選択するか、保護者に向けてオンラインでの登録フォームが用意されました。
結果。なんと、回答率80%のうち、中学生、高校生の45%、小学生の実に50%がオンラインを選択したのだそうです。

回答率80%って、こんな大切なことに回答しない人が20%もいることにまずはびっくり。
そして、結構ウキウキ遊びに出かけているように見えていたみなさんが、実は意外に慎重だということがわかって再びびっくり。

この結果には、学区もびっくりしたようです。
学区は、対面での授業を希望する生徒の方が多いと考えていたのです。ですので、少数のオンライン専門クラスは学校を横断して編成すれば間に合うと考えていたのです。
しかしそうではなかった。これではオンラインに対応できる先生が足りない!ということになって、再度プランを練り直す必要に迫られました。

結局、オンラインまたは対面のどちらを希望するかに関わらず、通常通りそれぞれの学校でクラス分けをして、まずは全員オンラインでスタート。登校の許可が出た段階で再度希望を確認するということで決着しました。
随分振り出しに戻った感じですが...。

もうひとつ余談です。
ここでは、先生の力というか、労働組合の力というか、先生の労働条件を優先する力が強いのです。
夏休みを返上してまでオンライン教育についてのトレーニングを受けた先生は少なかったため、確実に本格的なオンライン教育を任せられる先生の確保は限られているのです。
だから初日となるはずだった19日を急遽先生方の研修にあてざるを得なかったし、同じ学校内で、生徒の希望に合わせてオンライン専門、対面専門のクラス編成を作ることは難しかったのです。
夏休みを短縮するなんて、生徒の希望どころか、先生の希望でそもそも無理だったわけです。
また、リソースの都合などから、先生は学校からオンライン授業をすることと定めようとしていましたが、それでも登校を希望しない先生がいるため、回線のスピードを含めたリソースを整えることを約束させるので自宅から授業をする先生もいることを許可して欲しいというお願いも加わりました。
さすがアメリカです。

さあスタート

こちらの学校は入学式というのはないのですが、高校になると入学前にオリエンテーションがあるのだそうです。
それが、開催日の直前に急遽、教員の中に感染者が出たということで中止になったそうです。

また、再開まであと数日となった頃、デスバレーでは54.4℃を記録したような熱波がカリフォルニア中を襲いました。電力不足と火事の危険性が高まっているとして州知事は緊急事態宣言を出しました。
そこへ雷です。
この雷にやられて、カリフォルニア中のあちこちで山火事が発生しました。その数600にも達したとか。
この近くでも、ナパ市からみて北側と東側の2か所で火事が発生し、それらがつながってさらに南東へ広がっていき、広範囲が燃えました。多くの家やワイナリーが焼かれ、避難を強いられた人もたくさんありました。スタッフや生徒の中にも影響を受けた人たちが出ました。
それでももう初日はやってきます。影響を受けた人は個別に校長先生に相談するようにとなり、予定通り学校は再開されました。

加えて、再開日の前日夕方に予定されていたZoom保護者ミーティングは、ちょうど予定の時間に市内の多くの場所が停電に見舞われたため中止となりました。

そして迎えた初日。
息子の学校は、朝からいきなり停電になりました。
バックアップ電源でうっすらつながっていましたが、教室の電気も着いたり消えたり、なかなか不安定な様子でした。

また、夏休みの間にセキュリティを高めるための措置を施したそうで、そのための不具合なのか、数日間はZoomの接続が不安定な状況が続きました。
一度は、Zoom自体のサーバーダウンということもありました。

とりあえず先生は、クラスの中でランダムにco-hostを指定することにして、万が一先生の接続が切れてしまった場合は、その子に対応させるようにしました。
先生のいなくなる時間は子供たちの雑談の時間となり、それはそれで楽しそうですが、それぞれ勝手な行動をとる子供たちを一応co-hostにコントロールさせるというやり方は、なるほどと思いました。

そうこうして3週間ほど。ようやく落ち着いてきたかなという頃、先生から準備に充てる時間が足りないとの意見が出たとかで、スケジュールが変更されることが決まりました。
先生は、クラスを2つに分けて午前と午後に同じ授業をしているので、それだけでも負担な上に、出欠状況などを州に報告しなければならないといった義務も加わったらしく、こんなんじゃ時間が足りないよ!という文句が出たというわけなのです。
それで、Zoom授業の時間は10分短くなり、普段から早帰りの水曜日には、午後のクラスの子も午前のクラスの子と一緒に授業を受けてZoomは1回だけという形になり、先生の時間を確保したのです。

