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AMD(アドバンスト・マイクロデバイセズ) 銘柄分析 〜20'Q4決算〜

■はじめに

こんにちは。米国株投資家のhariboo(ハリボー)です。
今回銘柄分析したいのは、セキュリティ企業のAMD(アドバンスト・マイクロ・デバイセズ (Advanced Micro Devices, Inc. )です!

1/26引け後に決算発表しましたが、そちらは売上高・EPS・コンセンサスすべて予想を上回る決算内容でした。

AMDから決算のプレゼン資料がアップされていたので、そちらの資料を確認しながら決算を振り返りたいと思います。
本記事も有料としていますが、記事全文無料で読むことが可能です。
もし、読んでいただいて「参考になったよ!」、「haribooありがとう!」なんて方がいらっしゃいましたら、購読・サポートいただければ励みなります…

それでは、早速確認していきます!

■AMDについて

(1)企業概要

そもそもAMDってどんな会社??って方もいると思うので、まずは事業内容や会社について見ていきます。

いつものYahooファイナンスから引っ張ってきます。

アドバンスド・マイクロ・デバイシズは米国の半導体メーカー。コンピュータ、グラフィックス、家電市場向けマイクロプロセッサの製造、販売に従事。コンピュータ搭載用のx86マイクロプロセッサ、ノート型パソコン、ワークステーション、サーバーに使用されるチップセットなどを提供。同社製品は「AMD」の商標名で展開。本社はカリフォルニア州サニーベル。

設立年月日 1969年5月
代表者名 Dr. Lisa T. Su
業種分類 IT・通信 (IT & Communications)
市場名 NASDAQ National Market System
従業員数 11,400人

言わずと知れた半導体企業ですね。
最近ではPC市場やデータセンター市場でインテルのシェアを奪う「インテルキラー」という側面がありますよね。

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会社シャレた作りしてますね。

このリサ・スーという女性のCEOも中々切れ者みたいです。

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(2)AMDの製品

次にAMDの半導体がどんなところで利用されているかについてです。
半導体と一口に言ってもその用途は幅広いものなっています。

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これだけテクノロジーが進歩すれば、それに伴い半導体需要は伸びていきます。
AMDの投資家向け資料にその紹介がありましたので添付します。

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分野は多岐にわたります。
パソコン、アップルのMac、ゲーム、クラウド、携帯、高速データ計算etc…

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このように、いろんなところでAMDの半導体は活躍しています。
PS5や新型のXboxでもAMDの半導体が使われていますからね。

 ▪️余談 藤井聡太もAMDを愛用

余談になりますが、将棋の藤井聡太さんはAMDファンとして有名です。

以下参考記事になります。

将棋の藤井聡太七段とCPUの意外な関係
2018/12/11 10:47 著者:吉川明日論

将棋の藤井聡太七段がAMDのRyzenを使っていると発言
今や将棋界で飛ぶ鳥を落とす勢いの藤井聡太七段が、AMDのCPUを活用しているという発言をしたことが一部のネットニュースで話題になっている。
ニコニコ生放送にて第4期叡王戦本戦を中継した際に解説して登場し、そこでの発言を見た人たちがWeb上で拡散をしたらしい。

昨年、佐藤天彦名人がAI将棋ソフト「Ponanza」に負けてから、人間棋士対AIソフトという話題はすでに昔のものとなり、今では人間棋士と将棋ソフトはうまい共存関係にあるように見える。
私自身は将棋にはまったく疎いものの、テレビの放映などを見ると、将棋は新たなファンを取り込めているようである。将棋ファンにとって、やはり人間棋士同士の気迫ある対戦には勝ち負けを超えたものがあるという証拠である。
今やプロ棋士にとってAI将棋ソフトは格好の稽古相手になっているらしい。それにしても、あの藤井七段がAMDファンであるということはAMDのOBである私としては大変にうれしい限りである。しかも発言は「現在はRyzenを使っているが次はThreadripperにしたい」といったコメントをしているというから、まさに自作派の相当なコアユーザーであるとお見受けする。
こんな話題に触発された私は、以前にAMDが「世界コンピューター将棋選手権」をスポンサーしていたことを思い出した。2003~2006年ころの話である。2003年にK8コアベースのx86では初めての64ビットCPUであるAthlon64とOpteronを発表したAMDは、Intelとの技術競争において完全な優位性を奪還した。そしてその優位性はデュアルコアCPUの発表で決定的なものとなり、AMDの技術は市場に広く受け入れられることとなった。とは言っても、その価値を知る人たちは自作派のコアユーザーかハイエンドユーザーに限定されていて、当時マーケティングを任されていた私にとっての大きな課題は、この格好の機会をどうやって一般のPCユーザーに知ってもらうかであった。Intelのように派手にTVコマーシャルを流す資金などあるはずもない。どうやって低予算で人目を惹くマーケティング活動を展開するかが喫緊の課題だったのである。

