『トウモロコシ畑の子供たち』
スティーブン・キング初期短編
深夜勤務：Night Shift（1978年）
日本語版では
『深夜勤務』『トウモロコシ畑の子供たち』に分冊。
バートとヴィッキーは結婚生活に疲れていた。
関係修復のドライブ旅行。
しかし、走行中も口論が絶えない。
ひたすらトウモロコシ畑が続く景色の中、
何かが車の前に飛び出しバートは撥ねてしまう。
確認すると推定10歳ほどの子供。
既に死亡している子供は、喉をかき切られていた。
「民俗学」的な印象を持たれる作品
映画「ウィッカーマン」とも比較されることが多い。
「ウィッカーマン」は
古代ドルイドの教義に元付いた祭事がテーマ。
「トウモロコシ畑の子供たち」は
異形の邪神への信仰に元付いた祭事が拡がる。
18歳までしか住めないコミュニティー。
「畝（うね）の間を歩む者」と呼ばれる深淵なる邪神。
どこか魅力的な邪神は力に頼ることはない。
観念・想念だけで人々を魅了している。
信仰する「神」の違いはあるが
祭事の形は かなり似ている。
「ウィッカーマン」とは。
古代ガリア時代に信仰されていた
ドルイド教の祭事の名称であり、儀式を指す。
藁や木で造った
巨大な人型の檻に
人間や家畜を詰め込む。
そこに火を付け神に捧げる。
「トウモロコシ畑の子供たち」では
藁や木ではなく、
トウモロコシの皮が使われている。
実際、何か作る場合
乾燥させたトウモロコシの皮は
非常に扱い易い。
編んだ草履やスリッパは
夏場に快適。
思った以上に通気性もよく
保温性・保湿性も優れている。
室内履きなら
通年快適だ。
映画「ウィッカーマン」は
デイビッド・ピナー『Ritual』（1967）が元になっている。
ドルイドの祭事を中心に
「隔絶された辺境の町」特有の習慣と人々。
おそらくこの小説を読んだであろう
スティーブン・キング。
根底にある
古の教義と人々に
心惹かれたに違いない。
初期作品とはいえ
徹底した「世界観」
「ジェルサレム・ロット」でも起こったー
後の「セイラムズ・ロット」に繋がる
『異形の神の信仰』は
ここでも生きている。
スティーブン・キングの短編作品の
初の映像化は この作品（84）
スティーブン・キングの作品の密度を再現するのは
時代を考えるに 非常に困難を極める。
短編ならば！と
試行錯誤した末に映画化となった。
恋人を伴って、次の赴任先に向かう若き医師バート。
ドライブシーンでは
車のダッシュボードに原作本が確認出来る。
･･･当時は 血しぶきスプラッター映画の全盛期では･･･
「怖い物語＝血しぶき」くらいの認識だろうか。
興行的な面を考えるなら、
選択としては
あながち間違いではない。
ただスティーブン・キング作品として考えると
「････」だ。
完成した映画は時代を反映して
見事な血しぶきオンパレード。
ストーリーの本筋は
スティーブン・キングへの敬愛を感じられる
異色のホラー映画となっている。
悪魔的な香りと血は相性がいい。
近年まで10本作られた
人気シリーズとなっている。
映像化作品リスト
チルドレン・オブ・ザ・コーン（1984年） - 一作目
スティーブン・キング/死の収穫（1992年） - 二作目
スティーブン・キング/アーバン・ハーベスト（1995年） - 三作目
スティーブン・キング/アーバン・ハーベスト2（1996年） - 四作目
チルドレン・オブ・ザ・コーン5:恐怖の畑（1998年） - 五作目
ザ・チャイルド（1999年） - 六作目
Children of the Corn: Revelation（2001年） - 七作目（日本未公開）
スティーヴン・キング トウモロコシ畑の子供たち（2009年） - リメイク
ザ・チャイルド:悪魔の起源（2011年） - 八作目
Children of the Corn: Runaway(2018年) - 九作目 (日本未公開)
スティーヴン・キング エイジ・オブ・パンデミック(2023年) - リブート
大半が吹き替え無し。
日本語字幕も殆ど無い。
鑑賞するには、なかなかの難易度シリーズ。
異形の神「畝（うね）の間を歩む者」
祀る村の
指導者でもある司祭アイザックの不気味な存在感。
「シークレット・ウインドウ」ジョン・シューター
「ニードフル・シングス」リーランド・ゴーント
「セル」赤いパーカーを着た汚らしい男
「悪魔の嵐」アンドレ・リノージュ
･･･共通する『気配』だ。
スティーブンキングの全作品とリンクし、
ベースとなる世界を示す『ダークタワー』
そして黒衣の男ことランドル・フラッグ。
深紅の王＝クリムゾン・キングの
名の元に
異界から現実へと
その『意志』が流れ込み、現れる。
「IT」ペニーワイズは、デリーの街の子供を襲う。
「トウモロコシ畑の子供たち」の町には
子供しかいない。
映画「トウモロコシ畑の子供たち」
激しい血しぶきに観る人を選びそうだ。
遠慮がちに
そーっと、そーっとオススメ したい･･･
（再録・改稿）
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