予想できた試合内容。何に向き合うべき?〈鹿児島戦レビュー〉
試合情報
J2リーグ第27節 東京ヴェルディvs鹿児島ユナイテッドFC @19:00KO
@味の素スタジアム 前半0-0/後半3-3 合計3-3
〈得点者〉
【東京V】
レアンドロ(85分)、佐藤(87分)、河野(91分)
【鹿児島】
枝本(57分)、牛之濱(74分)、ハン(93分)
〈交代〉
【東京V】
12分:藤本→森田
54分:カン→佐藤
79分:山本→河野
【鹿児島】
54分:平川→中原
57分:酒本→ハン
69分:五領→萱沼
スターティングメンバーと基本フォーメーションはこちら↓
大敗後に見せたチームの姿
両チームのトランジションがモノを言う試合になると考えていた今節。オープンになると思われていたが、予想通りかなり大味な試合展開となった。もちろん4失点の試合の後に3失点はいただけない。結局チームは前半戦とそんなに変わらなかったとも言えるだろう。多少攻撃は良くなっていたが、守備はこれでいいのかなという出来ではあった。
ヴェルディはスタメンを大幅に変更。CBは近藤、内田。IHに寛也。左WGにカンが移籍後初先発。4名が前節より変わった。
鹿児島はほぼ変わらず。出場停止のニウドに代わり、平川が先発。いつも通りのメンバーで攻撃的に来るだろうと予想できた。
それではいつも通り攻撃と守備に分けて振り返りたいと思う。
攻撃
寛也が前半の10分辺りで負傷し早々に交代。そこまでは純輝を右WGとして起用していたためカウンターや、左サイドでの密集を作り出して純輝へのロングボールから寛也のチャンネルランなどプレビューで書いたようなチャンスメイクが多く実行できていた。
しかし負傷交代からは人の配置を変え下図のような攻撃陣形を見せた。
右WGを潮音、右SBを純輝、右IHを森田とする配置に変更。純輝を最初から高い位置に置くという筆者の考え自体は間違っていなかったのだが、それをやってしまうとカウンターは良いものの、鹿児島のセットディフェンス時に人につく守備スタイルにはまり純輝がフリーな状態で受けられなくなってしまう弊害が起きていた。ヴェルディのボール保持が長くなる中でこのデメリットは大きすぎた。
そんな中で永井監督がチョイスしたのが上図の形。インサイドでのプレーが可能である潮音をスタートポジションをサイドにして純輝・森田とのトライアングルを形成し、タイミングよく旋回することでアウトサイドレーンを空けて純輝にフリーで受けてもらうことを実現した。人についてくる鹿児島の守備特徴を逆手に取った素晴らしい配置だと考えた。
しかし0-0の試合展開の中で1v1を仕掛けるシーンが少なく、またチャンネルランをいた選手にパスを出す回数も少し少なかったのかなと思ったので、そこに関してはもっと失点前から仕掛ける積極性が必要なんじゃないかなと考える。
しかし前述したとおり、このトライアングルを形成する形はピーキーな面も持ち合わせている。それが下図である。
そのピーキーな面というのは、旋回のタイミングが早すぎたり森田が下がる前に潮音と純輝が前に並んだりする状況になる場合、CB2枚の前への選択肢がなくなり前進できないことも多々あるのだ。そこでボールロストをもし仮にしたとなると、即カウンターのピンチを招くこととなり攻めにくくなる面もあるので少し難しさはあるものの、個人的には良いアイデアではないかと感じている。
そしてビルドアップでは鹿児島が前から来たり、中盤のミスマッチで戦前の予想よりも中央に楔を打てるシーンも多かった。それが下図である。
CBに関しては今節は割とポジティブな面が多かったのではないのだろうか。内田に関してはリヒトにしか求められなかった引きつけてリリースの部分を何度か実行できておりさらに磨きをかけることができればこれからも継続的に試合に絡むことができるのではないのだろうか。そして近藤に関しては上図のようにチームの狙いでもあるレアンドロへの楔を何本か通せていた。リヒトに依存していたチームの重要な部分をほかの選手たちが実行に移せているのはとても良い傾向だろう。
このビルドアップの次の課題としては、中央に相手を寄せることができるのでサイドに素早く展開し、しっかりとフィニッシュまでの道筋を作り出していくことだろう。もちろん相手が対策してくることもあるが、チームの狙いとしてこの選択肢がある以上は完成度を高めてほしいと感じる。
また得点シーンに関して、1点目はプレビューで触れていた河野のチャンネルランからの得点。2点目は梶川が相手を引き付けてシュートコースを作り相手の守備の特徴を利用した得点。3点目はシンプルながらも裏抜けからポケットに侵入しそこから生まれたゴールだった。相手の特徴の利用尾はできていたものの前半からこのくらいの積極性は欲しいと感じたし、後半の優平アンカー起用はとても興味深いものがあった。
