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考えるグラビアアイドル

 グラビアアイドルは水着を着て、撮影会や雑誌でファンのためのサービスを提供する職業である。

 だが、哲学的な側面を持っている人がいる、と私は考えている。

 どういうことか。その話をしてみよう。


考えることの大切さ


 彼女を知らない者は誰一人としていないだろう。

 鈴木ふみ奈氏はグラビアアイドルとして雑誌やSNSを中心に精力的に活躍している。近年は俳優として映画・テレビドラマに出演し、演技の研究に励んでいる。

 上記の動画は鈴木氏のコンテンツ企画である。週刊プレイボーイ(集英社)が主催する「1min. 自己紹介チャレンジ」という内容だ。彼女は1分間で一問一答に挑んだ。そこには彼女なりの「哲学」があるのだ。

 鈴木氏は元より考え過ぎる性格であると自負している。だが、「考え過ぎる」は悪いことではない。メリットがあればデメリットもある。最も重要なのは「考え続ける」ことだ。

 「考え過ぎる」のはネガティブな意味で捉えられがちだ。ネガティブな思考で物事を考えてしまうのは「失敗したらどうしよう」という最悪のパターンに備えるための本能として働いている。だから、いつでも最悪の状態を想定して回避する手段を考えているのだ。これは自己防衛するためであり、良いことである。
 だが、「考え過ぎる」ことを突き詰めてしまうと、行動できなくなる。ジレンマに陥る。故に失敗した時にモチベーションを失う。自己肯定感が下がる。底なし沼にはまるような気分に浸る。

 哲学の世界では日常や社会の「当たり前」を疑うことから始まり、考えることの大切さを教えてくれる。世の中のあらゆる問いについての正解はない。答えがないからこそ、考え続けることが重要なのだ。

 哲学者のデカルトは「人間は考える葦である」との言葉を残している。考えることを放棄してはならない。


グラビアは「アート」である


 動画で答えていた鈴木氏はグラビアでの露出感で考え込んでしまう。

 詳細は明確でなかったものの、水着のサイズについて一回り小さいものを選択することで、周囲の人の反応はどう思うだろうかと考える。「撮影時の露出において許容できるかどうか」という問いを立てる。これはカメラマンや衣装合わせを担当するスタイリストからの助言といった客観的な視点で考え、総合的に判断することになるだろう。

 タレントの森咲智美氏は現役時代において常に意識していたことがあると語っていた。「グラビアは一種のアートである。」と。

森咲智美

 森咲氏はファンに対し、「いかに美しく艶やかな身体をつくりあげ、人々を魅了するか」を念頭に入れ、グラビア活動に尽力してきた。単に魅惑のエロスを堪能してもらうものではない。西洋美術史に残るような「美」を追究し、極上のファンサービスを提供するのだ。そのためには考え続けなくてはならない。色白の素肌を強調すべきか。しなやかな体つきの魅力を全面的に出すべきか。
 もちろん、「売れなければいけない」という商売としての心構えもある。しかし、お金を稼ぐだけではない。森咲氏は「エロ過ぎる」という領域を超え、クリムトが描いた絵を鑑賞しているのと同様に自身のグラビアを通じて何かを感じとってほしいという願いがあるのかもしれない。幸せな気持ちになってほしいのか。健やかな毎日を送ってほしいのか。感じ方は人それぞれだ。

 鈴木氏も「アートとして堪能していただきたい」という純真な想いであれば、考え過ぎてしまう癖は弱まるのではないだろうか。私はそう考える。


グラビアアイドルは「戦争に加担しない」


 私はグラビアアイドルという職業にたったひとつの事実があると考える。それは「戦争に加担しない」という点だ。

 鈴木ふみ奈氏は動画で「世界で一番怖いものは?」という問いに「戦争」と答えた。

 つまり、彼女は戦争が起こることを恐れているのだ。平和な世界が続くことを自ずから望んでいる

 グラビアアイドルや俳優、お笑い芸人、音楽家などの芸能人の方々が活動を続けることができるのは平和な社会であってこそだ。一度戦争が起きてしまえば、今まで「当たり前」とされてきた活動はできなくなる。自由がなくなる。国の思惑によって死を強いられる。誰もが悲惨な末路を迎えたくない。

 2023年6月、ある3人の政治家が郊外の都市公園にあるプールでの水着撮影会の中止を巡り、物議を醸した。彼女たちは「明らかに「性の商品化」を目指した興業」であることを理由に挙げ、都市公園法に基づき県営プールの貸し出しを中止するよう求めたのだ。この決定事項は許しがたいといえよう。

 だが、肝心なことを言う。グラビアアイドルは「戦争に加担しない職業」だ。

 これに対し、政治家は時代の情勢によって戦争になるか否かの瀬戸際に立たされている。政治的判断によっては戦争に結びつく可能性がある。彼女たちが所属する政党が「絶対に戦争を起こさない」と頑なに誓っても、「絶対に戦争が起こらない」とは言い切れない。なぜなら、政党の思想信条を嫌う人がいるからだ。それが原因で人々の間に対立軸ができる。政治思想のぶつかり合いが発端となり、戦争に発展することになるかもしれない。

