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ドイツの賃貸情報 詐欺にご注意

会社帰りに、以前住んでいたアパートの大家さんに偶然会った。
久しぶりに会ったので、話が止まらない。

それがきっかけで、ある事を思い出したので、今日はドイツの賃貸住宅事情について。

デュッセルドルフに再度引越す事になった時、以前住んでいたアパートが高騰していた。
統計を見ると、過去10年の60㎡のアパートの平均家賃/㎡は、以下の通りだ。

デュッセルドルフ
2011年 EUR   8.77    
2023年   EUR 13.34

ドイツ         
2011年 EUR   5.56      
2023年   EUR 10.58


2015年、メルケル首相はシリアを始めとする難民を、約90万人受け入れた。
この前後を確認すると、この年に大きく上昇していることが確認できる。
難民受け入れだけではないと思うが、大きな一因ではあるだろう。

デュッセルドルフ
2015年 EUR   9.39        
2016年   EUR 11.08 (前年比118%)

ドイツ          
2015年 EUR 6.56        
2016年   EUR 7.34  (前年比112%)

家賃の高騰に、私は驚いてしまった。
以前住んでいた所と同じような区域、設備、間取りの部屋を求めると、2倍近い値段だったからだ。

以前は不動産会社を通したが、インターネットサイトに情報が溢れているので、使ってみることにした。

すると、まさに理想の部屋を見つけた。
早速、掲載主とコンタクトをしてみる。
イタリア人だという女性は、ドイツ人のご主人とその部屋を所有していると紹介があった。
そして、仕事の都合でイタリアにしばらく住むので、空いている部屋を貸したいという案内だった。

英語だったが、イタリア人だったので特に不審には思わず、私は部屋を内覧させて欲しいとコンタクトをしてみた。
すると、別のネットサイトに誘導され、以後はそこを通してコンタクトするようにとの指示が来る。
面倒だなとは思ったが、私は指示通りにそのサイトに新しいアカウントを作成した。
コンタクトを続けたところ、今はイタリアにいるので、鍵を別の人に預けていること、そして内覧をするためには、前金EUR500を振込む必要があると連絡が来た。

以前は前払はなく、契約終了後の支払だったので不審に感じる。
周りの人に聞いてみても、おかしいという意見が多い。
私は、自分とみんなの勘を信じた。

なぜ前払が必要か聞いてみたが、明確な答えがないまま請求書が送られてきて、更に振込先はイタリアの銀行で、口座名義人がコンタクトしていた女性の名前ではない。
なぜ口座名義人の名前が違うのか問い合わせたが、その答えはなかった。
とにかく早く送金して!送金しないなら他の人に部屋を譲ると、プレッシャーをかけてくるようになった。

あぁ、これは詐欺なのだと分かった瞬間だった。

念のため、掲載されていた住所に行ってみたが、その番地には建物がなかった。
すぐに、詐欺に使われていたネットサイトの管理会社宛に、詐欺であることを報告した。
数日後、御礼のメールが届き、そのサイトから該当の掲載は削除された。
しかし、同じような手口で、いくらでも部屋を掲載することができる。
これから先、被害者が出ない事を祈るばかりだ。

あんなに条件の良い部屋が、あの値段で借りられる訳がなかったのだ。
まぁ、この程度の分かりやすい詐欺であれば、すぐに気付くので引っかかる人は少ないだろうが。

後からインターネットサイトを見たら、同じような詐欺情報がたくさん載っていた。
初めてのドイツ生活や、部屋が見つからない不安から、慌てて前金を振り込まないよう、是非ご注意いただきたい。

部屋が見つからなかった私は、以前お世話になった不動産会社に連絡を取ってみた。
社長さんは、私の事を覚えていてくれて、帰ってきたのかね?と言いながら、部屋探しに協力してくれた。
とても素敵な家を紹介して頂き、一目惚れしてしまった。

後日、大家さんとの面談があり、社長さんと共に大家さんの自宅に向かった。
大家さんはドイツ人女性で、気の強さを相手に分からせてしまうような人だ。
私に会うと開口一番で『日本人には貸したくないのよ』と言うではないか。。。
話が違うのでは?と思ったが、取り敢えず座って話を聞いてみた。

大家さんは、市内各地にたくさんの物件を持っているが、そのうちの一軒を日系企業に社宅として貸した事があるらしい。
その家族が帰国し、家を見に行った大家さんはその汚さに驚き、もう二度と貸さないと決めたそうだ。

話を纏めると、たった2行の文に纏められるのだが、私はこの話を30分ほどかけて聞いた。

もう他を探そうと覚悟を決めた。
そもそも、私を今日ここに呼ぶ必要があったのだろうか。
日本人家族の代わりに文句を言うために、私をここに呼んだのだろうか。。。

しかし、社長さんは負けていなかった。

Ditoが長年使った部屋はとても綺麗だったし、問題など全くなかった。
他のドイツ人に部屋を貸したとしても、その人が綺麗に使うかどうか、僕は保証できませんよ?

このように、やんわりと反撃に出てくれたのだ。
大家さんは、貸すとも貸さぬとも言わぬまま、私はそのまま帰らされた。
大家さんのあの態度では無理だろうと思い、私は別途アパート探しを始めた。

友達が、空いている部屋に住んでいいと言ってくれていたが、私はなるべく迷惑をかけたくなかった。
しばらくして、私は諦めて、友達の家に居候させてもらおうと思っていた時に、社長さんから連絡が来た。

おめでとう!希望の家に住むことができるよ!

私はこうして、社長さんの説得のお陰で引越ができた。
友達からは、こんな事を言われた。

大家さんの『日本人嫌い』を克服させたDitoは偉いよ!

私は何もしていなくて、ただただ社長さんのトーク力のお陰なのだが。。。
でも、以前の部屋を綺麗に使っていたことを、心から良かったと思えた瞬間だった。

前述の通り、大家さんは今、私にとても親切に接してくれている。
日本人には貸さないと言っていたのが、嘘のようだ。

それでも私は、今でも大家さんに会う度に、ほんの少しだけ緊張してしまう。
いつも、あの初日の事を思い出してしまうからだ。

部屋を汚したまま返したという日本人家族に対しては、私は特に悪い感情を抱いてはいない。
社宅として借りていたならば、会社に迷惑がかからぬよう、綺麗にして引越しをされたと思うのだ。

ただ、日本人の持っている感覚、綺麗に整理整頓された状態と、ドイツの綺麗という基準が少し違う。
ドイツは硬水のため、少し手を抜くとすぐに水回りにカルキがこびり付いてしまう。
換気をしないと、お風呂場にカビが生える。
バルコニーは綺麗に掃除をしておく。
キッチンもピカピカに磨き上げているし、汚したくないから料理をしないと言う人もいるほどだ。
窓が汚れていると悪魔が来ると言われているので、窓も掃除せねばならない。
同じ道路に住んでいる家々の景観を損なわないように、常に綺麗にしておかねばならない。

綺麗に手入れされた家で、家族との団欒を楽しむ。
ドイツ人全員ではないとしても、それがドイツ人の一つの幸せの象徴のようだ。

『日本人だから』と後ろ指を指されないように、異国の文化や風習をしっかり知りたいと思う。
私の後からドイツに来られるかたのご迷惑にならないように。

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