またプレビューと照らし合わせてみると純輝のSB起用でカウンターがなくなり、ボール保持のなかでチャンネルランからのポケット侵入は再現性を持ってできていたのかなと思う。しかし最後のフィニッシュワークの時点で合わない部分が多く、そこに関してはもっと練度を上げていってほしいなと感じた。
守備
今節の注目ポイントとしてはやはりトランジションのところだろう。しかし狙いどおりというか、鹿児島のやりたいように前進されてしまったそれが下図である。
基本的にヴェルディの前がかりになった陣形の裏のスペースを使われることが多かった。上図でいうと中盤ラインの裏。ここが最も狙われていたエリアだろう。ここから単騎突破されたり、SBが上がっているサイドのスペースを使われたりと、かなりイージーに自陣まで侵入されてしまい前線からの守備を披露するシーンは少なかった。
正直、ヴェルディが守備練習に時間を割いているとはあまり思えないが、ネガティブトランジションは攻撃時のポジショニングである程度は変えられるものだと考えている。しかし今節のネガティブトランジションを見ていると、攻撃のための攻撃でしかなく、守備との接続がないのはかなり深刻な問題だと考える。もちろん永井体制は始まって間もないし、監督のチームのベクトルとして失点しても相手より点を取ることがあるのも分かるのだがネガティブトランジションを攻撃に組み込めないのであれば、それさえも実現できないかもしれないが、そこはチームの経過を注意深く見て読み取っていきたいと思う。
カウンターの場面から容易にセットディフェンスに移行してしまい2失点目を喫したことも考えると早急に取り組むべき課題でもあるだろう。
そして今節少し特徴的だったのはセットディフェンスが左右で形が違ったことだ。まずヴェルディ右サイドでボールを持たれた場合が下図である。
ディフェンスラインは基本的に鹿児島の2SH+2CFにつくので、ボールと逆サイドのSBにはマークにいけない。おまけにレアンドロ起用の弊害であるCBへのプレッシャーがない状態なのでサイドチェンジを何度もやられていた。カンもそこまで戻ることはないので左アウトサイドレーンが空いているシーンは多かった。さらにスライドしている間はボールにプレッシャーに行けないため、2失点目のように簡単に縦パスを入れられ失点してしまっている。カウンターの場面でも、セットディフェンスに移行した場面でも守備の未整備はこの試合に大きな影響を与えただろう。
そしてヴェルディ左サイドでボール保持された場合が下図である。
左サイドで持たれた場合に関しては潮音が砂森のマークにつき一時的に5-4-1での守備を敢行。実際前から相手のCBへ制限がかからない以上はこの守備が最適解になってしまうだろう。本当は4-1-4-1の守備を整備するべきだが、今のヴェルディにはできないので仕方ないとでもいうべきだろうか。この守備に関しては上位勢との対戦時に確実にディスアドバンテージを背負うとともに、カウンターが選択肢からほぼ無くなるといってもいいのでかなり厳しいのは間違いないだろう。これからの改善点でもある。
最後にプレビューで書いた、容易にセットディフェンスに移行せず前からのプレッシングを実行することが大事と書いたが、結局はどちらもできず守備に関しては良いところがなかった。このままでは勝つことは難しいだろうなと思わされる内容だった。前線からの4-4-2ディフェンスも形としては見えたが意図的にやったにしては効果が薄すぎると思ったので、この辺りの修正も期待したい。
まとめ
タイトルの「何に向き合うべき」というところに関しては、まだ自分たちのサッカーが出来上がっていない以上は、相手をリスペクトすることも大事だと感じる。対策しないと、勝てる試合も今節のように落としてしまうだろう。自分たちがやりたいことをやるために自分たちにベクトルを向けるだけでなく、相手にベクトルを向けて試合する必要があるんじゃないかとこの試合を見て強く感じた。こだわるのが悪いことではないのは間違いないが。
少し主観的な意見多めにはなってしまった。しかし強くなるために少しは自分も考えていきたいし、なるべく監督の考えも理解していきたいなと思う。そのためにもこのブログは存在しているとも思うので。
次節は山形戦だ。相手は間違いなく強い。この京都ー鹿児島の2試合からどうチームが変わっていくのか注目していきたい。
最後までお読みいただきありがとうございました!
この試合のプレビューはこちら↓
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