【患者さんの声】学生時代から続く「食べる」苦しみ。見失った「生きる意味」
人生の楽しみが苦痛に変わったら。
もしも毎日の「食す」という行為を苦痛に感じるようになったら、生活にはどのように影響するのでしょうか。
今回お話いただいたのは「食べることが負担」だという小野 弘樹(仮)さん。
毎日薬を5錠飲みながら、ビルメンテナンス会社に勤務する52歳男性です。
精神疾患を発症してから食べることに対して不安を感じてしまうようになりました。精神疾患が発症したきっかけや経緯、薬と共に生きることについて、これまでの人生を振り返りながらお話しいただきました。
業務や課題がきっかけ。食べられない苦痛とストレスで不安はさらに大きく
―――精神疾患が発症したきっかけになった出来事について教えていただけますか。
前職でWEB関連の会社に勤務していたのですが、業務が変わるタイミングで負担が重なったことがきっかけだと思います。
その会社には11年間ほど勤務していたのですが、それまでは精神的に追い込まれることもなく、落ち着いて仕事ができていたんです。
WEBの仕事は、様々なソフトウエアを使用するのですが、時代の変化につれ定期的に新しいソフトに入れ替わります。しかし、私はなかなか使いこなすことができず焦りがありました。そんな中、少し上の立場の同僚に「新しいソフトを使う気がないのなら別の人材に入れるから」と言われてしまって。
自分の中でも、習得しなければいけないというプレッシャーを感じていた状況で、言われた言葉。それをきっかけに不安やストレスを感じ、カラダに影響が出るようになりました。
吐き気や嘔吐が起こり、食事がまともに摂れない。
食べることそのものが不安になり、職場に行くこともストレスに感じるようになりました。
吐き気や嘔吐。ストレスの大きかった学生時代にも
思い起こせば、学生時代にも同じような症状があったんです。
僕はデザイン系の専門学校に通っていたのですが、学業とアルバイトをしながら生活していました。学校では毎日のように出される膨大な課題に対して「終わらなかったらどうしよう」「この課題ができなかったらどうなってしまうんだろうか」と不安を感じていました。そのうえでアルバイトにも時間を割かなくてはいけなくて、時間がない中で焦り、この頃から吐き気や嘔吐といった症状が出ていて。通学するのが辛い時期もありましたね。。。
今となっては「もともとがHSP(非常に感受性が強く敏感な気質もった人)だったのだろう」とわかりますが、当時はそんなことは考えもせず、ただただ苦しい毎日でした。
新卒で入社した会社でも症状は続きました。
上司にだけは相談していたので、自律神経失調症に関する本をや心療内科や精神科への通院も勧めてくれましたし、脳神経系の疾患も心配してくれました。それでも症状が落ち着かず、結局退職してしまったんです。
その後は自宅療養中に見つけた地元の会社に転職し、好きなイラストの仕事をしたり、都内の広告会社に勤めたりした後、前職のWEB制作会社に就職しました。
前職の社長にも疾患のことは伝え、いろいろと配慮してもらっていたんです。
ただ、繊細な気質がゆえに続けられなくなってしまって。新しいことに対応できない自分も不甲斐なく感じていて、社長の配慮もありがたく受け取ることができず、結局強引に辞めてしまったんです。今になって後悔していますね。
―――現在はどんなお仕事をしていますか。
現在はビルメンテナンスの仕事をしています。本当はWEB関連の仕事がしたくて何社も受けてみたのですが、実際は面接までたどり着けないことばかりでした。
ビルメンテナンスは体力勝負の仕事です。
これまでデスクワークが長かった自分には、身体的な負担がとても大きく感じます。そして身体が資本の仕事ゆえに、食事がとても重要です。頭ではわかっているので、何とか食べやすいものをと試行錯誤し、おにぎり1個とゼリー飲料1つ程度にしているのですが、それでも半分食べたところで気分が悪くなります。
食べては嘔吐、を繰り返しながら昼休みを過ごすこともあって、こんな状態でこの仕事を続けられるのか、そもそもこの転職が正しかったのかすら、不安になっている状態です。