 グラビアアイドルが職業として成り立つのは平和な状態であることが条件だ。だから、大半のモデルたちは「平和」を願っている。戦争に加担することを望んでいない。そういう意味では「ブランド力」のある職業だといえる。

 グラビアアイドルの和地つかさ氏は、「平和の『和』に地球の『地』と書いて『和地つかさ』です!」と自己紹介で用いる。おなじみのキャッチフレーズである。

和地つかさ

 文字通り、彼女は平和をこよなく愛し、地球を大切にしたいという想いがあるのだろう。だが、本当に「平和」を尊いものと考えているかどうかは分からない。平和を考えるためには、なぜ戦争が起こってしまうのかを考えなくてはならない。でなければ、このキャッチフレーズはまがい物となってしまう。

 もし「戦争に加担しない職業」であるグラビアアイドルが「内心、戦争をしたらいい」と思っているとしたら、どう応えるか。

 多くのグラビアアイドルファンは落胆するだろう。刺激的な発言を聞いて、嘆き悲しむ。「そんな言葉は聞きたくなかった。」と途方に暮れる。

 戦争と平和について考えるのは難しい。正解はないからだ。しかし、答えがないからこそ考え続ける。どうすれば平和な社会を持続できるかを。


「おっぱいが大きい」だけが全てか


 さらに、鈴木氏は動画で「あなたをイラッとさせる言葉は?」という質問に対し、「『おっぱいだけじゃん。』という言葉だ。」と解答した。彼女曰く、胸が大きい女性は馬鹿そうだと思われている。見た目のイメージだけで人間を見定めるのは気が気でないのだ。「私」という人間の何を知っているのかと問いかける。

 その通りだ。

 私も含め、大半の人々は「鈴木ふみ奈」という人間の何たるかを知らない。彼女との間柄で親しい関係である人にしか「鈴木ふみ奈」という人間的魅力を理解できないのだ。これは「森咲智美」や「和地つかさ」をはじめとするグラビアモデルの方々にも当てはまる。

 「胸が大きい女性」は「馬鹿そうである」という謎の論理は誰が言ったのだろうか。誰も耳にしたことがない話である。

 実際に、グラビアアイドルの中で豊満な胸を持つモデルは体系を維持するために日々の筋トレを欠かさずに行う。筋肉が落ちてしまうと、雑誌などの写真モデルとして起用されなくなるくらいの深刻な状況になりかねないからだ。常にレベルの高い肉体美を求められている。

 運動神経が抜群な人は「知性」が優れているという研究結果がある。スウェーデンの精神医学の権威として知られる精神科医のアンデシュ・ハンセン氏はスウェーデンのスコーネ地方とアメリカのネブラスカ州の小学生を対象とする学力調査をもとに、体力と学力の関係についてこう記す。

< まず、毎日体育の授業を受けた生徒は、週に2回の生徒よりも体育の成績がよかった。これは当たり前の結果だ。予想外だったのは、この生徒たちが特別な指導を受けたわけでもないのに、算数や国語、英語でもよい成績を取ったことである。しかもその効果は何年も続いた。(中略)
 アメリカのネブラスカ州では1万名に近い子どもたちを対象にして、これと同様の調査が行われている。ここでもやはり体力的にすぐれた子どもは、体力のない子どもより、算数や英語の試験の得点が高かった。>

アンデシュ・ハンセン『新版・一流の頭脳 運動脳』サンマーク出版 p.283

 では、なぜ子どもが運動すると、学力が上がるのか。

< 10歳児の脳をMRIでスキャンしてみると、体力のある子どもは海馬が大きいことがわかった。つまり、子どもでも身体を鍛えれば、脳の重要な部位である海馬が大きくなるということだ。
 これは、体力のある子どもが記憶力のテストで高得点を取ったという調査結果とも一致する。つまり身体のコンディションが良好だと海馬が成長し、さらに子どもの記憶力をはじめとする学力が向上するのである。>

前掲書 p. 286-287

 これは大人にも当てはまる内容である。
 鈴木ふみ奈氏は元々運動神経が良く、常に筋トレやダンスなどの身体運動を精力的に取り組んでいる。すなわち、体力のある彼女は骨太の知性を持っているということになる。
 以上の理由から、「胸が大きい女性」は「馬鹿そうである」という論理は成立しない。他のグラビアモデルの方々も同様だと考えられる。客観的な事実を調べずに、わけの分からない言説を流布する人には注意すべきである。

 「おっぱいが大きい」だけが人間の魅力の全てかという問いだが、私はそうではないと考える。性的な魅力以外に良いところがあるからだ。

 鈴木ふみ奈氏は「サックスを奏でる」「ピアノが弾ける」「料理が得意」「スポーツ万能」「麻雀やポーカーの腕前は一級品」といった側面がある。森咲智美氏は「お酒に造詣が深い」「エステサロンを経営する実業家」「インスタグラム・マスター」などがある。和地つかさ氏は「酒豪」「着付けが得意」「三島由紀夫文学をかじった」などがある。

