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短歌始めてから読んで「短歌、面白いな」と思った歌集10冊

これをやったので、歌集バージョンでもやってみます(でも人の作品なのに「名刺代わりの」って表現は変な気もした)。
今回は自分が読んだ時に「(総体としての)短歌、面白いな」と思えた10冊と、その歌集から一首引用して紹介します(URLは出版社のページ)。歌書・アンソロジー・ハウツーは除きました。

てんとろり 笹井宏之

この歌集だけは、短歌を始める2年前くらいに読みました。高校生のときにニューウェーブあたりの現代短歌に出会い、でもすぐ遠ざかって数年後に書店でたまたま手にとって、「ああ、短歌ってやっぱいいな」と思った一冊。

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〈きょうがその日です〉
生きてゆく 返しきれないたくさんの恩を鞄につめて きちんと
「かたととん」(P30)

http://www.kankanbou.com/books/tanka/0047

窓、その他 内山晶太

友人に激推しされて読みました。歌集ではなく一首だけで読んだときは心象の歌だと思ったものが、歌集一冊を通して生活を立ち上げてくること、そしてこんなに開かれた身体を持っていることに驚嘆した一冊。

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海辺のさむさのなかに立つ人は病院めきてゆけり数秒
「眩暈」(P41)

http://rikkasyorin.com/syuppan2011-12.html
※のつ一首評

風とマルス 花山周子

いうまでもないけど周子さんはいいぞ。ある意味「短歌、こんな自由でいいんだ」と思わせてくれるひとり。基本はデッサンの人で、だから?違う方向からみることに対して臆しないのかもしれない。

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どうしても君に会いたい昼下がりしゃがんでわれの影ぶっ叩く
「缶から」(P51)

https://seijisya.com/magazines/seijisha-87/#seijisha-349

吹雪の水族館 米川千嘉子

米川さんの歌は強い。体幹がしっかりしていて動きにキレがある感じだ。信頼して読めるけど、うっかりしているとこっちにザッと寄ってくるので気を付けないといけない。第一歌集『夏空の櫂』が手に入る人はぜひ読んでほしい。上手さに短歌やめたくなる。

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シンカイウリクラゲをのみて倍となるウリクラゲの中に光るシンカイウリクラゲ
「吹雪の水族館」(P8)

https://www.kadokawa-zaidan.or.jp/product/301508000309.html

竹とヴィーナス 大滝和子

大滝さんは自分が短歌始めた頃にすごく好きだった歌人で、絶版の歌集を血まなこになって探した。「サンダルの青踏みしめて立つわたし銀河を産んだように涼しい」にすごく感動したんよなあ。今読むとより生活と地続きになってきた第三歌集の方が好きかもしれない。

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株券をわれは持たねど市況ニュース聴けり美しき固有名詞あり
「レオナルド」(P37)

※美しき に はしきのルビ

https://www.sunagoya.com?pid=156425486

あそこ 望月裕二郎

望月さんは言葉・修辞の歌がたくさんで、言葉によって見ることが可能になる景色がとても楽しい。レトリックスキーの私は当時キャッキャしながら読んだ記憶があります。

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なでさする気持ちがいつも電柱でござる自分をあいしてよいか
(P41)

http://www.shintanka.com/shin-ei/kajin/mochizuki-yujiro

ひだりききの機械 吉岡太朗

短歌やってて初めの方に読んだからあんまり思わなかったけど、文体に対して自由だなあと思う。ベースは端正って感じなので、そこまで大きくぶれるかというとそんなことはないようにも思います。付録の「ねこ」という連作冊子があってとても好き。

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対岸に青く光ってローソンはにぎわうけれど美しい墓
「ローソン」(P62)

短歌研究社

きなげつの魚 渡辺松男

松男さんの歌は、自然や広大な景色(しかもそれは宇宙だったりする)を自分の心身と通じ合わせる回路があり、「えっ、そんなとこまで行けちゃうんだ」という驚きがあります。それでいて薄く透きとおる感じがあって、ぷかぷか浮いている。

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わが内にたれもをらざるじかんにはすきとほるほど墓石吸ふ蝶
「きなげつの魚」(P16)

https://www.kadokawa.co.jp/product/321406000123/

Perspective 香川ヒサ

香川さんは文語旧仮名ですが、発見・把握の歌が多いので結構好きな人多いんじゃないかなと思います。「角砂糖ガラスの壜に詰めゆくにいかに詰めても隙間が残る」はbotにも収録されてたり。

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リュック負ひロンドンへ向かふ爆破犯レジ袋提ぐ 中味はパンか
「黙祷」(p133)

柊書房

聖木立 橋本喜典

友人と組んでいる短歌ユニットの歌集対談(現状未公開)で取り上げようと思って読みました。長年蓄積された詠みの技術にグッときながら、歌は生活であり心であることを感じられる一冊。

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あこがれは欲のかなたにあるものと小庭の石がわれに語れり
「天地」(P73)

https://www.kadokawa-zaidan.or.jp/product/321804000809.html


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