今更ですが「もしかしたら、前職に戻ったほうがラクに生きられるかもしれない」と感じることもあります。
「当たり前」ができない辛さ。なんのために生きているのかと感じることも
―――疾患とともに生きることはどのようにお考えですか。
今の症状は「食べて吐く」という摂食障害の状態です。
皆にとって、当たり前にできることが自分にはできない。食べるということに、少しも楽しみや安らぎを感じられず、苦痛や不安が大きいんです。
人として基本的なことさえできない自分は、生きている意味があるのか、何のために生きているのかが、分からなくなります。自宅では不安なく食べられるので、食べられないのは疾患によるものだとわかっているんです。それでも食べられないという不安が募って眠れないこともあったり。
世の中「食べることが楽しみ」みたいな人が多いじゃないですか。でも、食べすぎて太ってしまうという悩みすら、僕からしたら羨ましいですよ。
―――相談する人はいらっしゃいますか。
家族や友人に、この症状のことは話していません。
話してもなかなか理解されないんじゃないかと、どこかで思っているのも確かです。
近しい人にも話していないので、人間関係や人付き合いが難しいですね。友人と出かけた先で食事をする事になったらどうしよう、と考えると怖くなって、誘いも断っているんです。
―――小野さんにとっての生きがいを教えてください。
僕にとっての生きがいは家族です。
母と妹がいるのですが、父が他界してから自分が家族を支えるのだと思って生きてきましたし、その点では周囲からも頼りにされているのを感じています。
世帯主として家族を支えているというのが僕の生きる意味のように思います。
母も妹も僕の疾患のことは知りません。
自宅療養中も「転職期間中で家にいる」というくらいの認識だったようです。
よく話を聞いてくれる社交的な母と妹と過ごすのは僕にとって、穏やかで大切な時間ですね。
生きるため、日常を過ごすために欠かせない存在「薬」
―――薬とともに生きることを、どう感じていますか?
薬にはできるだけ頼りたくない、というのが本音です。
ただ、服用しているからこそ何とか食事も摂れるし仕事もできるので、生活する上では欠かすことができません。薬を飲む=安心感です。
服薬するようになったのは学生時代からですが、自宅療養中から前職で発症するまでは「薬なし」で過ごせた期間もありました。症状が再燃してから現在は、合わせて5種類の薬を服用しています。
服薬に関して困っているのは、薬の飲み忘れです。
今の薬の飲み方の指示は、就寝前と起床時が薬を飲むタイミングですが、朝も夜何かしら作業をしてるうちに忘れてしまうことが多いんです。僕にとっては薬を飲まなければ症状が出てしまうので、しっかり飲んで体調管理をすることが重要だとは分かっているんですけどね。
―――harmoおくすり手帳についてご意見きかせてください
harmoおくすり手帳はアプリで薬の管理できるのはとてもいいですね。
今まで紙のお薬手帳で薬を管理していましたが、薬局に行く際にお薬手帳を忘れがちで困っていました。
「お薬手帳がもっと小さかったら財布に入るのに」「持っていくのを忘れないような形状になったらいいのにな」と思っていました。
harmoアプリの服薬アラームはまさに「あったらいいな」を叶えてくれる機能ですね。
薬と付き合いながら生きている人は多いと思いますし、僕のように薬を飲むことに対して「大事であることは分かっているけれど忘れてしまう」という人はたくさんいると思います。harmoおくすり手帳は、僕を含め「薬に対する負担を少しでも軽くしたい人むけ」のツールだと思います。早速使ってみますね。
さいごに
学生時代から精神疾患の症状と向き合い、今もなお薬とともに生きる小野さん。
ご自身の症状をコントロールするため、少しでも安心して暮らすために「薬は欠かせない」ことをお話くださいました。
小野さんにとって、薬の管理はカラダもココロも穏やかに過ごすための基本。harmoでは薬とともに生きる人の「ちょっとラクに」をたくさんの方に届けたいと思っています。