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外出禁止のカリフォルニアよりコロナについての中間報告

新型コロナウィルスという見えない脅威の出現により、いろいろな国の、個々人の、考え方だったりやり方だったり体制だったりが随分見えてきているなと思っています。
たくさんの人や物が日々世界中を動き回っていることもよくわかりました。
これが落ち着いた後、世界はどうなってしまうのでしょうか。私たちはどっちの方向に向かうのでしょうか。

日に日に状況が変わり、どこに出口があるのかもわからない今ですが、私がこれまで体験してきたことを少しまとめてみようと思います。

これまでの経緯

日本が“中国で未知のウィルスが出現した。春節を控えて警戒が必要だ”といったニュースで騒がしくなっていた頃、こちらでは、まあニュースにはなっているけどひとつのニュースでしかないといった様子でした。落ち着いたものだなーと思っていましたが、何のことはない。対岸の火事と気にかけていなかっただけでした。アジアで起こっていることなんて、自分たちに降りかかってくるのでなければさほど興味はないのです。

ところが、ダイヤモンドプリンセス号に乗船していたアメリカ人の約半数が隣のソラノカウンティにある軍の施設に帰国し、陽性の患者がナパを含む周辺の病院に振り分けられて入院してから少し様子が変わってきました。
その乗客たちと関係があるのかないのか、同じソラノカウンティでアメリカで初めての市中感染者が確認され、事態が急に緊迫し始めました。

このとき初めて、息子は、仲良くしているクラスの友達に「コロナウィルスを広めてる日本人殺す」と言われました。

それから、サンタクララ(いわゆるシリコンバレーにある街です)やサンフランシスコで次々に陽性の患者が確認されました。
同じ頃、ニューヨークなどでもあっという間に感染が広がっていきました。

感染の拡大に伴い、息子は、クラスの複数の子から、サニタイザーで手を消毒しながらわざと耳元でコロナコロナと言われるなど、ちょこちょこ気になることをされるようになってきました。
最初の頃は、自分は中国人とは違う。どうして間違われなくちゃいけないのかと怒っていた息子ですが、じゃああなたは白人を見て誰がフランス系かイギリス系かドイツ系かわかるのか?と聞いたら納得して、とにかくちょっとしたからかいは相手にしないようがんばっていました。
しかしやっぱりあまりの事態に、次第になぜ自分はアジア人として生まれてしまったのか…と悲しむようになってきました。
そして極め付けに、グループワークの際1人の女の子に「アジア人なんてみんな大嫌い!」と言われて仲間外れにされ、かなり落ち込みました。もちろん他の子は「無視しろ」と言ってくれたそうですが。

おそらく、子供たちにそれほどの悪意があるわけではないと思うのです。でも、家庭で、このウィルスについて注意しなければならないといった話をするときに、クラスにアジア系の友達がいるから言い方に気をつけようなどと考えてくれる人はほとんどいないと思われます。そして、中国人も韓国人も日本人も、違いのよくわからないアジア人です。親が、アジア人が変なウィルスを持ち込んで面倒だからもらってこないようにしてよね…などど話せば、子供たちは身近にいるアジア人をからかってみたくなるのでしょう。
とにかく、私たちは悪いことをしているわけじゃないし、友達もあなたを個人的に攻撃しているわけじゃないから大丈夫と言って息子の気持ちを落ち着かせていました。

そんな中で休校が決まりました。
ナパではまだ感染者は確認されていませんでしたが、トランプ大統領の国家緊急事態宣言を受けての判断でした。金曜日の夜になってから、来週から4週間お休みになりますとの連絡でした。
休校が始まったのと同じ週の半ば、サンフランシスコ周辺の6つの都市で外出禁止になったのに合わせてナパも金曜日から外出禁止になるとの通知があり、時を同じくしてカリフォルニア州知事から州全域外出禁止の命令が出ました。
感染拡大を受け、休校はひとまず4月いっぱいまで延期されました。州知事は、このまま夏休みに入る6月までの休校を考えているようです。

現在

外出禁止といっても、日用品の買い物と、ウォーキングやランニングは許されています。
ただし、家族以外の3人以上が集まってはいけない。人と接するときは6フィート(約1.8メートル)の距離を保たなければならないといった条件があります。
公園も、遊具や水飲み場は使用禁止です。
レストランは、持ち帰り以外みんな閉まっています。