今後

ナパカウンティは、感染者数の状況などから9月14日から登校を再開してもいいという許可をもらいました。
だからといって、じゃあすぐに!ということにはなりません。

まずは、対面を希望するのか、100%オンラインを希望するのか、各家庭の希望を再度確認しなければなりません。(←イマココ)そして、結果によって必要であればクラスを再編成しなければなりません。
同時に、先生やスタッフの検査をして感染状況を確認するそうです。
その他、もう一度安全に対するプロトコルを確認して、学校の環境を整えて、10月半ば頃の再開を目指すということです。

最初は対面とオンラインのハイブリット方式で、週に2回、1日2時間半の登校。教室の中に滞在する人数を先生も含めて16人以下とするところから開始し、様子を見ながら段階的に時間や日数を増やし、最終的には全員が通常通り登校できるようにするということです。

実際登校が始まれば、また新たな問題も生じることでしょう。この先どのように進んでいくかはまだまだわかりません。

山火事の季節はまだまだ続きます。
各地で新たな火事も起こっています。周辺の山火事の影響で大気汚染がひどい状態も続いています。窓を閉めた建物の中に待機してなるべく外に出ないようにという日もある中、教室の喚起はできるのか?といったことも気になります。
でも、ま、そんなことにもそれなりに対応してくれるのだろうな~と思える自分がいます。

臨機応変

次から次へといろいろなことが起こる中、このフットワークの軽さ、うらやましくさえ思ってしまいます。
決まっていたことだからと無理矢理実行したりすることもないし、決定したことに不具合があればすぐに「変更します」と言えるのです。

どうしてこんな風にできるのでしょう?

一番は、透明化にある気がします。
目指すところ、そこへ向かうプロセスを明確に、よいことも悪いことも随時報告してくれることによって、組織のやり方が理解できます。理解者が増えれば協力者も増えるはずです。協力者が多ければ、物事は前に進めやすくなります。

もうひとつは、この辺りの方々の気質。
新しいものが好きな人が多い!ということです。

おじいちゃんおばあちゃんでもスマホやコンピューターを上手に使いこなし、SNSも自然に楽しんでいる方が多いのはなぜでしょう。
新しいものを取り入れるのに抵抗感が少ない人の方が多いのだと思うのです。
「えー無理。できない」という拒絶反応ではなくて「やってみたい!」という好奇心の方が勝っちゃう。

若い人の活躍も、興味があるから受け入れられる。
新しいものを取り入れることの方がかっこいいから挑戦できるし、古いものを維持することにそれほどのエネルギーを使う意味がない。
だから、日本で言うところの「老害」的なものも少ないのであろうと思います。

そもそもの歴史が(日本に比べたら)浅いこともあり、いろいろな人、文化の寄せ集めの国でもあることから、伝統にこだわる意識もあまりありません。

そんなわけで、とても柔軟で、状況が変わっていくことへの抵抗感がそもそも薄いという土台がある気がするのです。
それに加えて、実はサバイバルが好き!という気質も加わってきます。
”不確定なことにもその場で対応できて乗り越えちゃったぜ”って自慢したいみたいな、”新しくて困難なことに挑戦するのってわくわくしちゃうぜ”みたいなところのある人が結構いる気がするのです。

そしてもうひとつのポイント、細かいことは気にしないのです。
とりあえずやってみて、ダメだったらやり直すから~でいいのです。


私にはないものをたくさんたくさん持っていてこそなのでマネはなかなかできませんが、見習えるところは見習いたい!

過去に習い、伝統を守ることはとても大切で素晴らしいことだと思っています。
特に、日本の文化は独特で、ぜひ大切に守って受け継がれていって欲しいです。
でも、決まっていることだから、これまで継承してきた形だからといって、時代に合っていないものまでも無理にその形にはめていく必要はありません。しきたりや伝統に縛られて明るい未来を描けなくなってストレスを溜めるのは苦しいことです。

壊して再構築すべきものと、守るべきものを見極めること。
過去ではなく未来を見据えて考えること。
新しいことに興味を持つこと。

そこを意識して、今できる最善を、柔軟な気持ちをもって探し、実行し、修正していく。
そのとき、やり直せばいいと楽観的に考えて失敗を恐れない。

今の私にが取り入れていくことができるのはそんなことかなと思っています。

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