AMD、「世界コンピューター将棋選手権」をスポンサー
そんなところに格好の材料が持ち込まれた。当時早稲田大学 政経学部の教授だった滝沢武信 先生からAMDにコンタクトがあった。
確か、ちょうどAMDがK8を発表した2003年のころだったと思う。先生の話では、"1987年に発足した「コンピューター将棋協会」は1990年に第一回の「世界コンピューター将棋選手権」を開催してから、最初は稚拙であった将棋ソフトも年を重ねるにしたがってレベルが上がり、人間棋士との対戦も考えられるほどになっている。この選手権は同種のものでは世界唯一で、大会には日本ばかりでなく他国からも参加者があるほどになっている。ソフトの進化もさることながら、勝利するために各参加者は最先端のパソコンベースのマシンを持ち込むという。やはりハード面ではCPUの性能がカギであるので、以前はIntelベースが多かったが、近年性能向上著しいAMDベースのマシンを持ち込む参加者が増えている。ついてはAMDにスポンサーの一部を担ってもらえないか"という話であった。
私はK7の勢いを土台にK8でIntel製品に対する優位性をアピールするための格好の材料と判断して、協賛会社の一社として加えていただくことを快諾した。もしAMDベースのシステムを使った競技者がいい成績を上げれば絶好のPR材料となるからだ。早速若手のマーケッターS君に担当してもらって協賛の準備を開始した。

「世界コンピューター将棋選手権」
AMDは2003年から2006年まで「世界コンピューター将棋選手権」の協賛会社の1社となっていた (著者所蔵イメージ)

圧勝したAMDベースのシステム
準備を進める中で下記の状況がわかった。

滝沢先生が会長を務める「コンピューター将棋協会」は1990年に第一回の「世界コンピューター将棋選手権」を開催、その後毎年開催をして参加者も増えている将棋ソフトの性能が年々上昇し毎年熱戦が繰り返される。ソフトの改良もさることながら、持ち込むハードもその時期で最高性能のCPUを使用する
かつてはIntel一色だったCPUもAMDのK7、K8の投入から、AMD製CPUのシステムの割合が増えてきている
チェスの世界では1997年にIBMのスパコンであるディープ・ブルーが人間棋士を破り、話題になっていた。チェスよりも戦い方が複雑な将棋ではいつその瞬間が訪れるのかというのは世界的な話題にもなっていた
人間棋士とのエキシビションマッチも計画されている
こうした状況で協賛会社として臨んだAMDであったが、その結果は圧倒的であった。下記の表に2004年から2006年の各チームの成績結果を記す。

2004年(第14回) 2005年(第15回) 2006年(第16回)
ランク 将棋ソフト CPU 将棋ソフト CPU 将棋ソフト CPU
1 YSS Opteron Dual 2.2G 激指 Opteron Dual 2.6G Bonanza CoreDuo 2.16G
2 激指 Opteron Dual 2.2G KCC将棋 Opteron Dual 2.2G YSS Opteron Quad 2.6G
3 IS将棋 Athlon64 FX 2.4G IS将棋 Athlon64 FX 2.6G KCC将棋 Opteron Dual 2.4G

2004年から2005年にかけて上位を圧倒したAMDベースのシステム (資料を基に著者作成)
この結果をもって、担当のS君はいろいろなマーケティングの活動を展開したので、新聞雑誌などにも盛んに取り上げられた。
Intelの展開するTVコマーシャルとコストを比べると遥かに少ない費用で大きな成果を挙げられたと思っている。マーケティングの手法として、権威付けによって製品の価値をアピールするこういった方法はその後の私のマーケティング活動にいろいろなインスピレーションを与えてくれた。
大会と同時に開催されたパネル・ディスカッションでのゲストのある方が、「いずれは将棋ソフトが人間を超える時がくるだろう。しかし指し手の組み合わせが圧倒的に多い囲碁でコンピューターが人間を超えるのは至難の業だ」、と発言されていたのを興味深く聞いたのを記憶している。
9×9=81という将棋盤のマスをはるかに超える19×19=361の碁盤で戦う囲碁は組み合わせの複雑さから、コンピューターソフトにとっても人間を超えるのははるかに困難と考えられていたのだ。 また2005年に準優勝した「KCC将棋」のチームはわざわざ北朝鮮からやってきたのだというのも鮮明に覚えている。今ではサイバー・アタックを世界中に仕掛けているという北朝鮮はこのころから相当な技術を蓄えていたと思われる。

