広島のエンジンはさびつかず(vsサガン鳥栖)
推進力、ってサッカーでもたまにつかわれることばだけど、"推進"には「前に推しすすめる」って意味ともうひとつ「ものごとをはかどるようにする」という意味もあるそうだ。
"広島のエンジン"こと青山敏弘さんは、ながいことチームに推進力を提供してきた。これまでの彼の推進力は、前に推しすすめる意味合いがつよかったようにおもう。
でもサガン鳥栖戦、83分に出てきた青山さんはすこしちがった。ものごとがはかるどるよう、つまりゲームがはかどるようふるまおうとしていた……ようにぼくにはみえた。ぼくには。
相手ボールのときの位置のとりかたからしてちがうようにみえた。となりの泰志さんとか柴崎晃誠さんとかの位置をちらちらと確認しながら、守備ラインをつくろうとしていた。ボールばかりに目がいっちゃうなんてこともなかった。
チームが左サイド方向に圧をかけるときには、逆サイドの塩谷さんや後方のジェラさんに、ぽっかりあいた中央のエリアのケアをこまかく指示。ディフェンス全体を気にしていた。プレーがきれたとき「たすかった!」と手をあげたりするマメさもひかった。余裕あるじゃないの。
相手ボールになった瞬間には一生懸命もどった。91分13秒。スピード感はちょっとものたりないけれど、チームのピンチにスプリント、ディフェンスの頭数をふやそうとはしった。
そんな青山さんを観て、おもいだすことがある。
3月末のルヴァンカップ・グループステージ第3節、清水エスパルス戦。このゲームで青山さんは、後輩たちにケツをたたかれながら必死にポジションをとりなおし、相手ボールになったらはしってもどったりしていた。
でも青山さん、サガン鳥栖戦ではポジションどりも、もどるのも、ケツもたたかれずにやっていた。むしろケツをたたきかえすいきおいで、チームのサッカーがはかどるようプレーした。こうなるまでに最終戦までかかっちゃったのはもはやご愛敬ですな。かえって青山敏弘らしくていいじゃない。
ぼくはいままで、ぜんぜんゲームにからめないのに、インスタグラムでやたら前向きな青山さんがずっとブキミだった。こわいな、やだなとハラハラしていた。でもなんのこっちゃない。ガレージのすみで放置されていたはずの広島のエンジンは、ひとしれずしっかり整備されてあった。なんならマイナーチェンジされていて、チームにあたらしいカタチの推進力を提供しようと準備万端だったのだ。前向きだったのもチームのため、クラブのためになるからというだけだったのかもしれない。
ルヴァンカップ決勝の試合後、サポーターさんたちに「またつよいサンフレッチェをつくりましょうよ」「ぼくとみんなでね」と不敵にわらっていたけれど、そのことばにウソいつわりナシ。広島のエンジンはさびつかず。
青山敏弘ってやつぁしぶといね。