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【ライヴ感想】VEKTOR JAPAN TOUR 2023 @ SPACE ODD 11/2・11/3

 2023年11月2日(木)・11月3日(金・祝)、VEKTORのライヴに行ってきました。その感想を書きます。


はじめに

 VEKTORは、アメリカのプログレッシヴ・SF・スラッシュメタル・バンド。SFはそのまんまサイエンス・フィクションの意味で、そういった世界観が楽曲のコンセプトになってます。'04に結成され、現在に至るまで以下の3枚のフルレングスアルバムをリリース。

・Black Future ('09)
・Outer Isolation ('11)
・Terminal Redux ('16)

 20年近く活動していてアルバム3枚は少なくない?と思われるかもしれませんが、どの作品もスラッシュメタル史に名を遺す名盤で、寡作とはいえメタル愛好家の間では非常に高く評価されています。
 個人的なイチオシは『Terminal Redux』。非メタルファンにも自信を持ってオススメできます。


VEKTORとの出会い

 VEKTORはデビューアルバム『Black Future』の時点で耳が早いリスナーの間で話題を呼んだと聞き及びますが、自分がはじめて聴いたアルバムは2nd『Outer Isolation』。国内盤も出たのでそちらを購入。内容にぶったまげました。複雑怪奇なリフに手数の多いドラム、極めつけはクセが強すぎる金切声ヴォーカル。プログレのテクニカルさとスラッシュの攻撃性を兼ね備えた音楽性は、他に類を見ない衝撃でした。アルバム発売からしばらくして「初来日決定」の報をネットで知りますが、当時の自分はフェス形式のライヴへの苦手意識が強かったこともあり(これは現在も)、「へー」くらいの関心の低さ。後々このことを激しく後悔します。
 時は飛んで2016年、3rd『Terminal Redux』は前作をさらに進化/深化した完成度を誇る大傑作で、自分もすっかり魅了されました。しかしアルバムリリースから間もなく、バンドは中心人物のDavid DiSanto(Gt.,Vo.)を除くメンバー全員の脱退を発表。詳しい事情の説明もなく、完全に寝耳に水の出来事。実質的に活動不可能の状況に陥ってしまいました……。
 それ以降ファンが暗澹たる思いを募らせていた2019年、突如としてVEKTOR復活のBIGニュースが飛び込んできた瞬間、文字通り飛び上がって歓喜しました。Davidの盟友であるErik Nelson(Gt.)が復帰し、リズム隊に新メンバーを加え、新曲をひっさげての堂々たる帰還。こちらの新曲はシングルと、CRYPTOSISというバンド(VEKTORに大きな影響を受けたオランダのバンド)とのスプリット盤でリリースされました。

 前置きが長くなりましたが、今回の10年ぶりの来日公演は、復活を遂げたVEKTORの姿を目に焼き付ける、またとない機会でした。これはもう行くしかないと、東京公演2日間通し券を即購入。

ライヴ感想

11/2

 ツアー初日。期待が高まりすぎて居ても立っても居られず、SPACE ODDに開場1時間前に到着。先に待機していたのは数人程度。この会場に来るのはこれで2回目だけど、前回はHEATHEN(アメリカのテクニカル・スラッシュメタル・バンド)のワンマンで昨年10月のこと。こうして1年越しに同じ場所でスラッシュメタルのライヴを見に来るとは、不思議な縁を感じますね。今回、奇跡的に若い整理番号を取れたので入り口近くでそのまま待機。スタッフによる案内はスムーズで、開場はほぼ時間通りだったと思う。入場後すぐに2階の物販へ。はじめて利用したけど、通販で事前に予約できる画期的なシステムがあって、注文番号と本人確認だけで商品をすぐに受け取れた。よその公演でもぜひ導入してほしい。ちなみに物販の隣では、デスメタルのコンピ盤が数量限定で無料配布されていたので、そちらもありがたく頂きました。荷物を整理して1階へ降りると、最前列は既に埋まっていたのでその後ろに位置取り。開演前に流れていた音楽ではPYRACANDAの「Top Gun」が一番印象的だった。カッコいいよね。

 いよいよ開演。スペイシー&オカルティックなイントロとともにメンバーが登場し、そのまま1曲目の「Cosmic Cortex」が始まる。初っ端からこの曲か!とテンション爆上げ。開幕から10分超の長尺曲とは攻めてる。VEKTORは一般的なスラッシュ・バンドと比較して長尺曲が多めだけど、途中で一切ダレないのが魅力なんですよね。いきなり飛ばしすぎではと少し心配になったけど、このバンドではこれが平常運転らしい。はじめて生で見るVEKTORの演奏に圧倒されたまま、次の「Black Future」へ。デビューアルバム1発目の特別感ある曲。中盤でテンポを落としつつ、終盤に再び爆走する構成がお見事。3曲目は「Venus Project」。この辺りからようやく、少し落ち着いてパフォーマンスを見られるようになった。復活後の新メンバーの経歴は知らないけど、めちゃくちゃ安定感のある演奏だなーと感心しきり。特にこの曲はリズムチェンジが激しく忙しないけれど、Mike Ohlson(Ds.)のプレイは緻密且つパワフルに暴れておりました。4曲目は「DNA (Deoxyribonucleic Acid)」。セットリスト掲載サイトによると、ライヴでこの曲を演るのは2015年以来らしい。ギターリフが超クール!ブラックメタル風の哀愁も感じられる。5曲目は「LCD (Liquid Crystal Disease)」。ダサいと揶揄されがちなギターのピロピロがSFっぽさを演出していてカッコいい。6曲目は「Dying World」。プログレみの強さが特徴的ながら、キャッチーさも併せ持つ最強の曲。7曲目は思わずつられて「アーステーローイド!!」と叫びたくなる「Asteroid」。そして8曲目はお待ちかね「Tetrastructural Minds」!2ndで一番好きな曲。何と言ってもイントロのドラムがシビれる。泣きのギターも大活躍。9曲目「Charging the Void」、トリの10曲目に「Accelerating Universe」と、どちらも13分超の大作が続き、カオスな曲展開で畳みかけるように初日公演は終了。

