僕は人差し指の爪。右手の人差し指なんだけど僕が生まれてもうしばらく立つ。僕のご主人はどうやらギタリストらしくて右手の爪は全部全く切らないんだ。

左手の人差し指の爪君は入れ替わりが激しい。しょっちゅう切り捨てられて、仲良くなる暇もないんだ。まあいいんだけどね、隣の中指の爪がいれば僕はいつでもハッピーさ。

僕らは大体同じ時に誕生して、以来ずっとお隣なんだけど僕よりちょっとばかし背が高い。中指って大体は人差し指より高いらしくて僕が話しかける時にはいつも上を向かなくちゃいけない、まあいいんだけどね。

「今日はご主人、まだギターを弾かないんだね」
「そうね。まだ寝ているんじゃないかしら」

最近僕らのご主人は前ほどギターを弾かなくなった。僕らにしてみれば体に振動が来ないからいいんだけど、なんだか嫌な予感もする。ギターを辞めて、みんなお払い箱ってさ。早く日常の、四六時中ギターを弾く生活に戻ってほしいともたまに思う。まあ、どっちでもいいんだけどね。

「ねえ、中指さん。」
「何?」
「僕らのこのプロテクター、いつかは外れるのかな」
「そうね、外れることがあるとしたらご主人がギターを辞める時かしらね」
「そうなったら僕らごと切っちゃうよ」
「ふふ。それもそうね」

僕らのご主人はギタリストで、爪でギターを弾くらしいんだけど、その爪が傷まないようにマニキュアみたいなのでコーティングされてるんだ。おかげで僕らは呼吸がしにくいんだけど、別に中指さんと話すのに支障をきたさないから我慢してる。

「ご主人が動き出したね、ギター、弾くのかな」
「そうね」

そう思ったら、ご主人は中指さんのプロテクターを外したんだ。ついでに見たけど親指も、その他も、僕以外みんなプロテクターを外された。

「いいな」
「スッキリするわ」

パチン

突然僕の視界から中指さんは消えた。ついでに言うと他の連中も消えたんだけど。

そして上の方から声がするんだ。

「これからはピックメインにするぞ!」

僕以外みんな用済みらしい。ピックで弾くなら僕もいらないじゃないか。

まあいいんだけどね。

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