そしてAIソフトの時代
さて、それからわずか12~13年の現在、人間棋士対コンピューターの対決は想像できないスピードで変容したといえるだろう。
2016年にGoogleが開発したアルファ碁が韓国の英雄イ・セドル九段に5番勝負で4勝をあげ世界をあっと言わせた。その後、2017年に前述の佐藤天彦名人がPonanzaというAIソフトに敗れるということになった。ちなみにこのPonanzaというソフトの名前は、このソフトの制作者が第16回世界コンピューター将棋選手権で優勝したソフトBonanzaに敬意を表したものであるという。
さて昨年は27回の選手権大会が開かれ熱戦が繰り広げられたが、Ponanzaを破って優勝したソフトはElmoというソフトであった。私は上位者が使用したハードに興味があったので滝沢先生に問い合わせた。そして上位入賞者のハード構成を聞いて最近の状況について合点がいった。優勝したElmoを含めた上位3者中2者がGoogle CloudやAWSのレンタルサーバーだったそうだ。
そして今年28回大会では上位3者すべてがAWSを使用していたという。深層学習にたけたAIサーバーの驚異的な能力がこれを可能としたわけだ。Google Cloudの場合、処理を担うプロセッサはGoogle独自のTPUなのだろうと勘ぐってしまうがもちろん確証はない。
そしてごく最近、米学術誌サイエンスに驚くべき論文が掲載されたというニュースを目にした。報道によるとGoogle系の英国ディープマインドが開発した「アルファゼロ」という汎用AIソフトが、囲碁のイ・セドル九段を破った「アルファ碁」、チェスの世界最強ソフト「ストックフィッシュ」、そして2017年に将棋の佐藤天彦名人を破ったPonanzaを破って昨年の世界大会で優勝したElmo、すべてのソフトを囲碁、チェス、将棋のすべての分野で打ち負かしたという。恐るべき深層学習AIの進歩である。
さて藤井聡太七段であるが、AMDの最新型となるThreadripperベースのパソコンとのエキシビションマッチなどが実現したら自作派ファンが大騒ぎするのではないか、などとよからぬ想像をしてしまう…
なお、今回の記事を書くにあたって、現在もコンピューター将棋協会の会長であられる滝沢武信 先生にいろいろご協力を願った。この場を借りて御礼申し上げたい。コンピューター将棋協会(CSA)についてご興味のある方はWebサイトをぜひご覧いただきたい。

藤井聡太さんが「世界で一番会いたい人は?」という問いに、答えたのが「リサ・スー」CEOでした。

(3)市場規模

では、そんなAMDがビジネスしようとしている市場規模がどれぐらいなのかについて、見ていきましょう。

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データセンターで350億ドル・パソコンで320億ドル・ゲームで120億ドルと、合計で790億ドルがAMDの市場規模になります。

取りに行こうとしている市場が3つある訳ですから、分散されていていいですね。

とりわけ、データセンターでのプレゼンスがデータ需要の高まりとともに向上しています。

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データセンター向けには高速の演算処理やクラウド、AI・AR・VR等、今の時代に求められるものが日に日に大きくなっています。

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とりわけ、クラウドにいてはかの「Google」のクラウドに採用されています。

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また、マイクロソフトの「Azure」やAmazonの「AWS」、先ほどの「Google cloud」のクラウド御三家を含めTwitter等、ありとあらゆる企業が利用しています。

(4)AMDの野望

決算資料でAMDの今後の野望(?)、ビジョンについて語られていました。

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① HPC(※)でリーダーシップ
② CPUとGPUを組み合わせた破壊的なソリューション
③ 強力で予測可能な実行
④ ベストインクラスの成長フランチャイズ

※High-Performance Computingの略。データの処理と複雑な計算を高速で実行する機能

▪️AMDの強み

(1)シェアの急拡大

AMDはパソコン市場とデータセンター市場で大きくシェアを伸ばしています。
どちらの市場でも競合するのが、インテル(INTC)です。

以下記事でわかりやすくまとめられているのでご参照ください。

x86アーキテクチャのプロセッサ(以下、単にプロセッサと呼ぶ)の市場シェアで、Intelが急落し、AMDが急上昇していたのだ(図1)。

 Intelが10nmプロセスの立ち上げに失敗したころ、2016年第3四半期(Q3)に最大82.5%あったシェアは、2020年第1四半期(Q1)に66.7%に低下し、同年第2四半期(Q2)に65.8%になると予測されている。これに対してAMDのシェアは、2016年Q3に17.5%しかなかったが、2018年Q3から7nmプロセス以降をTSMCに生産委託し、その効果が表れ始めた2019年Q3ごろから飛躍的にシェアが上昇している。そして、2020年Q1に33.2%になり、同年Q2には34.2%まで拡大すると予測されている。

なぜ、Intelのシェアが低下しているのか?