 いやー、凄まじいもん見させてもらいました。結局この日のセトリはほとんど疾走ナンバーで固められていて、終わりまでノンストップであっという間に感じられた。MCではそれほど多く喋ってなかったけど、覚えたての日本語で頑張ってコミュニケーションを取ろうとするDavidの姿にほっこり。当然だけど普段は金切声じゃないんですね。ライヴ中の歌唱はマジで人間が出しちゃいけない領域の声だから、ギャップがかなり強烈。
 
 初日のセトリまとめ。1stと2ndが中心でした。

  1. Cosmic Cortex

  2. Black Future

  3. Venus Project

  4. Deoxyribonucleic Acid

  5. LCD (Liquid Crystal Disease)

  6. Dying World

  7. Asteroid

  8. Tetrastructural Minds

  9. Charging the Void

  10. Accelerating Universe

11/3

 ツアー2日目、東京公演最終日。「2日目はセトリが大幅に変わる」とSNSで事前に告知されていたこともあり、本日も初日以上に期待が高まっていた。初日と同様に定刻通り入場し、今回は1階へ直行。すると、最前列が空いていた!過去行ったライヴ含めても、最前列は初。ワクワクと同時に身が引き締まる。

 2日目のOPは「Charging the Void」!初日もそうだったけど、コーラスパートで観客が大合唱。「オーエーオーエー」繰り返す珍妙なコーラスは、はたから見れば怪しい宗教の集会にしか見えないと思う。間違っちゃいないけれども。2曲目は初日になかった「Fast Paced Society」。冒頭の金切声シャウトで掴みはバッチリ。この曲はベースラインも好きなので、Stephen Coon(Ba.)の演奏をじっくり観察できて良かった。やっぱり滑らかに弾いてるなあ。3・4曲目は「Oblivion」「Tetrastructural Minds」と、高度なドラムプレイが見どころの曲が立て続け。ちなみに、事前にSNSで行われていた「ライヴで聴きたい曲リクエスト」という企画があって、両曲とも自分の投票対象でした。嬉しすぎて気が狂うくらいヘドバンしてましたね。7曲目は後半の疾走とソロパートがアツい「Psychotropia」。8曲目は静謐なイントロから始まり、ようやく一息つけるかと思いきや結局疾走に繋がる「Pillars of Sand」。9曲目はまさかの「Collapse」!何を隠そう、自分がVEKTORのライヴで一番聴きたがっていた曲。前曲以上に叙情的なパートが長く、ライヴ映えしないから演らないかも……と諦め半分だったけど、本当に願いが叶うとは!心の汗を流しながら、恍惚とした表情で聴き入ってました。2日目の本編トリ曲は「Recharging the Void」。VEKTOR屈指のドラマティックな構成の大作で、〆にふさわしい満足感。アンコールでは「Black Future」「Asteroid」と、観客と一体になって盛り上がれる選曲で大盛況のうちに終演。

 こんなライヴ見せつけられたら「VEKTOR最高!」としか言えなくなっちゃうよ……。いやもう本当に「Collapse」演ってくれてありがとうございます。個人的に、これ以上のセトリは思いつかないベスト・オブ・ベストな選曲でした。パフォーマンス以外で印象に残ったところを挙げると、メンバー間の空気が始終良かったところかな。Erikがムードメーカーなのは何となくわかるけど、ステージを降りて観客の目前で演奏してくれたり、とにかくサービス精神旺盛。終演後にセトリ紙飛行機をうまく飛ばせないErikで爆笑。そのままずっとDavidのベスト・フレンドでいてください。メンバーそれぞれ個性的で好印象だけど、中でも新顔のMikeが気になって、ファンになってしまった。外見は細身の体型に立派な顎髭。それでいて難なく激しいブラストビートを叩く姿が最高にカッコよかった!今後もこのメンバーで活動継続してもらえたら嬉しいですね。

 2日目のセトリまとめ。半分は3rdから。予告通りガラッと変わりました。

  1. Charging the Void

  2. Fast Paced Society

  3. Oblivion

  4. Tetrastructural Minds

  5. Psychotropia

  6. Pillars of Sand

  7. Collapse

  8. Recharging the Void

  9. Black Future

  10. Asteroid

おわりに

 この2日間を振り返ると、楽しかった思い出しかない。そりゃそうだよ、大好きなスラッシュメタルというジャンルの中でも一番好きなバンドの演奏を間近で見られたんだから。前述の通り一度は解散の危機に瀕しながら、こうして復活した彼らに会えたことは幸運以外の何物でもなく、自分の夢を現実にしてくれたCHROSH BookingsとSPIRITUAL BEASTには感謝しかありません。オリジナルデザインチケットも良かった。
 ひとまずは制作中の新アルバムが楽しみ。「2025年に再来日するかも」との噂がありますが、もし実現したら喜んで馳せ参じます。

おまけ

 日本観光を満喫する一行。


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