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冷静だった8分間(vs名古屋グランパス)

「マコが前?」

 とコーチに確認するところからはじまった、松本泰志さんの名古屋グランパス戦。89分に加藤陸次樹さんと交代、追加タイム+7分で記録上は8分間の出場となった。

 入ってきたとき、すこし心配だった。「大丈夫かな」って。泰志さんはこれまで、途中投入でだいぶ苦労していたみたいだったから。でも、この日の彼にそんな心配はいらなかった。

 まずはたてつづけに2回、相手のボールホルダーに激しくくらいつき、連続でタッチラインからおいだしてみせる。内田篤人さんが、日本人選手のプレッシャーは甘い、みたいなことをおっしゃってたけど、この日の泰志さんは、そんなアリバイプレッシャーとは無縁。相手に肉薄して足をのばす姿には、ボールをうばう意志みたいなのが、ハッキリと表現されていた。

 パスカットも2回。相手のねらうコースをあらかじめ察知、蹴った瞬間スッとからだを横にすべらせて、わりこむ。お見事。かつて森﨑和幸リスペクトをかかげていた泰志さんのパスカット、味わいはカクベツだった。

 ほかにも、近年の泰志さんの代名詞・ゴールマウス脇に侵入してクロスとかもあったけれど、このゲームでぼくがいちばん印象的だったのは、時間表示91分58秒くらい。左サイドのクロスにあわせようと、ペナルティエリアに入って「ファー入ってるよ!」とアピールする泰志さん。でも、ボールはとんでこない。するといともあっさり元のポジションにかえっていった。

 だからなんだよ、っていわれそうだけど、たぶん以前の泰志さんだったら、ペナ付近にはりついてたとおもう。でもこのゲームでは、ああもあっさり引き下がった。ぼくにはそれが、彼が結果を出すことにとらわれず、冷静に現状とむきあってる証拠な気がしたて、うれしかった。「まだまだ17番は投げ出してないぞ、よかった」と心底安心した。

 安心ついでに、あれだけしっかり守れて、おちついて状況を見渡せるなら、ボランチの、守備寄りのお仕事をつきつめたりするのもいいんじゃなかろうか、などと余計なことも考えた。ウチのMFで、いまそれを専業にしてる選手ゼロだし。掃除屋に転業した松本泰志さんも、それはそれでわるくない気がした。

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