【ゲーム感想】ATRI -My Dear Moments- (2020)
はじめに
『ATRI -My Dear Moments-』は、ANIPLEX.EXEより2020年に発売されたノベルゲーム。製作はフロントウイングと枕の2社が担当。2021年にはNintendo Switch版並びに各種スマートフォン端末用のアプリ版が発売された。2024年7月にはTVアニメが放送予定。
STORY
正直に白状すると、数ヶ月前『ヒラヒラヒヒル』のついでに購入したのが本作。SteamのANIPLEX.EXE作品3本セットがそこそこ安かったので。
それほど関心があったわけでもなく「気が向いたらプレイすればいいや」くらいの気持ちで積んでいたところ、1ヶ月後にTVアニメが放送開始と知り、「そんなんアニメ勢に絶対ネタバレされるじゃん」と慌ててプレイ開始。週末にガッツリやったら2日でクリアできました。総プレイ時間は10時間前後くらい? ロープライスなら十分なボリュームかと。
ちなみに本命の『ヒラヒラヒヒル』は未だにプレイしてません。その気になればプレイは10年後20年後ということも可能だろう………ということ…!
やる気はあるけど、積みゲー2桁のハードルが高すぎる。
総評 (※ネタバレ無)
“非18禁”であることに意義があるギャルゲー。
「エロゲにエロは必要か否か?」はユーザーの間で度々俎上に上がるテーマですが、自分のスタンスは「作品によりけり。基本的にあったら嬉しいけど、シナリオの流れを殺すようなものは反対」としています。まあ、昨今の「エロゲ」と言ったらFANZAやDL siteで販売されているインディーズゲームが主流で、エロ有りノベルゲーの市場は縮小傾向にあるようですが。
閑話休題。前述の通り、『ATRI』はフロントウイングと枕という2つのエロゲメーカーによって開発されたにも関わらず、全年齢作品として発売されました。もちろん、プラットフォームであるSteamの規約やら海外展開やらを考慮すれば、18禁で出すことのメリットは少ないでしょう。とはいえ、発売当時は「日和ったなあ」と冷めた印象を持っていました。
しかし実際にプレイしてみて、本作のシナリオが非18禁をベースに構成されていることがわかりました。主人公とヒロインがプラトニックな関係でなければ成立しないシーンが存在し、同時に、二人のもどかしい距離感が本作の大きな魅力でもあります。よって、よくある「エロゲのエロ抜き」ではないのでご安心を。
キャラクターに関して。
アトリが可愛い。初めの頃は「ポンコツロボットなんてまたベタな」なんて思ってたけど、次第に愛おしく思えてくるんですわこれが。声優に明るくないので詳しく存じ上げませんが、脳が蕩けそうなボイスが癖になりますね。「甘えんぼナッちゃん」「そんなことも知らないんですか」等の煽り力の高さも個人的に高ポイント。
彼女の魅力は何と言っても、普段の天真爛漫なふるまいと、ふとした時に見える母性(包容力)のギャップでしょう。ストレートに言うと「人をダメにするロボット」。
幼馴染の水菜萌は絵に描いたような善人で、めちゃくちゃ良い子なんだけど、良い子すぎるのがネックでシナリオ的には印象が弱い。仮に本作がミドル~フルプライスで出ていたら、幼馴染の特権を活かして過去エピソード盛り盛りになっていたかも。ポテンシャルは高かっただけに惜しい。
アトリが本作を象徴するメインヒロインだとするならば、裏のヒロインは……竜司です。半分冗談で半分マジ。アトリからもライバル視されるくらいにはヒロイン力高いし。ギャルゲー名物「主人公のサポート役兼親友」ポジションの重要性を再確認しました。アトリとの掛け合いが楽しい。
最後に、主人公の夏生。いけ好かないスカし野郎と見せかけて、その実なかなかアツいところがある若人。知識と行動力を兼ね備えているのが頼もしい。本編中で片足生活の不便さが描かれている反面、夏生の“足”として文字通り支えてくれるアトリのありがたみが、読み手にも伝わります。
シナリオに関して。
ボリュームだけでなく、構成までしっかり練られた良シナリオ。そんじょそこらのフルプライスよりよっぽど満足度高い。キャラクターの背景描写、成功と転落、丁寧な伏線回収と、一連の要素がきっちり揃っていて、お手本のようなシナリオです。おかげさまでラストまでスラスラと読み進められました。序盤からコツコツ積み重ねていく構成でありながら、こちらの予想を裏切るほどフックの効いた展開もあり、読み物として純粋に面白い。
ただ、ロープライス故か、後半が駆け足だったのと、設定面での粗が少し気になってしまいました。敵対関係のあの人とか、個人的にはもっと掘り下げてほしいと思いましたね。
音楽に関して。
主題歌の方は、聴いた瞬間に「『素晴らしき日々』系列の曲だなー(作曲者同じ)」という第一印象。シナリオライターによる作詞は世界観とマッチしていて良かったと思います。
劇伴も主題歌と同じ作曲者なので、やっぱり『すばひび』感があります。で、自分の好みの問題で非常に申し訳なく思うのですが、この手の音楽が好きではないというか、ぶっちゃけピアノの音色そのものが苦手(オルガンやシンセは好き)なので、印象に残っている曲はあまり多くありません。
例外を挙げると、プリミティヴな「Working」や、軽快に跳ね回るような「ポンコツステップ」辺りの曲は好きです。
総括です。
ポストアポカリプスものが好きならプレイして損なし。緩やかに滅びゆく世界の日常描写が非常に秀逸。個人的にはここが最も評価したいポイント。「確実に滅びの道を歩んでいるが、人々はそれを受け入れている」状態からのスタートにワクワクさせられました。
半分水没した学校等、美術の美しさも見ごたえあります。絵柄は今時主流の透明感あるやつですね。「透明」と言えば、アトリの服が水で少し透けてるシーン、あれめちゃくちゃHだと思いませんか? 私は思います。
おわりに
今回はネタバレ無しの感想なのでここまで。本当は、多くのプレイヤーを精神崩壊させたであろう例のシーンについて感情をぶちまけたい想いから書き始めたのですが、ここまで書いて満足しちゃった。TVアニメ放送前にネタバレ食らいたくない同志もいるだろうし。真相は君の目で確かめてくれ!
続編の『GINKA』もそのうちプレイ予定ですが、中断したままのアレやら何やらを片付けてからにしたいので、当分先になると思います。
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