終わらない深夜残業と、餃子

これは昔、月一必ず、一週間程度の徹夜を余儀なくされる仕事に就いていた時の話です。

残業と眠気のエピソードについては、
机に突っ伏したまま長時間寝ようとしたらゲップが止まらなくなったとか、
椅子を並べて寝ようとして椅子からずり落ち、
もうここでいいや…と床に横たわっていたら、
めちゃくちゃにダニに喰われたとか、
枚挙にいとまがないが、今回はその話ではない。

私のいた部署は他部署の仕事を受けて
仕上げのような仕事をする部署なので、
私たちにスイッチングするように、
別の部署の人たちは3日間の徹夜が明ける。

私は中途採用且つ、初めての業界だったので、
今でもはっきり覚えているが、先に仕事が終わった
部署の人たちが、徹夜明けのその夜、
会社から一番近い人の自宅に集い、黙々と餃子を
作るのだ。
餃子のあんを作る者、皮に包む者、それを焼く者…
睡眠不足で落ち窪んだ目で、ただ淡々と。
疲れているなら、帰ればいいのに…と、純粋に思ったのを覚えている。
そして徹夜明けの人たちと、
今晩から大詰めでげんなりしている私たちは、
言葉少なにご相伴に預かる…
深夜の餃子の宴がお開きになると、
引き続き残業の私たちは泣く泣く事務所に戻り、
徹夜が明けた人達はそれぞれの家に帰っていく。
当時から、何故、餃子?…とも思っていたし、
黙々と餃子を作る人々の所作が何とも言えず、
儀式めいているな…とも感じていた。

さて話は変わり、物置部屋にある旦那の書棚の中に
『かくしごと』という漫画がある。
旦那は基本、野球漫画しか読まない・買わない
ので、本棚の中ではこれだけが異彩を放っていた。

このエピソードを話した私に
「それ『かくしごと』で出てきた」
と娘がつぶやいた。
「うん、出てきたな」と旦那もうなづいた。

実は娘、この漫画を隠れてこっそり読んでいたようだったし、旦那も薄々は気づいていたようだった。

娘と旦那の話を元に要約すると、
漫画家である主人公のアシスタントたちが、
そろそろ締切りという時に、こぞって餃子を作る
という描写が出てくるそうだ。
私は読んでいない、エアプなので詳細はわからない。

なるほど。これ、あるあるなんだな…

テスト前とか、やらなきゃいけない事を棚に上げ、部屋の片付けを始めちゃったり、アルバムを見始めたらとまらなくなっちゃった、なんて話はよくあるが、まさか餃子が必然であるとは、心理実験でも
実証済みの事象なのか…?、と驚いた。

それは過言として、
人は睡眠という基本的な欲求を取り上げられると、餃子を作りたい衝動にかられるらしい…
人々は餃子を作るという行為に何を求めているのか…と、現在では睡眠も栄養もたっぷり足りているはずの頭で考えたがよくわからなかった。

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