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短読18 リモートで楽しそうに動く指知らない曲とタップダンスを

はじめに

18首目は、みちかさんの歌です。ご投稿ありがとうございました。どんな読み筋に絞っていくかを考えました。どうぞよろしくお願いします。

リモートで楽しそうに動く指知らない曲とタップダンスを

みちか

まず読んで思ったこと

 この歌を読んだときに、リモート配信、例えば今のzoomだったりとか、そういう画面越しにこのピアノを弾いてる人を見ているという光景をイメージしました。ピアノを弾いてるの(シーン)がどこから出てきたかって言うと、〈動く指〉と〈タップダンス〉っていう言葉なんですけど。なんか指を何かの面に突き立てて動かしている様子を〈タップダンス〉って言葉で表現してるのかなって思っています。このリモートで弾いてる人が親しい人なのか、それともプロの演奏家なのかはわからないんですけど、かなり手元にフォーカスが当たるような感じで見ることができてるんだろうなって思いました。
 今一番この歌を呼んで想定できる光景がそれだったから、今こういう風な読み方をしてはいるんですけど、結構この歌は難しいというか、いろいろ想定できるイメージが広いなって思っています。たとえば〈リモートで〉っていう言葉も、リモートって本来「遠隔」っていう意味だと思うので、〈リモートで〉って言われたら「リモート配信で」の意味もあるかもしれないし、「遠隔操作によって誰か別の場所で操ってる人がいる」みたいな読みもできなくはないなーって思うんですよね。でも〈楽しそうに〉と言ってるから、やっぱりその(弾いている)人が自分の意志で動かしてるのではないかって思うので、遠隔操作の(解釈の)線は捨てるんですけど。
 あとこの〈知らない曲とタップダンスを〉っていう言い方も、〈タップダンスを〉で切れているので、「タップダンスをしているようだ」って見立てている話なのか、それとも「知らない曲とタップダンスをしよう、楽しそうだから(ダンス)しようよ」みたいな誘いかけの文章(意味)のなのかっていうのも自由にイメージできてしまうなーって思っています。個人的にはこの〈リモートで楽しそうに動く指〉っていうこの歌の人のなんか気持ちの高揚感があるので、〈知らない曲とタップダンスを〉の「を」以降がなんだったのかっていうのは言ってしまっていいんじゃないかなって思いました。〈知らない曲とタップダンスを〉って映画のタイトルみがあるなーっても思っています。

さらに読む

 この歌の人にはきっと目の前の光景がきちんと見えていて、だからこそ自分が印象的に感じたものをピックアップするようにして歌が組み立てられているんだと思いました。微細に言い尽くさないけどイメージを立ち上げるのは、「詩」の特性と言えるのかもしれません。
 なんだかんだ知らない曲って興味を持てないことが多いというか、知ってる曲よりもノリが悪くなりがちなんだけど、ここでは演奏者が楽しそうに楽器を弾いていることで自分も楽しく感じられている、空間での気分の伝染みたいなものが画面越しに行われているのが面白いなと思いました。私も舞台の配信などをみたことがあるのですが、やっぱりライブ、目の前で生で行われているときの熱気や高揚感までは感じにくかったので、この歌の人はかなり演奏者に心を寄せている部分があったんじゃないかなあ。そういう意味では、感じとる力が強い人なのかもしれません。あるいは、その演奏空間にしっかり入り込めていたか、だと思います。

企画趣旨はこちらから

https://note.com/harecono/n/n744d4c605855


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