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生楽舎本舗(鑑賞した映画について語ります…ネタバレ注意)

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【ロニートとエスティ 彼女たちの選択】
2021年初映画は「ロニートとエスティ 彼女たちの選択」。
敬虔なユダヤ教コミュニティで育った幼馴染のロニート、エスティ、ドヴィッドは、お互いを親友と呼び合う仲。少女2人は互いに惹かれ合い自分達の性指向に目覚めるが、それはコミュニティの掟では絶対に認められないものだった。
ラビ(宗教的指導者)の一人娘だったロニートは掟に逆らいコミュニティを捨て、エスティはラビの一番弟子のドヴィッドと結婚する事で掟に従いコミュニティに残った。
数年後、父の死の知らせを受けて帰郷したロニートとエスティの再会から物語が始まる。

原題は「Disobedience(不服従、反抗)」。邦題の「選択」がキーワードとなる。

以前、ロニートは掟に対して不服従を、エスティは服従を選び、2人は別れてしまった。
その結果ロニートは自由を得る代わりに父の愛を失い、エスティは居場所を得る代わりに自由を失う。それでも2人はそれぞれ自分の生き方を選んだつもりだった。
しかし再会した2人は、結局お互いの気持ちも置かれた立場も昔と何一つ変わっていない事に気づく。彼女たちは何も選べていなかった。自分が生きるための選択肢は一つしか無かったのだ。
エスティは妊娠し、ドヴィッドから掟に従うべく迫られ、ついに想いを言葉にする。「選択の自由が欲しい」。ラビの後継者として教会で掟厳守を説く立場になる予定のドヴィッドは、妻のこの「掟破り宣言」に驚愕する。
ラビの追悼式兼次期ラビ候補紹介の場で、ドヴィッドは教会での説教中に倒れたラビの最期の言葉を披露する。「神は創世の時3つの物を創られた。神に絶対服従の天使、本能のまま生きる(神に不服従)獣、最後に人間。」ラビが薄れゆく意識の中で絞り出した最期の言葉「人間は選択できる存在として創られた」を思い出しながらドヴィッドは気づく。そうだ、人間は最初から選択の自由を神から与えられていたのだと。
ドヴィッドの「あなたは自由だ」の言葉は、妻エスティに向けられているようだが、同時にロニートへも父から娘への遺言として伝えられている。

彼ら3人が抱き合うシーンが象徴的。既婚者、未婚者、同性愛者が互いに抱き合うなど、厳格なユダヤコミュニティでは絶対絶対絶対許されない事だ。だが、ドヴィッドの背中に回したロニートとエスティのお互いの手がしっかりと結ばれる様からは「私たちは確かに掟破りだが、神に祝福された存在だ!」と言う叫びが聞こえてくる。

彼らは改めて各自の選択に基づき元の生活に戻っていく。いや、元の生活ではない…ロニートは父の愛を取り戻し、エスティは自由を得、加えてドヴィッドは宗教者としての新たな目標を見つけた。

この映画を「宗教」「同性愛」などの視点で観たあなた。これは人間の尊厳の物語です。
ええ〜っ、そうだっけ?美女2人のラブシーン以外印象にない〜というあなた。もう一度観直すことをオススメします。

では、また。



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