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バス停を活用したコミュニティ

日本での公共交通サービスとしての路線バスに着目した地方のコミュニティー改善を考察したい。

日本のモータリゼーションの向かう方向は、AIによる自動運転で利用者はGrabやUberのようなアプリを使い移動したいときにクルマを呼びいつでもどこでも目的地に到着ができよう。自家用車を所有するコストから私たちは解放され、AIにより交通の流れは制御され、その頃にはおそらく交通渋滞という言葉は死語になるのかもしれない。

ここでの考察であるが、公共交通サービスとしての路線バスである。先の説明の自動運転になる一つ前の段階という位置づけで捉えてほしい。

私がクルマを持つ前は、しばらく地元の路線バスを利用しての移動が多かった。今現在、とくに地方での路線バスの現状は必ずしも良いものとは言えない。バス会社として稼ぎ続けるために、路線バスはドル箱路線への選択と集中を余儀なくされ、高齢者や公共交通サービスに頼らざるを得ない交通弱者にとっては必ずしも便利だとは言えない。

私もそれを痛感した一人だ。自宅は交通量の多い通り沿いにあったため、自宅からJR駅間の移動は便利であった。バスは約15分間間隔で運行されており時刻表を気にせずに利用できた場所であった。だがひとたびこのドル箱通り路線から外れた場所への移動となると、1時間に1本ないし2本のみの運行で、バスの運行時間が制約となり私たちの生活の妨げとなることがあった。そのころ市では、市の予算で公共巡回バスサービスの運行をスタートさせた。ワンコインで利用でき、利用者は100円を払えば市内のどこへでも利用できるわけだ。一見便利そうに見えるこの公共サービス、利用者すべての思いを乗せての運行となり、やはり無理があった。バスは駅、市役所、公民館、病院、郵便局など市民が利用する場所をキーにした運行管理となり、結果として、ある地点AからBに行きたい場合、クルマで5分の距離のところ、バスでは30分もかかることとなり、ワンコインながらの贅沢なドライブを経験することとなった。「100円で安全に利用できるのであるから、致し方ない」との思いは乗客である高齢者でも同じであった。

そうしたある日、地元で開催された「コミュニティビジネス・セミナー」に参加した。これはなにも難しいことを一からおこなうのではなく、いまある社会の資源を活用・カイゼンしながら身の回りの様々や問題を解決する手法であることを学んだ。市民レベルで改善し社会全体が潤う仕組みにカイゼンしていくのである。

以前、愛知県内の大手自動車メーカー本社を電車で訪れた際、感心させられたことがある。最寄り駅は自動車メーカーの本社からの最寄りの駅とは言いにくいほど小さく寂しい駅で、本数も一時間に2本程度なのだが、そのすぐ脇に喫茶店があった。面白いことに、電車が到着する数風前にカンカンカン・・と踏み切り音がいっせいに喫茶店内に流れ、商談や休息していた人たちへの信号音となっていたのである。こうすることで電車利用者にとって夏は暑く冬は寒いホームで電車を待つことなく、ゆっくりと喫茶店内で待つことができたのである。

交通弱者のバスの利用を考えた場合、このアイディアはコミュニティーでの問題解決を考えるにあたって大変参考となる。

雨ざらしで、夏は日差しが照りつき暑いバス停、冬は手足が悴むほど寒い環境下のバス停でバスを待つ乗客をいかにして快適にバスを待ち、目的地にストレスなく安全に移動することができるか、それは以下のようなことを考える必要がある。

バス停

先の例でもお分かりの通り、風雨をしのぎながら待つことのできる快適な環境でなければならない。バス停の近くにスーパーや書店など比較的多くの人が集まる場所の近くのバス停がある。このような商業施設にて、待つ乗客専用にスペースとストレスフリーとなる環境を提供できないであろうか。

バスの運行

通学・通勤や帰宅・退勤時間にかぶる時間帯は運行時間が大幅に遅れ、バス停で待つ乗客はストレスが溜まる。都内のバス停でよく見かけるが、一つ前のバス停を出発した情報が、バス停の表示板へ掲示される目で見て簡単に分かる仕掛け作りは、利用者にとって大変便利である。しかし、これを地方のバス会社で運用するにはそれ相応の投資も必要であろうし、それ以前に、地方の片田舎でそんな場所ではたして一体何人が利用するのか、という意見も出よう。この解決はスパートフォンによる運行情報の共有ではないだろうか。バスの運転士にそのアプリを持たせ、いま現在どこを走っているのかが分かれば、利用者にとって大変便利になろう。ただし、アプリの開発や運用や、そもそも高齢者などへのスマートフォンを使いこなすほどのリテラシーをどう取り持つのかの問題があろう。

路線バスを利用させる仕掛けづくり

一昔前によくメディアで目にして耳にしたようなバス停を起点とした目的地の情報が極めて少ないのが現状だ。「〇〇のバス停から徒歩〇分」という広告が極めて減った。これは路線バスの利用者数が絶対的に減ったのと、それと同時にバスはいつまで待っていても来ない、という私たちの認識から自家用車による移動を選択するようになってきたためであろう。バスを待つ時間は快適で、なおかつバスの到着時間が手元のスマートフォンで簡単に分かるという環境になれば、人々はより楽しく路線バスを使うようになろう。バス停を起点としたコミュニティーづくりが可能となるためには、バス停の近くにあるスーパーや喫茶店、書店などの商業施設はそのスペースの一角をバスの利用客へ待合場所としても提供し、たとえばバスを利用した場合のクーポン券などを発行すれば待合場所提供施設にとってもメリットがあろう。

まとめ

バス停を起点とした街づくりに賛同する方が一人ずつ増えていき、とくにバス停に近い商業施設を営む企業やスーパー、喫茶店の協力があってはじめて、バス停を利用したコミュニティーは形成され、街が活性化されよう。高齢者にも使いやすいアプリが開発・運用されて利用者が増えバスが増便されていけば、いずれは自家用車による移動からバスによる移動への人の流れも醸成されよう。

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