当初、外出禁止に備えての買い占めでスーパーは品薄になりました。今では、一部品薄が続いているものもありますが、それを除けば普通に買い物もできます。
外に出て警察に止められるといったことも特にないので、街に悲壮感が漂っているというわけではありません。
どこにも行けないし、やはり外の空気を吸って太陽に当たりたいと思う方は多く、お散歩に出るといつもより多くの人と出会います。みなさん挨拶を交わしながらも自然に距離をとってすれ違います。ナーバスになっている息子は「アジア人嫌われてる...」と落ち込みますが、そうじゃなくて、みんなそうしなきゃいけないのだよと話しています。

全米で、アジア人だというだけで殴られたり、唾を吐きかけられたりということは多発しています。子供もいて怖いので、私たちはとりあえず都会には(どっちにしろ行けないのですが)近づかないようにしています。
この近所では、そういう目にあったという話はまだ聞いていませんし、表向き普通に接してくれています。

世界共通のことのようですが、やはり若者たちを止めるのは難しいようで、身近なところでも、学校も休校だし航空券も安いからハワイへ行こうと計画していた高校生たちの話を聞きました。
”俺たちは今を生きているんだ”などといって集まって飲んで騒ぐ若者たちの様子もニュースで見ました。

倒産や失業者もものすごい勢いで増えていますので、犯罪も増えることでしょう。
拳銃や弾の売り上げが激しく伸びているというのは、こういうときこそ自衛をと考えるアメリカ人らしいなと思っています。

このような流れの中で、私は、いろいろな意味で日本との温度差を感じていました。
日本では、みんなで集まったりご飯食べに行ったり電車に乗ったり、随分のんびりしていて大丈夫なのかな?
アメリカでも買い占めが!なんて報道されたけど、デマに惑わせれてではなくて、外出禁止や自宅待機に備えてのことなんだけどな。
速報!カリフォルニア全域に外出禁止令!って、私たちのところに届いてから1日以上のタイムラグがあり、そんなものなのかな〜。
ロックダウンって、万が一の時の学校とかにも使われる言葉で、イコール都市封鎖ではないんだけどな〜。
とかとか。

情報のわかりやすさ

こちらには、 nixle.comというサイトがあり、メールアドレスと地域を登録しておくと、その地域の市や警察や消防署からの情報を受け取ることができます。
これがとても便利。普段から、どの道で事故渋滞が起きてるから避けてねとか、どの地域にガンを持った人が逃走してるよといった情報がやってくるのです。
このメールが相変わらず役に立ってくれています。

また、他にも、公的機関や学校やローカルのニュースソースのFacebookやTwitter をフォローしているのですが、これらもいち早く現状を知るのに役立ちます。

私が見ていたすべての情報に共通していたわかりやすさは、みんなが米国疾病予防管理センター(CDC)の発表に基づいて動いているということ。
あっちではこう言っていて、こっちではこう言っているということにはならないのです。
今回のアメリカでの感染拡大はCDCのやり方もまずかったのではないか?と言い出している人もいるので、その点については別の議論が必要になるかもしれませんが、1つの専門知識を持った機関がリーダーシップをとってくれてみんながそこに従うというのは、非常にシンプルで人を惑わせないと思いました。

もう一つは、英語をきちんと理解できない人も多いからでしょうか。
情報発信がシンプルです。

予防しましょうと言っていた当初は、
〇手を洗いましょう
〇咳をするときはひじの中でしましょう(※)
〇病気かなと感じたら家にいましょう
基本的にはこの3つでした。

(※)咳やくしゃみはひじの中で!というのは、子供たちがプリスクールの頃から徹底して仕込まれています。最初はなんだかお行儀悪く見えるななんて思ってしまいましたが、手で押さえて飛沫の付いたその手で他のところを触ったら感染が広がってしまうという説明を聞いて、大いに納得しました。

その後、感染が広がり始めてからは、これに加えて、
〇感染のピークをなるべくなだらかにしよう
〇そのために、人と集まらない。距離を保つ。

今、なぜ外出禁止なのか。そのことの効果や必要性をこんなにわかりやすい図にして示してくれます。
(Napa Fire DepartmentのFacebookの画面をキャプチャしました)