 この問題について、Intel側の事情については、以下の分析を行った。

 まず、Intelが10nmプロセスの立ち上げに失敗した原因は、M0とM1の配線材料にCuに替わってCoを使ったこと、M2~M6のCu配線のバリアメタルにはTiまたはTiN等に替わってRuを使ったことにあると分析した(関連記事:「10nmで苦戦するIntel、問題はCo配線とRuバリアメタルか」)。

 10nmの立ち上げに失敗したIntelは、14nmを延命することとなったが、プロセッサの高性能化のためにコア数を4→6→8個と増やしていった。その結果、プロセッサのチップ面積が増大し、それに反比例して1枚のシリコンウエハーから取得できるチップ数は減少した。このため、Intelは、アイルランド、イスラエル、米国にある3工場をフル稼働させても需要に応えることができなくなり、世界的なプロセッサの供給不足を招いてしまった(関連記事:「インテル、困ってる? ~プロセッサの供給不足は、いつ解消されるのか?」)。

 要するに、Intelがプロセッサのシェアを低下させている原因の一つに、“Intelの自滅”があることは疑いようがない事実である。

 しかし、AMD側からこの問題を分析すると、全く違った景色が見えてきたのである。AMD躍進の背後には、2人の立役者がいる。第1に、現在Intelを追い詰めている高性能プロセッサのアーキテクチャ“Zen”を開発した天才設計者のジム・ケラー(Jim Keller)氏。第2に、AMDの女性CEOとして卓越した経営手腕を発揮しているリサ・スー(Lisa Su)氏(以下、敬称略)。

 本稿では、この2人の活躍に焦点を当て、AMD躍進の要因を明らかにする。次に、数年後には、AMDがIntelに追い付き、追い越している可能性を論じる。しかし、現在この2人が対決する事態となっており、未来はどうなるか分からないことを述べる。

インテルは半導体の線幅を微細化する競争で後手後手になり、足踏みしています。
それもそうですよね。一台100億円以上とか平気でかかる半導体製造装置を14nm→10nm→7nm→5nmと微細化が進むごとに追加投資しなければならないわけですから、巨額の設備投資がかかります。

その点、次項でも触れますが、AMDはファブレスのためそう言った費用負担なく、その分製品開発や研究に充てることができるため性能の向上が図れる。
同じ半導体企業でも置かれている状況が全く異なります。

以下は記事内にあった図になります。

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図1:x86プロセッサの市場シェア(2020年Q2は予測) 出典:PassMark (CPU Benchmark)のデータを基に筆者作成

(2)ファブレス経営

AMDの特徴の一つに「ファブレス」があります。
Wikipediaでファブレスを検索すると、以下のようになります。

ファブレス(fabless)とは、その名の通りfab(fabrication facility、つまり「工場」)を持たない会社のこと。工場を所有せずに製造業としての活動を行う企業を指す造語およびビジネスモデルである。

そうなんです!AMDは製造のための工場を持っていないんです!
そのため微細な半導体を製造するための大掛かりな設備投資は要らない訳です。
TSMC等のファウンドリー(半導体製造工場)に外部委託して製造しています。

そのため、大きな投資をすることなく、「最新の技術をいち早く取り入れた生産体制が構築できる」。これがミソですね。
ちなみに、半導体企業のエヌビディアやクアルコムなんかもファブレスです。

■2020'Q4 決算

では、今回発表された決算内容を確認しましょう。

(1)決算概要

【2020年通期】

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売上高は97億6000万ドルと前年同月比45%増でした。
5年連続で粗利率も45%超と利益水準が高く、EPSは前年比2倍以上としっかり利益が出ています。

【2020年Q4】

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2020年Q4で見ても、同様の高い伸びを記録しています。

(2)各指標(売上高・EPS・粗利率)の推移

AMDの高い各指標に関する資料です。
まずは売上高から。

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キレイな右肩上がりですね。ほんと一年前と位置感が全然違います。

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EPSも売上高の増加に伴ってしっかりトレンドに乗っています。

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また、粗利率も40%を超える高い粗利率をキープしています。

▪️株価

最後に株価についてです。

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2021年1月28日現在、決算を受けて株価下落。88ドル程で推移しています。
7月以来の下値支持線近辺で止まっているため、ここをキープしてくれれば大丈夫そうですね。9月に一度高値をつけた後はあまり動いていませんが、この決算であればいずれ動いてくるのではないでしょうか。

▪️まとめ

以上、簡単ではありましたが、AMDについて決算資料も交えながらご紹介させていただきました。

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