 だから、「おっぱいが大きい」だけが人間の魅力の全てと捉えるのは早計である。


グラビアで人生を楽しく幸せに生きる


 本記事の締めくくりとして、動画での最後の質問を挙げよう。

 鈴木氏は最後の質問で「あなたにとってグラビアは?」に対し、「人生」と答えた。人生の半分をグラビアで過ごしてきた鈴木氏はグラビアのことだけを考えてきた。彼女にとって天職であり、周りの人の応援や良い環境に恵まれ、楽しい仕事場と感じたからだ。

 彼女のモットーは「人生を楽しく幸せにいきる」だと明言していた。「幸せになりたい」という想いが強く出ている。

 哲学者・アランの『幸福論』には「人は皆、幸せになる義務がある」と説いている。だから、「幸せになろう」と。「幸せになります」と心に誓えば、幸せになることができる。グラビア街道を歩んできた鈴木氏は幸せを噛みしめているのだ。

 ただ、『幸福論』は古典のイメージが付きまとうため、手に取りにくい。最近では平易な解説書や漫画が増えてきているのだ。その中で興味深かったのは精神科医のゆうきゆう氏の『マンガで分かる心療内科 アランの幸福論編』(少年画報社)である。

ゆうきゆう『マンガで分かる心療内科 アランの幸福論編』 p.23

  アラン: 人間には幸福になる『義務』があるんじゃ!
  心内療: 納税の義務のように!
       勤労の義務のように!
       または殺人などの犯罪をしてはならないのと同じように!
       誰もが絶対的に幸せにならなくてはいけないのです!

ゆうきゆう『マンガで分かる心療内科 アランの幸福論編』少年画報社 p.23

 鈴木氏は「幸せになる義務」がある。だから、ずっと幸せを感じていたいのだ。

前掲書 p.44

「幸せになる」と唱えれば、ポジティブな心情になれるであろう。

 テレビプロデューサーのテリー伊藤氏は2021年11月26日で鈴木氏との対談において、鈴木氏の恋愛観について触れている。

< テリー ふみ奈さんとは、どうすれば付き合えるの?

  鈴木 付き合うのは、やましくなく、誠実でいることだと思います。最初からやましい感じを出してくる方は「きっと他の女性にも同じことをしてるんだろうな」って思っちゃいますよね。

  テリー 誠実かぁ。俺からいちばん遠い言葉だよ(笑)。

  鈴木 でも、テリーさんの言葉には「やましい」の上に、「やましくない」が乗っかってる気がします。

  テリー なんか哲学的だな。恋愛体質か、そうじゃないかで言ったら、どっちなの?

  鈴木 あんまり恋愛体質じゃないと思います。強いて言えば「幸せでいたい体質」というか。> (太字は筆者)

テリー伊藤 アサ芸プラス 対談 鈴木ふみ奈 2021年11月26日

 アランの『幸福論』で提唱している「幸せになりたい」という想いが如実に表れている。これに加え、近年の価値観は「人に対する優しい心の持ち主」の人と楽しく過ごしていきたいと語っていた。

 「こうぺんちゃんとおべんきょうする『幸福論』アランとおともだちになろう」(KADOKAWA)では、お互いに不機嫌な表情を見せ合えることが人との愛を分かち合えることができるという。

『コウペンちゃんとおべんきょうする『幸福論』アランとおともだちになろう』KADOKAWA p.74

< 普段は「上機嫌でいること」をすすめているアランですが、家族や恋人などの親密な場合は、上機嫌も不機嫌もありうる世界のようです。不機嫌な顔を見せることができるからこそ、愛を分かち合っているのです。そんな人とめぐり合えた人は、とても幸福です。>

前掲書 p.74

 アランは上機嫌でいることがポジティブな気持ちになれると説く。しかし、人間は感情に左右されるものである。嫌なことやうまくいかないことに直面して不機嫌になる。もし悩んでいたら、気持ちを分かち合いたい人に少しだけ甘えてみる。互いに心を開くことで健全な愛情が育まれるのだ。

前掲書 p.40

 幸せに生きたいのであれば、自分から幸せになると決意すればよい。そうであれば、お金・愛・成功を手にすることができる。だから、特に男性たちは幸せになると心に決めておくことだ。人に優しくすることもキーポイントになる。

 鈴木ふみ奈氏が真に愛する人が目の前に現れたとしたら、アランの『幸福論』を座右の書とする人なのかもしれない。


<参考文献>

アンデシュ・ハンセン『運動脳』サンマーク出版
ゆうきゆう『マンガで分かる心療内科 アランの幸福論編』少年画報社
イラスト・るるてあ 文・冨増章成『コウペンちゃんとおべんきょうする『幸福論』アランとおともだちになろう』KADOKAWA

<参考サイト>

テリー伊藤 アサ芸プラス 対談・鈴木ふみ奈

<写真>

森咲智美 株式会社リップ プロフィール公式サイト
和地つかさ OFFICIAL SITE PROFILE
鈴木ふみ奈 『鈴木ふみ奈写真集 LOVE&PEACE 』玄光社

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