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知的快楽

何でも好きなことをしてください。
あなたの一番好きなことをしてください。
 
突然そう言われても、自分が何を好きなのか良く分からなかった。
 
料理をするのが好きかと聞かれると、自分のためにするのは特別好きでもないと気付く。
誰かに食べてもらうために頑張って作るのは好きなのだけれど、それには時々ストレスが伴う。
私は、料理好きではないようだ。
 
それと比較して、掃除は自分のためにやっているのだと気付く。
散らかった部屋にいるのは気分が悪くて、誰が来るわけでなくとも部屋は片付いている。
色々なものを置くのは苦手で、好きなものを少々、大切に部屋に飾るのが好きだ。
季節ごとに変えることもあるけれど、毎日見たい絵は一年中飾っている。
私は、整頓好きなようだ。
 
何が楽しいのか分からなくて、好きなDVDを何度も見直したりした。
同じ場面で感動し、泣き、私はこういうお話が好きなんだなと、自分を知っていく。
私は、性善説が好きであり、正しい事、努力した事が正当に評価されることが心地いいと思うようだ。
 
手元にある本を読み返したりした。
しばらくの間、ドイツ語の本を読むのが面倒で、日本語の本ばかり読んでいた。
日本語で表現されていく心の様が美しくて、好きな文章を何度も読み返したりする。
私は、日本語の響きが好きなようだ。
 
身体を動かそうと思って、以前のようにランニングに出たけれど、あまり楽しくなかった。
それでも、自宅でヨガをしたり、筋トレをするのは苦にならない。
私は、このくらいの程度の運動量が好きなようだ。
 
私は、今こうしてヨーロッパに住んでいて、否応なしにキリスト教文化に触れている。
一つ一つのイベントがある度に、それが何の理由で行われているのか、何を祝う行事なのか知りたくなる。
人に何かを尋ねたり、本を読んだり、絵を鑑賞したり、インターネットを使って調べたりしている時にふと、この時間が一番楽しいと気付いた。
知りたいことを調べている間は、時間が止まったようになる。
 
知的快楽
Intellektuelle Vergnügungen
 
映画を見続けるのも、限界がある。
読書も、限界がある。
運動も、限界がある。
 
でも、これらが知的快楽と繋がった時、その限界がなくなる。
もっと知りたいと思い、関連のものを見たり読んだり、確かめにその街まで出かけたりするうちに、世界が一気に広がることを知った。
 
それは、旅行をするという目的とも違う。
いつもと違う景色を見たいとか、遠くへ行きたいという目的ではないからだ。
そして、旅を誰かと一緒に過ごすという目的でもない。
ただ一人、私から私へ向かって完結している。
完全な自己満足で、誰の影響も受けない。
 
でも今は、それが一番私にとって心地良い。
 
何でも好きなことをしてください。
あなたの一番好きなことをしてください。
 
今ならちゃんと分かる。
ちゃんと答えられる。
 
それは、私の知的好奇心が満たされた時。
そして、もっと知りたいことを見つけた時。
 
私には、まだまだ知りたい事ばかりだ。
自分を嫌いになるのは、まだ早い。
 
 

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