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この連休どっぷり読書体験はいかがでしょうか? 2019年オーストラリアで1番読まれた小説『少年は世界をのみこむ』をこんな方にオススメ3選

今年もやってきましたGWシーズン。
去年に引きつづき色々と制限のある連休になりそうですが、こんな時だからこその濃厚読書はいかがでしょうか。オススメしたい1作をご紹介します。

『少年は世界をのみこむ』
トレント・ダルトン著 
池田真紀子訳

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2019年オーストラリアで1番売れた小説で、原題は「Boy Swallows Universe」。(うちの会社で英語を教えてくれているオーストラリア人の先生もやはり読まれたそう!)
ABIA賞という権威ある賞の大賞をみごと受賞……だけでなく史上初の4部門制覇、各国でベストセラーの話題作なのです。

舞台はブリスベン郊外の小さな町ダーラ。
犯罪や暴力が日常茶飯事の町に暮らす12歳の少年イーライが、本作の主人公です。
彼を取りまく環境というのが、なかなかにハード。

・母親⇒恋人に麻薬を教えられ、クスリ依存
・実の父親⇒昔わかれたきりで、顔も思い出せない
・父親がわり⇒母をクスリ依存にさせた張本人
・兄⇒ある日を境に口をきかなくなり、意味深な言葉を宙に綴る
・親友⇒元脱獄犯の老人

学校でも悪友に目をつけられ……ともすればグレてしまいそうな環境ですが、親友である老人から人生の知恵を教わり、キラキラした目で世界を見据えるイーライは、いつか「ジャーナリスト」になる夢を胸に抱いています。
でもある日、大切な人を突然「悪」の手に奪われてしまうイーライ。
残酷な現実に、世界に、少年は立ち向かえるのか――


34ヶ国で展開のベストセラー。今日は、特にこんな方にこの連休オススメしたい……という独断の3選をあげてみます。


① がっつりどっぷりの読書体験をしたい!

本作、単行本で580p超え。1ページあたりの行数も20行……となかなかのみっちり具合!お寄せいただいている感想にも「すごい読書体験でした!」といった声がチラホラ。
1,2時間で気軽な読書を……とはちょっといきませんが、本好きの方ならきっと経験したことのある、本の世界に長時間浸かりきって、最後の1ページを読み終えたあと少しぼうっとしてしまう、あの感覚を味わいたい!という方にオススメです。

また大長編ながらページをめくる手を止めさせない、伏線や仕掛けが盛りだくさん。中盤を超えたあたりから「序盤のあれは、この伏線だったのか!」というカタルシスも満載です。

ちなみに邦題の「少年は/世界を/のみこむ」もですが、すべての章の見出しは「少年、言葉を書く」「少年、手紙をもらう」といった風に3語の構成。その理由も終盤に明かされるのでお見逃しなく。

② はっとする言葉に出会いたい

本のなかで出会う、胸にぐっと刺さったり、考えさせられたりする言葉。そんな言葉を見つけるのも読書の醍醐味かと思いますが、本書にはそういったフレーズがチラホラ。いくつかご紹介します。

■「時間を殺れ。時間に殺られる前に」
「絶対に忘れちゃいかんぞ、二人とも。おまえたちは自由だ。一日、一日が陽の当たる時間帯だ。
ディテールを残らず意識すれば、その時間を永遠に続かせられる」
 ぼくは深々とうなずいた。
「〝時間を殺れ〞だね、スリム」
 スリムは誇らしげにうなずいた。
「そうだ。時間に殺られる前にな」

■「いまがどん底。あとは上るだけ」
「なあ、イーライ。おまえはいま穴の底にいる」スリムが言った。「わかるな。いまがどん底だ。それ以上は下りようがないとも言えるんだよ。ここがおまえのブラック・ピーターだ。あとは上るだけなんだよ」(※注、ブラック・ピーター=刑務所の地下懲罰房の呼び名)

■「善良と邪悪は、選択にすぎない」
「あの日、病院で、おまえに訊かれたな。人間の善良さと邪悪さについて」スリムは言った。「あれからずっと考えてた。ずいぶん考えた。あのとき、選択にすぎないと答えればよかったと思った。過去は関係ない。母親も父親も関係ない。どこで生まれてどう育ったかも関係ない。ただの選択だ。善良か。邪悪か。その二つしかない」


本を読みながら、感情を揺さぶられたい!そんな方にオススメです。


③ 前向きなパワーをもらいたい!

犯罪まみれの町に暮らすイーライ。彼の言葉を借りれば「この町で世界から取り残された生活を送っているぼくらは、いってみればオーストラリア下層階級を乗せた、肥だめみたいな巨船に置き去りにされた生き残り」。
でも少年は、だからといって腐ったりしません。親友である老人に人生の知恵と真髄を教わりながら、ホースの水が形成する虹、駅のホームに描かれた鮮やかな落書き、草先にとまる虫――そういった日常の「彩り」や「ディテール」に目を向けます。
だから、他人には濁った灰色に見える日常も、少年の目を通すととたんに、眩くて色鮮やかで美しい日常に様変わりしてしまうのです。
そんなイーライの活き活きとした考え方、想像力、前向きに日々を生きる姿は、読んでいる側にも不思議なパワーを与えてくれるはずです。


……と、勝手な3選(?)でしたが、もし上記のひとつにでも当てはまった!という方は、色鮮やかな少年の成長物語、ぜひぜひお手に取ってみてくださいませ。

最後に、本国で寄せられた賛辞をご紹介します。

「10年に1度の大作。哲学、ウィット、真実、そしてパトスに富んだ、楽しい旅」(――Sydney Morning Herald)
「世界が持つ、明るさ、笑い、美しさ、赦し、贖罪、そして愛の可能性に迫る物語」(――The Australian)

●訳者・池田真紀子さんによるあとがき全文はこちら

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