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日本にもいろんな人がいるようになりました。
残念ながら、個人の良心に任せて、自粛とか要請とか言っていてなんとかなる時代ではなくなっているように感じます。
もう少し、シンプルで強いメッセージを出して、ある程度拘束力を持たせることも必要ではないかという気がしています。

動きのフレキシブルさ

働けなくなってお給料がもらえなくなったら、今すぐ生活に困ってしまう人は山ほどいます。

今は、
〇家賃を払えなくてもアパートを追い出してはいけない(家主への補償)
〇住宅ローンの支払いに猶予を与える
〇税金の支払いに猶予を与える
〇運転免許の更新期限に猶予を与える
などの対応が次々に準備されています。
また、各家庭の収入に応じて、現金を配布するということも決まったそうです。

間違っても、お肉券を配るなんて話は出ません。

金銭的な支援だけでなく、在宅で働くことについて、通常の勤務ができなくなった場合に違った形で貢献してお給料をもらえる手段はないか考えるなど、こういうときに、生活実態に照らし合わせてフレキシブルに動けるかどうか。
国だけでなく、事業者の真価も問われる時だと思います。

学校の対応

学校も、ある程度準備していたとはいえ、休校が決まった瞬間から在宅で勉強できる環境を整えていたというわけではありません。
息子の通う学校では、休校が始まった週の水曜日になって、まずはこれを使って勉強してくださいというカリキュラムが配られました。
オンラインでダウンロードできるようになっていましたが、コンピューターやプリンターを持たない家庭向けに、紙で受け取れる場所も設けてくれました。

そして翌週からは、Zoomでクラスとつながることができるようになりました。
最初の日は、ずっと会えなかった先生や友達の顔を見て話ができてうれしくて、子供たちは大はしゃぎで授業をするという感じにはなりませんでしたが、3日もすればすっかり落ち着いて、ほぼ毎日小一時間、普通の授業のようにやっています。

担任の先生は、娘が最近結婚したというくらいの年の方ですが、最初は「初めてだからうまくいくかわからないけど、わくわくね!」なんて連絡だったのが、生徒のお父さんのアドバイスを受けたりしながらもうすっかり使いこなしていてさすがだと思います。

子供たちは普段からGoogle Driveを使っているので、「今日の課題ができたらここにアップしておいてね」などという感じに進んでいくのは素晴らしいなと思って見ています。

息子が通っているダンス教室も、先週からZoomを使ったバーチャルクラスが始まりました。
また、普段子供たちを遊ばせている親同士で相談して、ZoomやFacebook Messenger Kidsなどを使って、退屈している子供たちにバーチャルプレイデイトをさせてクレイジーボーイズたちのストレスをある程度発散させています。

ただ、問題は、コンピューターやインターネットの環境を持っていない子供たちのことです。
今、教育委員会にあたるような組織で、そういう子供たちをいかにサポートするかを検討しているということです。
息子のクラスも、先生を含めて26人のはずですが、Zoomにはいつも19人くらいしかいません。参加できていない子たちがどうしているのか心配なところです。

こういうときですから、何もかも順調に行くわけがありません。
教育委員会(と仮に呼んでおきます)は、逐一現状についての連絡をくださり、アンケートをとって親からの意見を聞き、それに合わせて柔軟に対応してくれています。走りながら考えるから、みんなも助けてください。力を合わせて乗り越えましょう!みたいなフレキシブルな雰囲気が、とても素敵だと思います。
正式に決まっていない段階でも、こういう検討をしていると連絡を密に下さるというのも、こちらを安心させる要因のひとつなのかもしれません。


私たちは今、誰もがこれまでに出会ったことのない難局の中にいます。
何が正しかったのかというのは、何年も経たないとわからないことなのかもしれません。
それでも今は、とにかく進んでいくしかありません。

前例がないからできません。
教えてくれなかったからわかりませんでした。
誰も助けてくれないからもう進めません。
ではなくて、1人1人が、自分にできる範囲で、想像力と責任感を持って、少しでも前向きに向き合っていけるようにすること。誰のせいにもしないこと。そんな気持ちが大切なときなのかなと思っています。

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