【超短小説】年雄の初夢
年雄は夢を見た。
行きつけのBARのカウンターで1人、ビールを呑んでいたら、常連客の古賀さんが女性と2人で入ってきた。
簡単な新年の挨拶をしたあと、古賀さんが女性を年雄に紹介してくれた。
その女性は年雄好みの優しい顔をしていて、年雄の横に座り、品のある話し方だった。
年雄はすぐに恋に落ちた。
2人の話は盛り上がり、「もう一軒行こうか」なんて話になった所で目が覚めた。
初夢だった。
なんだか恥ずかしい気持ちになったが、もしかしたら夢の続きが・・・なんて思いで年雄は行きつけのBARに向かった。
夢と同じようにカウンターに座り、ビールを注文した。
マスターに「年雄君が最初にビールなんて珍しいね」と言われ、少し照れた。
ここで古賀さんが女性と2人で入ってきたなら・・・
なんて事はないだろう。
そう思っていたら、古賀さんが入ってきた。
「お!年雄ちゃんじゃん!」
"1人か・・・"と思っていたら、古賀さんの後ろから女性が1人遅れて入ってきた。
ま、正夢か!?年雄は夢で出会った優しく品のある女性を思い出した。
古賀さんが女性を手招きして、年雄に紹介した。
「年雄ちゃん!紹介するよ!俺の行きつけのスナックのママ!」
夢で見た優しい顔・・・ではなく、幾つもの夜を戦い抜いた戦士の顔に見えた。
古賀さんが「ママこう見えて57!見えないだろ?」と言ってきた。
そう見えたが言わなかった。
ママは年雄の横に座り「チン年、開けましてご開帳」とサラっと挨拶した。
品がない。
年雄が見た夢とは違ったが、その後3人は盛り上がりもう一軒行った。
浜本年雄40歳。
一応、夢の続きは見れたのかも。
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