見出し画像

雪だるまさん

おいでませ。玻璃です。

本年も「はぎいろモンタージュ」へようこそいらっしゃいました。
新しい年も私のストーリーは続いて行くので、毎週お立ち寄り頂けるのを心よりお待ちしております。

さて、藍場川近くの家で過ごす初めての冬の話。
この年日本海側では雪が降り、萩の街にも雪が積もった。
ただ、積もったと言っても20センチくらいだったと思う。
それでも、子供の私にはわくわくが止まらなかった。

早めの夕方、玄関前の少し広くなっているところで雪を丸め、さらにそれを転がして雪だるまの身体を作った。
また同じように丸めて転がして、今度は頭を作る。

中腰になって
コロコロ コロコロ。

転がしている私の後ろから
ギュッ ギュッ
と雪を踏みしめる音。

「玻璃ちゃん、雪だるまができたね。」

「あ、お母さん!おかえり!!」

そうして母は雪だるまさんの頭を丁寧に乗せてくれた。
あとは小枝を拾ってお顔と手をつけて完成した。

「さあ、玻璃ちゃん、身体が冷えとるよ。家に入ってお風呂に入りなさいね。」

ぬくぬく温まってお風呂から出た頃、父が帰宅した。

「玻璃、外に真っ白な小さい友達が待っとったぞ。」

雪だるまさんの事だ。

父の言葉に、なんだか急に置いたままの雪だるまさんが心配になってきた。
「友達」という言葉を聞いた途端、雪だるまさんに魂が宿ったように感じた。

「お父さん、雪だるまさん寒そうやった?」

「いいや、雪だるまは気持ちよさそうやった。寒いところの方が好きなんやろ。」

「一人で寂しいかな。」

「明日また遊んであげたら大丈夫やろ。」

キッチンから母が答える。

次の日は快晴。
朝は雪の影響でピキンと氷のように空気が冷たかった。

「雪だるまさん、行ってきます。帰ったら遊ぼうね。」

ひと声かけて学校に行った。

だがその日は午後から気温が上がった。
家に帰ってみると、雪だるまさんは日に当たっていた半分が溶けてお顔が変形していた。

私は、ズンと気持ちが沈んでしまった。

朝はあんなに元気だったのに…。
遊ぼうって約束したのに…。
朝早起きして少しだけでも遊べば良かった…。

思ったよりもずっと早いお別れが信じられず、後悔が残った。

今でも雪が降るとあの時の寂しさを思い出す。
そして、母のつぶやきも。

「ただ積もった雪が溶けるより、雪だるまさんが溶けるときは何倍も寂しいね。今日遊べんで残念やけど、雪だるまさんはきっと玻璃ちゃんにありがとうって言っとるよ。」

父から「友達」という言葉を聞いた瞬間から雪だるまさんは私にとっての特別な存在になった。

人間も、ただ行き過ぎる人たちが友達になった瞬間、大切な存在になる。

そしてその人たちが大変な目に遭ったり、悲しい思いをしていたら自分の事のように心が痛む。
逆に嬉しい報告は一緒にワクワクうきうきする。

今年もズンとした後悔が残らないように…。
会いたい人には会っておこう。
伝えたい気持ちは伝えておこう。

元旦に起きた震災。そして相次ぐ事故。
どうか1日も早く日常が戻りますように。

お友達も、そうでない方々も…。
誰かにとってはみんな大切な人。
心よりお見舞い申し上げます。

ではまたお会いしましょう。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?