短読③ 乳ボーロ、マルボロ、ボロボロ落ちる音止まない雨と山積みの服
はじめに
三首目は、梅雨すみれさんの歌です。ご投稿ありがとうございました。音の連なりからどんなイメージに着地しているのか考えました。どうぞよろしくお願いします。
まず読んで思ったこと
さらに読む
これは余談ですが、〈乳ボーロ〉はあたりまえだのクラッカーで有名な大阪前田製菓の商品らしいです(詳しく調べていないので別メーカーさんに同じ名前の商品があるかも)。わたしはこのお菓子を「丸ボーロ」という名前で認識していたので、初読のときなんの違和感もなく「まるボーロ、マルボロ」と読み上げ、あとから気づいてびっくりしました。短歌を読んでいると時にはこういうこともあります。
音声では言及し損ねたのですが、形としては下に向かって垂直な歌だと思いました。要は音で言葉をつなげて、結句〈山積みの服〉へ向かっている。途中〈落ちる音〉を引き受けた〈止まない雨〉というワンシーン(雨も下に落ちていくものです)が挿入されるので、山積みの服にも比較的すんなり着地できるような、素直で読者には親切な作りだと思います。四コマ漫画の起承転結の感覚にも近いかもしれません。例えば1コマ目:乳ボーロ・マルボロ、2コマ目:ボロボロ落ちる音、3コマ目:止まない雨、4コマ目:山積みの服、みたいな(でも五句あるので、どの2句を1コマに詰め込むかという問題は出てきそう)。
鬱屈した雰囲気についてもう少し掘り下げると、ボロボロ落ちる=何かをとりこぼす感覚が、止まない雨=外部から閉ざされている/山積みの服=ままならない生活→社会的なものからとりこぼされている感覚に通じていくと解釈できるとも思います。
この歌を読みながら実は私が気になっていたのは、この服が洗濯前のものか、洗濯後なのかということです。洗濯前だと「雨だし、まあしょうがないか」とも思えるのですが、洗濯を終えた服がいつまでもたためていないことの方が、生活をうまくやれていない感じがするし、その方が自身の社会性のなさを自覚しやすいと思ったんです。自分は洗濯物すらろくにたためないのかという自己嫌悪がなんとなく出てきそうな空気感がこの歌にはあります。もしかしたら乾燥機とか使って乾かした洗濯が山積みの可能性もあるのかも。私も家事の中で洗濯物をたたむのが一番嫌いなので、余裕がないときはまじで洗濯物たたみたくないよなあという共感も得ました。
参考リンク
乳ボーロ:https://www.osaka-maeda.co.jp/lineup/lineup_yaki_2_105g.html
企画趣旨はこちらから
https://note.com/harecono/n/n744d4c605855
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