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《絵本レビュー》ほんとうの星


去年、大人の絵本をレビューしてほしいとのお声がチラホラとあって。

そんな需要があるなんて意外だなーとか、私自身も大人向けの絵本ってそんなに読んだことないなーなんて思いながら2023年が終わっていきました。

だからなのかはわかりませんが、今年に入り、『ホントのコイズミさん』というSpotifyオリジナルのポッドキャストに出逢います。

本に関係するゲストを招き、ざっくばらんにキョンキョンが聞き手になって対話をする番組です。

紹介される絵本の数々は、はじめて聞くような出版社名だったり、書店ではなかなか見つけることができなかったんで、わたくしポチッとオンラインで購入しました。

いろんな絵本があるんですよね、知らないことがいっぱいです。だけど、こうやって縁あって知っていくことって、何だか宝探しのような、神保町の古書店に行くような、蚤の市で戦利品をゲットするような感覚になります。

今日は、その〝ホントのコイズミさん〟の中で紹介されていた絵本の中から【ほんとうの星】のレビューをしようと思います。パチパチパチ。

〔作〕長田真作
〔発行所〕303BOOKS
〔初版〕2020年8月
〔価格〕1,800(税別)
〔ページ数〕40P

《ストーリーについて》


ひとりぼっちの星は、自分が本当に星であるのか、今一つわからずにいました。

周りの星たちに聞いても、何だか忙しそうで親身に話を聞いてくれません。他の場所に移動しても、違う生物に聞いても、やっぱり答えは同じです。

それから、いろんな場所に移っても高圧的に言われるばかりで、どんどんと追い詰められていきます。

はてさて、星の行末はどうなるのでしょう?

不思議な世界で、ひとりぼっちの星が旅を通して〝自分とは何か〟を発見していきながら真実に気づく物語です。読めばきっと、考えさせられること間違いなしです!

《10コの視点》


【主なキャラクター】
・星
・不思議な生物たち
・権力者
・フラミンゴ
・哲学者

【舞台】
・時間軸がないような世界

【構成】
ひとりぼっちの星が自分探しの中で、不思議な生物たちから相手にしてもらえず、どんどん精神的に追い詰められていく。

社会が嫌になり自己嫌悪になり潰れかけ、逃げる。

そんな中、フラミンゴや哲学者と出逢い話の中で、星の心は軽くなっていき、元の場所へと戻ろうとする。

何かに気づき、根本的な自分の問題が解決し楽になる。

【文】
前半で出逢った者から傷つけられ、後半の出会いの中では、ヒントを得ていく構成が素敵。詩的な文の中に、感情や真理がたっぷりと詰めてある。

【絵】
赤系・黒系の2色で描かれた世界観が、夢の中のようにも思えるし、なんというか精神世界とか色々な次元を見せてもらっているように感じた。赤と黒の配色から、この世は表裏一体なんだと言わんばかりのメッセージ性の強いエネルギーを感じる。

【ハッピーエンド】
星の心がスッキリし、ハッピーエンド。

【カバー表表紙・裏表紙】
カバーはついていないが、真ん中にくり抜き加工がされてあり厚みもあって、汚れにくい用紙が使われている。

【見返し】
柄のデザインが施されたトレーシングペーパーが豪華。

【題字の文字】
字間たっぷりの黒い明朝体とゴシック体のデザイン。
上部に、THIS IS WHAT I AM という、私とは何かという答えが添えられている。

《読み聞かせをしてみて》


『ここどこ?だれ、このいきもの?なんで、星ちゃん穴あいてて、まっくろ?(8)』

『ちがうよ、これは頭の中なのっ!!わたしはねっ自分が自分であれることに自信がついたよ!(10)』

『捉え方は、自由みたいよ〜?(母)』

何回か、往復しながら読み聞かせしました。娘たちは、この世界観に興味を持ったようでした。

《おしまいの言葉》


ちょうど真ん中あたりかな、共感したページがありまして。

〝みんな どこかを めざしてる、きちんと…
さて、ぼくは どこだ?〟


2色で描かれた黒い者も赤い者も、どこかに向かっているような構図で描かれていて。

ホントそうだよなーなんて、そのページをめくる指がとまりました。私たちは、社会の中、自分の中で生きてるわけですが人生って一筋縄ではいきませんね(笑)

いろんな価値観に振り回されて傷つけられることもあれば、気づかされて楽になることもあります。

何事も、どっちも有るんでしょうけど、それにしても生き抜くことは大変ですね。

だけれども人間は生きている限り、この物語のように、どこかを目指しているんでしょうね。

それが、見えていようがいまいが関係ないです。
人は絶対に死にますから、希望有るゴールまで一緒に走ったり歩いたりしたいです。


☆彡コボシの中のコボシより

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