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会いたくて足立さん震える 寿人想うほど永井龍 - サンフレッチェとわたし38

 終わった恋なんて引きずっていてもロクなことはない。酒が入るたんびに元カノのことをぐちぐち語りだすような、しょうもないニンゲンになってはいけない。別れ話のきっかけエピソードや彼女の悪いところ、その他恨みつらみをさんざん垂れ流したあとに「でも、幸せになってほしいと思ってるんだよ」とか寝言を抜かすようになってしまったもう手遅れである。

 結局サッカーとおなじで、恋が終わって大事になってくるのがトランジション。いつまでも切り替えられずにズルズル下がると、それこそ森保政権後期のようにガラ空きになったバイタルを使われて失点してしまう。ネガティブトランジションを整備して、判断をすばやくする必要がある。

 サンフレッチェの強化部長の足立さんはそのへんの整備がいまいち。トランジションの部分がまぁ鈍い。"終わった恋"をズルズルと、しかもかなり長めに引きずっているように思う。というのもここ数年、編成になぜか佐藤寿人みたいなFWを入れたがる傾向があるのだ。

 工藤、宮吉、渡、そして今年の永井龍。鮎川くんもかな。毎年ひとりは必ず編成に入れてしまうのが足立さん。キモチはわかる。ゴールが決まってちょっと泣けるのなんて寿人くらいなもの。しかしその一方で、彼らを一度もチームの武器として組み込めていないのが現状だ。寿人よろしくDFラインの裏を狙うといってもチーム全体でもかなりの工夫が必要だし、もろもろの事情もあってそう簡単な話でもない。こちらも期待するのが少々しんどくなってきている。

 永井龍、彼はどうか。ほかの選手たちとおなじように居場所をつかめぬまま去っていってしまうのか。いやいやそうとは限らない。永井はいままでのFWたちとは少し毛色が違う。というのも彼、妙にサンフレッチェとの縁が多いのである。

 まずは長崎のとき監督だった高木琢也さん。アジアの大砲のもとでゴールの奪いかたやFWとしてのふるまいを教わっている。長崎で結果を出したことで今度は風間八宏さんの指揮する名古屋へ。そこで相手をよく見て逆を突くことを叩き込まれた。加えて我ら愛しの佐藤寿人を間近で見ていたというのも大きな縁。松本山雅では水本裕貴ともいっしょにプレーしている。

「だからなんだ」とか言わないでほしい。縁ってのはなにかを引き寄せるものなのだ。初回のJ2のときにサンフレッチェに活を入れてくれた眞中靖夫さん、セレッソ時代にその彼の背中を見て気を引き締めなおした寿人が、のちに広島の地でエースになった。そういうストーリーもある。縁という縁を手繰り寄せ、永井が寿人のようなゴールを量産する未来だって充分にありうる。
 それにやっぱり、この手の物語には期待せずにいられないのが人情というものである(だから渡の移籍は死ぬほどショックだった)。

 案外早々にブラジル人FWたちの悩みの種になっているかもしれない。レアンドロあたりが「またアイツかよ!」ってアタマ抱えてたりして。

 ついでのお話。永井はのんびりした性格らしく、ごはんを食べるのもだいぶ遅いそうで。独特なテンポのモリシとは相性いいんじゃあるまいか。名古屋でもマイペースな和泉くんと仲良かったみたいだし。期待が膨らむ。

 つらつら書いていて、わたしももう少し"終わった恋"を引きずってみることにした。やっぱりロクなことがありませんでした、なんてオチになっても構わない。ニンゲンとして手遅れになろうとも知ったことか。

 こんなゴール、期待しております。


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