短読⑩ 初夜に浮くデジタル時計の薄ぼけたみどりを頼りに蟻の門渡る
はじめに
十首目は、貧血気味なもすきーとさんの歌です。ご投稿ありがとうございました。性愛の歌をどう掘り下げるかについて考えました。どうぞよろしくお願いします。
まず読んで思ったこと
さらに読む
投稿企画は何度かやっているのですが、性愛がテーマの作品は初めて扱うように思います。確かに性愛の歌に評をもらえる機会って、そういう場が用意されていないとあんまりないのかもしれません。念のため〈蟻の門渡る〉という語に別の意味があるのかいろいろ調べてはみました。その結果「蟻の門渡り」は夏の季語として「 蟻が列を作ってはっていること。蟻の熊野参り」という意味があることが分かったのですが、どうにもこの歌にはマッチしないなあと思ったので、身体の部位「蟻の門渡り」の動詞化として歌を読み進めています。
それで〈蟻の門渡る〉となった場合、「蟻の門渡り」が一語で一つの名詞だと考えると「蟻の門+渡る」という語構成ではなくて「蟻の門渡る」で一語になると思うので、「蟻の門渡りに触れる」とかその部位にこちらからの働きかけがあるというようなニュアンスでとることになるのかなと思います。身も蓋もないことを言えば最終的には挿入って話になるんだと思いますが、この言葉を経由させることで作品のムードを作っているのかなと思いました。
それで、この作品の面白いところなんですが、この歌は現在形で書かれていながら、多分過去について詠まれた歌ではないかと思いました。少し偏見も入っていますが〈デジタル時計〉って多分もうそんなに新しいアイテムではないと思うんですね。そこに少し前の世代の感じが出ていると思う(今はスマホで時間確認することが多いのではないか)。今現在からは離れた〈初夜〉のあの頃を思い返したときに、あんなだったなぐらいの距離感がある。音声でうまくしゃべれなかったのですが、結婚するってことはある程度のお付き合いを経ていると思ったので、今さらどこかぎこちなくて戸惑いのある距離感なのかなというのを考えたときに、初夜ということを意識してしまう感じもこの歌の人のロマンみたいなものがありそうだなと思っています。
参考サイト
蟻の門渡り:https://onl.sc/C43MqCg
企画趣旨はこちらから
https://note.com/harecono/n/n744d4c605855
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